俳優・柳楽優弥が語る、駆け抜けた10年の終わりと始まり

2021.6.1

文=髙崎 薫 写真=鈴木 渉
編集=森田真規


「30歳までに一度燃え尽きて灰になって、ぴっかぴかの金色になって生まれ変わりたい」

10年前、当時21歳だった柳楽優弥は、自身の自伝的エッセイの連載(※)最終回でこう語った。

14歳という若さで第57回カンヌ国際映画祭の最優秀主演男優賞を獲得し、それゆえに苦悩もあった。そのすべてを飲み込んで、新たな気持ちで俳優として未来を見据え、覚悟を持った言葉だった。

その後の活躍は記憶に新しい。「僕にできる役をやっていかなきゃいけない」と語ったとおり、映画のみならず、テレビドラマや舞台へと活躍の幅を広げ、主役から脇役、シリアスな役柄からコメディまで、さまざまな顔を見せてきた。まさに有言実行の10年間だった。

2021年、主演作『HOKUSAI』の公開を迎え、31歳になった柳楽優弥に、今の思いを聞いた。

※DeNAとNTTドコモによる共同出資企業が運営する投稿コミュニティサイト『エブリスタ』。その中の「E★プレミアム」で、2010年~2011年にかけて月2回のペースで掲載していたもの。本稿の筆者はその構成を担当し、毎月、柳楽優弥に取材していた。


タランティーノと是枝監督から受けたアドバイス

世界で一番有名な日本人アーティスト、葛飾北斎。誰もが知るあの波(『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』)を生み出した天才絵師の生涯を描いた映画『HOKUSAI』が2021年5月28日に公開された。

当時にしては異例ともいえる90年という長い生涯。大衆を魅了した『冨嶽三十六景』を描いたのは、実に70歳になってからという遅咲きの天才、葛飾北斎。その青年期を柳楽が、老年期を国際的なダンサーの田中泯がW主演で演じる。

映画『HOKUSAI』90秒予告

──10年前、柳楽さんは「どんな役であっても、絶対に自分にしかできないと思われるように演じたい。そうすることで『もっと違う柳楽を見たい。次は主役にしよう』と思ってもらえるかもしれない」と言っていました。その言葉のとおりにどの作品でも強い印象を残し、再び主演作が増えてきた今、主演について考えていることはありますか?

先輩方を見ていて、監督とコミュニケーションを取って建設的に現場を組み立てて取り組まれている姿に憧れました。そうなるためにはある程度の経験値や想像力の引き出しが必要だろうと思っていたので、主役や脇役にかかわらず、いろいろな経験をしたいと思っていました。
でも、いざ主演をやらせていただくようになると、怖いなと思うことがあります(笑)。そこはあまり変わらないのかもしれません。

柳楽優弥(やぎら・ゆうや)1990年生まれ、東京都出身。

──昨年出版した『やぎら本』(SDP)では、是枝裕和監督にクエンティン・タランティーノ監督など、誌面に登場する全員に「主演俳優に必要なものは何か」と聞いているのが印象的でした。

タランティーノ監督は「主演は見習われるような振る舞いをするべきだ」と仰っていて、是枝さんは「監督と主演で同じ波が自然とできているのが理想」と仰っていました。おふたりの考え方は、演じる側があまり意識しないようなことだったので、とてもおもしろかったです。おふたりの言葉を頭の片隅に置いて現場に行くようにしているんですが、実行するのはなかなか難しいなと感じています。自分の理想に少しずつ近づいて行けたらいいのかなと思っています。

「今までやってきたことを一回捨てるような感覚」


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髙崎 薫

(たかさき・かおる)編集者・ライター。秋田県生まれ。(株)ベネッセコーポレーション「進研ゼミ」編集部を経て、(株)角川メディアハウス(現・ムービーウォーカー)にて映画雑誌や書籍を編集・出版、近年では(学)角川ドワンゴ学園(N高)にて「21世紀型スキル」の授業開発や職業体験ワークショップを手がけるなど..

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