根本宗子が演劇活動を休止した1年間で見つけたもの 横山由依・中山莉子らと挑むオペレッタ『Cape jasmine』

2021.9.20


コロナで世界が変わっても、イラっとすることって変わらないじゃん

「舞台はもちろんお客さんのためにやるんですけど、今回は出演者も含めて全員が『楽しかった』って思ってもらえればそれでOKって感じです。今、つらい思いをして演劇をやりたいわけないじゃないですか」

──これから稽古が始まりますが、根本さんの中ではどれくらいイメージができてるんですか?

根本 今回は稽古期間が2週間ということもあって、「稽古で試しながら」というよりは、明確に演出プランをイメージしながら台本を書いてます。昔、「Bar公演」っていう、毎月バーで新作をやってたころは稽古も5日くらいだったんでそういう書き方をしてたんですけど、最近はあまりやってなくて。だから青年館の規模でBar公演をやるみたいな感じで。

今回は、扱う題材もすごくミニマムなんです。普通、劇場が大きくなると物語のスケールも大きくなるじゃないですか。「隣の人に水をこぼして怒られる」みたいなことをやっても、動きが小さ過ぎて見えないから。でも、それくらい小さいことをやっても伝わるような仕かけを考えながらミニマムな感情の動きを書いてますね。

──日本青年館の規模だと、壮大な演劇をイメージしますよね。

根本 結局私って、描きたいものがずっとミニマムなことなんですよね。もちろん世の中をよくしたいとか、少しでも前向きなムードにしたいっていうのは思うんですけど、柄じゃないと言いますか、演劇でそれをやる担当は別でもうたくさんいらっしゃるので、私の書き方だから伝わる層に届けたいなと。

──描きたいものはずっと変わっていない。

根本 伝わるかわかんないですけど、私、初めてひとり暮らしをしたときからずっと冷蔵庫を買い替えてなくて、マジで小さいんですよ。で、わりと料理もするんで、毎回ドアを開けるたびに何かが落ちてくるし、卵が割れちゃったりして、めちゃくちゃ不便なんですよね。それでイライラするみたいなことで、ずっと演劇を書いてるんで(笑)。いけると思って狭いところにギリギリ入れちゃって、それがトラブルを招く……みたいな書き方です。

別に今は冷蔵庫を買い替えるくらいの余裕はありますけど、大きい冷蔵庫を買っちゃったら演劇が書けなくなっちゃう気がして。今、コロナが一番大変みたいな感じになってますけど、買った卵が割れるのも普通にショックじゃないですか。コロナで世界が変わっても、イラっとすることって変わらないじゃん、みたいなのが自分の中で強いんだろうなと思って。

──改めて、そういう身近なテーマを描きたいと思ったんですね。

根本 そういうことをブツブツ書いてる劇作家ってあんまり見たことがないなと思って。私は宮藤官九郎さんからも影響を受けてるんですけど、宮藤さんのお芝居を今年観ていて「カントリーマアムが小さくなった」っていうセリフ(歌)があったんですよ。わざわざそんなことみんな言わないけど、演劇で言われると「確かに」って思うし(笑)。そうやって演劇と自分の生活がリンクしたりするのがおもしろくて、自分が最初に演劇を楽しいって思ったのはそういうことだったなって思い出して。

それをチープに言っちゃうと「女子あるある」みたいに劇評で言われちゃったりするんですけど、「もっとくだらないことって身近に起こるよな」って思いながら今回の作品も書いて、けど予想しないところに着地させる気持ちよさみたいなのが自分の中にあるんですよね。それって私ひとりの力じゃできなくて、今回とか特に演者の一人ひとりの熱量を借りなくちゃ成立しなくて、それってやっぱり演劇でしかできないんですよ。生の力技と言いますか。

──本番で楽しみにしていることはありますか?

根本 今回は特にお客さんがどう思ったか教えてほしいですね。あんまり「こう思ってほしい」みたいなのはないから、何を感じたか本当は全員に聞きたいです。ただ単純に音楽があって楽しくてハッピーな気持ちになったとか、いろいろ考えたなら何を考えたのか聞いてみたい。同じ空間で同じ作品を観た人たち一人ひとりが何を感じて帰るのかなっていうのは、今までよりもすごく気になる。

こういう状況でも演劇を観たいと思って来てくれる人たちにとって、演劇ってなんなのかを知りたいのかもしれないですね。とにかく自分と演劇の距離を考えて書いたので。遠距離恋愛してた相手(演劇)と久々に仕事してるみたいな感覚です(笑)。


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  • 根本宗子(ねもと・しゅうこ)capejasmine

    ブランニューオペレッタ『Cape jasmine(ケープ・ジャスミン)』

    作・演出・企画:根本宗子
    音楽:小春(チャラン・ポ・ランタン)
    演奏:カンカンバルカン楽団

    公演日程:2021年10月6日(水)、10月7日(木)(全3公演)
    10月6日(水)18:30開演
    10月7日(木)14:00開演/18:30開演
    会場:日本青年館ホール 東京都新宿区霞ヶ丘町4-1
    チケット料金(全席指定・税込):S席8,800円/A席7,500円
    学生チケット(22歳以下):3,800円(枚数限定、チケットぴあのみで販売、要学生証提示)
    チケットぴあ

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山本大樹

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山本大樹

(やまもと・だいき)編集・ライター。1991年生まれ、埼玉県出身。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。編集プロダクション勤務を経て、2019年に独立。現在『クイック・ジャパン』外部編集・ライターのほか、『BRUTUS』、『オードリーとオールナイトニッポン』シリーズ、『三四郎のオールナイトニッポ..

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