結成20周年の2020年に回るはずだった全国ツアーがコロナ禍で延期。21周年となる2021年に改めて「20+1周年」として4年ぶりに各地で単独ライブを開催している。21年目の彼らは今、何を考え、どのように漫才に取り組んでいるのか。笑い飯の西田幸治と哲夫のふたりに、広がりつつある各々の活動、そしてコンビでの今後の展望を聞いた。
【インタビュー前編】笑い飯、最近の『M-1』に感じる傾向は「波が増えてきた」
ネタは逸脱を期待して作る
——おふたりのネタ作りについて、改めて教えていただきたいです。ほかのインタビューでも「ネタ作りは大変」と話されていましたが、4年ぶりの全国ツアーに向けたネタ作りはいかがでしたか?

哲夫 やっぱりずっと大変ですね。だいたい毎年10、11月ごろ単独ライブをやるんで、年イチのしんどい周期がそのあたりやったんですよ。でも今年は7月からツアーがスタートして、昨年の単独から一年待たずにまた新しいネタを作らんとあかん状況になったんで。
——毎年のリズムを崩して、ネタ作りを前倒ししなければならなかったわけですね。
哲夫 やっぱり題材を集める期間が必要なんで。わっと考えを巡らして、「これ行ける」と判断するような。
——ネタは哲夫さんが題材を提案して、西田さんが判断する?

西田 そうですね。やってみて判断することが多いですけど。これちょっとやったことある感じするなとか、伝わるかどうか、おもしろそうかどうか。
——「やってみて」というのは、哲夫さんの持ってきた題材をもとに、おふたりでやりとりをしてみるということですよね。
西田 一回交互にボケてみる。
——そこで「ちょっとネタにはならないな」というものがある?

哲夫 はい。それはなんかね、「どうもおもしろうならへんな」というものですね。
西田 ネタを試すときには逸脱するのを期待してやるんですよ。でも、どこまでいっても逸脱し切れないものはボツになる、みたいな感じですかね。
——漫才の題材は、芸歴を重ねての変化はありますか?
哲夫 基本何も変わってないですね。でも結局ちょっと斬新やなという題材はだいぶ潰してきてるんで。「これは誰もやってない題材かつ誰もがわかるテーマやな」というのと「ちょっと斬新系やな」というのとふたつあって、その両方共もうかなりやってきていて。なんとかまだ残ってるところを探る作業がなかなか、年々大変にはなっていきますね。
——これまでたくさんのネタを生み出してきたからこその悩みですね。

哲夫 そうですね。まあもちろん過去の形を踏襲するというか、『鳥人』があって、まだこの形でできるんちゃうかと『サンタウロス』を作ったりとか、『宇宙戦争』みたいなんがあって『ロボット』作ったりとか、そういうこともありますけど。でも意欲としては、常になるべく何か新しいのを、というのはあるんですよね。
「恥ずい」からできないこと
——笑い飯の漫才はずっと唯一無二のものだと思うのですが、題材を探るときに「自分たちらしさ」はどの程度意識するものですか?

哲夫 まあそのへんは特に意識することなく自由ですけど、ふたり共が苦手としているからということで外すテーマは多々ありますね。たとえばコンパを題材にして、若い女の子役をせなあかんとかね。
——若い女の子はできない。
哲夫 演じられない。なんなんでしょう、おばあちゃんとかおばちゃんはできてもキャーキャー的なのは難しい。要は恥ずいんでしょうね。
西田 恥ずいなあ。
哲夫 自分でもわかるんですよ。恥ずいと思ってもタガを外したら慣れてできるんやろうなと。でもねえ……。
——それは昔からですか。

哲夫 そうですね。シラフで上手に歌うの、めっちゃ恥ずいんですよ。テレビでいっぺん「歌うま」みたいのんやらされて、それもめっちゃ恥ずかった。チャゲアス(CHAGE and ASKA)歌わされて。
——(笑)。
哲夫 あれも何回か番組出たら慣れてくるんやろうな、とわかるんですけど、でも恥ずいんですよ。ネタでもそんな部分がまだあるんですよねえ。