「ラクな仕事って残らないんです」今田耕司55歳、自分の“居場所”を求めて戦う日々

2021.4.10


15回務めた『M-1』の司会、それでも「アドバイスなんてホンマに言えない」

今田耕司

──現在もさまざまな種類の番組を担当されていますが、番組ごとに何か変えていることはありますか?

意識なく、番組のカラーに自分が合わせていく芸風のような気がします。勝手にそういうスイッチが入るというか。「今日はこの番組だからこうしよう」みたいなことはあんまりしたことがない。

「こんな感じでやってください」みたいなことを受けてやる感じなので、自己プロデュース能力とか全然ないんだと思います。自分がこうしたいみたいな主張があまりないんですよね。テレビに出られてたらええわ、みたいな。

──『M-1グランプリ』では2003年から司会を務めています。ほかの番組とは違う緊張感もあるでしょうが、当日はどのような心境なんでしょうか?

ありがたいけど、やっぱりいい意味で気が重いですよ。でも誰かが「気が重い仕事というのはいい仕事だ」って言っていたのを聞いて、なるほどなあって。舞台とかでもそうですけど、将来、「あの仕事をやっておいてよかった」と思うんだろうなって。ラクな仕事ってあんまり残らなかったりするんですよね。

──『M-1』の緊張感をほぐすためにやっていることはありますか?

そういうのがないんですよねえ……。まわりをリラックスさせてあげなきゃとは思うんですけど、やっぱり最終的には個人個人なので。人にまったく興味ないわけではないけど、究極的には興味ないから難しい。人に「こうやったらええで」とかはホンマに言えないですね。

「出たとこ勝負」で「今日も生き残った」の繰り返し

今田耕司

──『オールスター感謝祭』(TBS)のような大人数を相手に司会をするときは、どのような準備をしますか?

とにかくどこの席に誰が座ってるか、だけですね(笑)。コロナ前までは出演者が200人近くいたから、めちゃくちゃ難しいんですよ。解答者のランキングとか、4つくらいのモニターが目の前にあって、トレーダーみたいに見てなきゃダメ。解答が一番遅かったのは誰っていうのは先にモニターに出るんですけど、その人がどこに座ってるか、とか。

未だにどうしたらいいかわからなくなります(笑)。でも、カメラさんは全部把握してるんですよね。(島田)紳助さん時代からの伝説のカメラマンと言われるような人がいるんですけど、瞬時にバンっと抜くし、こっちがパッと振ったら、バンとカメラが向く。すごいチームに入れてもらってるなって思いますよ。

目標はやっぱり、ひとり1回は絶対に話を振ることなんですけど、だいたい「今回は3人いけなかったか」とか反省します。もちろんカメラでは抜いたり、何もないってことはないんですけど、せっかく生放送なんやし会話をしたいっていうのは意識してますね。

──『M-1』も『感謝祭』も大変な仕事だと思いますが、悩んだときは先輩にアドバイスを聞いたりもするのでしょうか? それとも自分の中だけで考えていますか?

僕の場合はもうギャンブルですね(笑)。イチかバチか。たとえば5時間半の生番組なんて何がどうなるかわからないから、どうやろうなんて考えようがないじゃないですか。だからたぶん、ライブとかで司会をやらせてもらったことがすごく大きいと思うんです。

吉本の芸人って劇場があるから、ゲームコーナーとかトークイベントとかたくさん出られるんです。そういう場で、いろいろ試させてもらいました。いつも“出たとこ勝負”がつづいてる感じ。今日も生き残った、今日も生き残ったって。めちゃくちゃケガしてるときもありますけどね(笑)。


「芸人」だからテレビに出られる、そのために舞台に上がる

今田耕司

──テレビやYouTube、劇場と芸人さんはさまざまな活躍の場がありますが、今田さんが一番大事にしているのは?

やっぱりテレビですね。でも、なんで「テレビに出られてるんやろ」って考えると、芸人だからやと思うんです。で、「芸人ってなんやろ」って思ったら、どうしても“板の上”っていうのが大事。

なんか「出番」があるのがうれしいんですよね。寄席の「出番」で芸人さんをずっと見てきたんで、普遍的な憧れがあるのかもしれない。楽屋にいて、うどん食って、がーってやってるところのカッコよさが、若いころに植えつけられたので。池乃めだかさんとかと新喜劇でご一緒させてもらって、なんかいいなって憧れましたもん。

──やっぱり今田さんにとって新喜劇の経験というのは大きいですか?

むちゃくちゃ大きいです! あそこで「芸人さん」っていうものに直に触れた感じがしますね。あと、その前に新人のころ、京都花月劇場の進行兼トップ出番みたいな仕事をいただいて通ってた時期もそうだったかな。

麻雀卓を楽屋に持ち込んでるバキバキの“昭和”の芸人さんがギリギリおられたんです。たぶん、東野も知らない。僕がそういう方と接した最後の世代だと思います。

──やっぱり「お笑い芸人」という肩書にはこだわりがありますか?

いや、肩書は「タレント」でもいいんですけど、劇場に出ていたい思いはありますね。(西川)のりお師匠に劇場でお会いしたとき「まだ舞台に出てるのか。えらいなあ」って言っていただいたことがあって。親に褒められたみたいにうれしかったですね。これからも“板の上”の気持ちは忘れずにいたいです。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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