「“ポスト〇〇”は諦めた」ニューヨーク屋敷裕政、“王道”に乗った芸人のコンプレックス

2021.4.21

「ポスト○○」ではなくニューヨークとして

ニューヨーク嶋佐和也(左)、屋敷裕政(右)/『芸人雑誌 volume2』より

──今「ポストかまいたち」と呼ばれることも多いと思います。ただ一般的に「ポスト○○」って、本体よりちょっと小さめに見積もられてる気もして、マトリョーシカみたいな。

屋敷 そう思います俺も。「かまいたちさんみたいにやらな」って思わんようにしてますね。千鳥さんなら、かまいたちさんなら、もっとおもろくできるやろうなとか正直思ったりしちゃうんすけど、それが一番意味ないなと。

──そこを打開するための、作戦ってあるんですか?

屋敷 うーん……諦めることっすよね。そう言っていただくのはありがたいですけど、俺らが本気でそこを目指しても意味がない。もっと独自のことをやらなだめですよね。

──独自のこと。

屋敷 個人的には、ネタさえちゃんとおもしいことやってたら、あとはどうなってもいいと思ってて。俺らスーパー芸人じゃないんですよ。

──それでもニューヨークさんはスーパー芸人ぽく思われがちじゃないですか。漫才もコントも平場のトークもおもしろい、ゲストから話を引き出すのも上手。

屋敷 でも、全然できるフリせんでええと思ってるんです。だからラジオではあかんかったときの話もしますし、苦手なこともしゃべるし、こういうの俺らようせんなっていうのを、隠さんとこうと。なんていうか、“普通の感覚”は大事にしてますね。

──ああ……それがまさにニューヨークさん独自のことですね。

屋敷 天才みたいなフリはできひんから、嘘つかへんようにしてます。ウケるかなってことより、本当に思ったことはなんやろっていうのをなるべく考えるように。

──嘘をついてウケると、さらにそこを守るための嘘が必要になってしまう。

屋敷 制作陣のこと考えると「今ここで噛みついておいたほうがええんやろうな」というときでも、一応本当の自分はどうなんやろっていうのを、大事にしようとは思いますね。まだ全然コツ掴めてないですけど。

∞ホールに恩返しをする日

ニューヨーク嶋佐和也(左)、屋敷裕政(右)/『芸人雑誌 volume2』より

──先日「ヨシモト∞ホール」からの卒業が発表されましたが、「卒業」というかたちを取るのは、ニューヨークさんが功労者だからだとスタッフさんが話されてまして。

屋敷 (横澤)夏子もおかず(クラブ)もEXITも、売れたらヌルッとあんま出えへんようになるのが普通ですけど、僕らにはカチッとしてくれましたね(笑)。

──理想のかたちなのかなと。劇場で結果を出して、テレビがそこについてくるというのは。

屋敷 いや本当の理想は……俺らトップ3とかに選んでもらってたんです。そのとき一緒に選ばれたジャングルポケットさんと横澤夏子は売れましたけど、俺らはテレビに出てなかった。もっともっとフロントマンとして∞ホールをPRせなあかんなっていう時期に、俺らは売れなかったっていう負い目というか、後悔というか、コンプレックスみたいなんはちょっとあります。

──そのコンプレックスは今も?

屋敷 今やっとテレビに出だしたので、還元というか、ホールを盛り上げるためにもテレビで∞のメンバーと絡めたらいいなと思いますけどね。

──まわりからの目が変わった、芸人としての「潮目が変わった」という感覚ってありますか?

屋敷 いまいちわかってないですね。昔『バチバチエレキテる』(フジテレビ/2013年)をやっていたときに、夏のお台場冒険王のステージに出たらお客さん1000人ぐらいおったんです。俺らが番組内でしかやってないノリでもわーって盛り上がったときに、初めてお客さんを体感したんですよ。今はこういう時期もあってああいうのがまだないです(笑)。確かにYouTubeやり出して、応援してくれる人は増えたと思うんですけど。

──YouTubeが果たした役割は大きかったんですね。

屋敷 それは絶対そう。ラジオやYouTubeで、お客さんとコミュニケーション取っとかんと、どんどん忘れられるなっていうのを思ったんですね。2018年あたりですか。

──嶋佐さんとの仲が最悪だっという、2018年。

屋敷 そうです(笑)。

今を振り返ったときのために「自分ら的に納得いってりゃいいな」

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