スッと出てきた立川談志の着物
川田 それと、作品の中で浦井くんが着ている着物ね。ワクサカくん、ちょっと解説してもらえますか。
ワクサカ 今回、浦井さんが落語家を演じるということで、落語家の立川談吉さんに現場に来ていただいて、落語の技術監修もしてもらいつつ、衣装の着物もお借りしたんです。で、その談吉さんっていうのは、立川談志師匠の最後のお弟子さんなんですよ。
川田 うんうん。
ワクサカ 最後の弟子として、談志師匠を看取っている方でもあって。その方がスッと着物を出してくれて、「これ談志の形見です」と。つまり、作品の中で浦井さんが着ている着物は、立川談志師匠の着物なんです。
浦井 もう本当に光栄過ぎますというか、信じられないことです。
ワクサカ 談吉さんに声をかけたのは自分なのに、あれはさすがにびっくりしました。
浦井 本当にスッと出してくれたんですよね。
ワクサカ 僕ら最初なかなか触れなかったですから、その事実を聞いてしまったあとは。
浦井 そんなスッと出されても、簡単に着ていいわけないだろうと思いましたよ。
ワクサカ でも談吉さんは「どうぞ着てください」って。
川田 しかも、この話には前段があって、もともとワクサカくんと一緒に台本を作り始めたときに、参考にしたのが立川談志の『鮫講釈』という落語の演目なんですよね。
ワクサカ そう、そうなんですよ。だからこそ、恐れ多さも倍増して。たまたま僕は談吉さんと交流があって、声をかけやすかったので来ていただいたんですけど、何か符合するものがあって、つながってしまったんですね。偶然だとしても、あれはうれしかった。
川田 符合するもの、確かにあったね。
世界に向けた平井の自由演技ダンス
ワクサカ AR三兄弟と浦井さんの落語といえば、以前に『テクノコント』というプロジェクトで、『テクノ落語』というのをやりましたよね。
浦井 はい。『死神』というネタをやらせていただきました。
川田 2018年の『テクノコントvol.1 メロー・イエロー・マジック・オーケストラ mellow Yellow Magic Orchestra』という公演でね。
ワクサカ 浦井さん演じる落語家が蕎麦をすすると、それが可視化されるという。
川田 死神も出てくるし。落語の拡張です。
ワクサカ そのときは浦井さんだけでしたが、今回は平井さんも拡張してもらって。
川田 そう、平井くんが踊りをね。踊っている動作を3Dキャプチャーして、それを作品にも反映しました。
平井 いきなり「3分間のフリー演技をしてくれ」と言われました。
川田 まさか自由演技で、この動きになるとはね。
浦井 これはやばい。
ワクサカ 見事でした。
平井 何を言ってるんですか。見事じゃないでしょう。
ワクサカ これはあれですか、イソギンチャク的な原生生物が、やがて陸へ上がる、みたいな。
平井 別に生物の進化の過程を表現してないですよ。何も考えてないです。
ワクサカ 浦井さんの落語のときも、現場のスタッフみんなで盛り上がりましたけど、平井さんの踊りは、スタッフみんな泣いてましたもんね。
平井 どこがやねん。泣いてるか。
浦井 これよく観ると、平井のうしろで見守っているAR三兄弟の次男・高木(伸二)さんも、感涙にむせいでますね。
平井 ボーっとしてるやん。次男さん、観てないやろ、俺のこと。
川田 ともかく、平井くんの踊りは、作品の中でしっかり観られますので、気になる方はぜひ観てください。
平井 僕の踊りよりも、アオイヤマダさんの素晴らしいダンスを観てください。世界に向けて発信しようって言っているのに、僕のフリー演技のダンス観せてどうするんですか。
浦井 ちゃんと世界にも伝わるから大丈夫よ。
平井 伝わるか!
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