「“ポスト〇〇”は諦めた」ニューヨーク屋敷裕政、“王道”に乗った芸人のコンプレックス

2021.4.21
ニューヨーク屋敷裕政

「もう10年以上やってきて、いろんな芸人見てきて、みんないいときもありゃ悪いときもあるのを繰り返してるっていうのもわかるんで」。

“2021年の顔”としてのインタビューで、ニューヨーク屋敷裕政はそう言葉を選んだ。かつての「怖いものなし」たちは、10年かけてたくさんの怖いものを知り、今本当の「怖いものなし」として番組表をニューヨークの文字で埋めていく。

ネクストブレイクの呪縛を「普通の感覚」でぶち破った屋敷が、今思うこと、相方との歴史、見据えた未来。大ニューヨーク時代到来前夜の特別なソロインタビュー。

『芸人雑誌 volume2』に掲載されているニューヨークのインタビューから、コンビのツッコミ・屋敷裕政のインタビューを全文先行公開する。

【関連】「2021年の顔」はニューヨークか、空気階段か、Aマッソか。


ニューヨークという城を守ること

『芸人雑誌 volume2』ニューヨーク表紙バージョン

──先日『ニューヨークのニューラジオ』で話されていた「完全に俺ら始まった」の、その真意ってなんでしょうか。

屋敷 それは……違うステージが始まったという感じですね。今までは自分らが売れるためにがんばるっていうベクトルだったのが、最近は俺らのために「ベットしてくれる」人がおるじゃないですか。俺らふたりが、『アメトーーク!』とか、『ロンドンハーツ』(共にテレビ朝日)とか、ダウンタウンさんの前でがんばるとかじゃなくて、俺らのチームや番組がみんなにおもしろいと思われるようにしないといけない。俺らふたりだけの話じゃなくなってきたなっていう感じがありますね。

──せっかくニューヨークに賭けてくれたんだから返さなきゃ、というような。

屋敷 そうですね。で、「爪あと残してまた呼ばれよう」っていう種類の「がんばる」から、「始まったものを長くつづける」とか「もっといい時間帯に上げる」っていう「がんばる」に変わっていってる。それは今までとちょっと違う概念というか価値観というか感覚やなって思います。でもそのためにはどうしたらいいのかっていうのがまだあんまりようわからんくて。

──具体的にどうすればいいのか。

屋敷 たとえば今までゲストで呼ばれたら、とりあえず目の前におる人がいっぱい笑ってくれたらええなみたいな感じやったんです。今後『NEWニューヨーク』(テレビ朝日)で、スタッフさんが一生懸命考えてくれたおもしろいことを俺らがやったら、おそらくスタジオは笑ってくれるじゃないですか。でもそれだけで満足したらダメになる。

視聴者さんにちゃんとおもしろいと思ってもらって、視聴率とかよくわかんないですけど、そういうものが結果としてついてくるとか。あともっと言うと、番組の中の空気もよくせなあかんとか。

──広い視野が求められるんですね。

屋敷 ずっとテレビ出てる人、城を構えてる人はそうなんでしょうね。ただおもろいこと言うてるだけじゃないんだと。

いつの間にか、泡のように消える可能性もあるから

ニューヨーク屋敷裕政(『芸人雑誌 volume2』より)

──屋敷さんの中で「売れる」ってどういう感覚ですか。

屋敷 うーん、俺らにはまだわからん何かがあるんでしょうけど、テレビって。こんな不安定な世界で、ずーっと正解出しつづけとる人ってことじゃないですか。その境地は想像を絶しますね。

言ってしまえば、俺ら8割ぐらいただ運がええだけやけどなって思いながらテレビ出てるんですよ。別に俺らじゃなくてもええところを、たまたま『M-1』と『キングオブコント』で決勝行けて、番組に呼ばれて、今は冠を持たしてもらえる、それってすっごい運がよかったっていう感覚で。

芸能人はK-1ファイターじゃないんで、勝ち負けはっきりした世界で確実に相手ぶちのめして勝ち上がるというものでもない。俺らもそうですけど、なんとなく、なんとなく、で、たぶん呼ばれてる。

──毎回点数が出るわけでもない。

屋敷 そう、こんなふわふわしているものの中で、それを20年30年やってる人は、技術的なすごさももちろんですけど……精神力がやばいんじゃないかと。本当、何を根拠に自信とか持ててはるんやろとは思いますね。

──場数を踏んでも自信は出てこないものですか?

屋敷 全然出てこないですね。どっかで「別にもう知らんがな」って思わなやってられへんと思います。いちいち期待に応えなとか、スタッフさんにやっぱニューヨークおもろいって思われなとか考えるともうしんどくなります。

──未知なる力に頼りたくもなりますね。

屋敷 (オードリーの)若林(正恭)さんがよう言う、数珠買っちゃうっていうのもすっごいわかります。

──数珠、買いそうですか?

屋敷 いやー数珠はわかんないですけど、なんか変なルーティン大事にし出すかもしれないです(笑)。だから俺はテレビだけじゃなく、テレビ・YouTube・劇場の3つがうまいことやれたらいいなと思います。いつの間にか泡のように消える可能性もあるじゃないですか。

「ポスト○○」ではなくニューヨークとして


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西澤千央

(にしざわ・ちひろ)1976年生まれ。神奈川県出身。実家の飲み屋手伝い→ライター。『クイック・ジャパン』(太田出版)や『文春オンライン』、『GINZA』(マガジンハウス)などで執筆。ベイスターズとねこと酒が好き。

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