YouTubeの新星“だいにぐるーぷ”インタビュー「引き算のデザイン」と「大量のオマージュ」を解き明かす

2021.2.16

文=原 航平 写真=関 竜太
編集=山本大樹


2020年3月、『樹海の奥地にある、少し不思議な村で1週間生活してみた。』というタイトルの動画がYouTubeで公開された。洗練されたカメラワーク、映画や海外ドラマへの豊かなオマージュ、そして卓越した編集技術。それは“手軽さ”や“親近感”を武器に戦ってきたYouTubeの文化を更新する、新たなエンタテインメントだった。

タレントYouTuberの参入が全盛期を迎え、かつてはブルーオーシャンだったこの世界も群雄割拠の様相を呈している。そんな時代の過渡期に現れた、新しい可能性を切り拓く若者たち。

彼らの名は、“だいにぐるーぷ”という。

独自の企画力と編集スタイルで、一躍YouTube界のニューヒーローとなった彼ら。その想像力はどこから来て、どこへ向かうのか──。

『クイック・ジャパン』vol.151(2020年8月発売)に掲載されたインタビューを、アザーカットと共にウェブで初公開。謎に包まれた“だいにぐるーぷ”の正体に迫る。


サンプリングから生まれる映像演出

だいにぐるーぷのメンバーは全員、中学時代からの同級生だ。かつて同じ海外ドラマに熱狂し、同じゲームに夢中になった経験が、現在の動画制作にも生かされているという。画面を注視してみると、そこにはオマージュやサンプリングが豊富に散りばめられている。彼らがこれまでに影響を受けたカルチャーから、だいにぐるーぷのクリエイティブの原点を探った。

──だいにぐるーぷの動画には、どれも海外のドラマやゲーム、映画からのオマージュやサンプリングが隠されていますよね。

岩田 シリーズごとに、参考にしている作品や引用している作品が明確にあるんです。

飯野 メンバー全員、けっこういろんなコンテンツを観てるしね。

岩田 オープニングとエンディングを入れた海外ドラマ風のフォーマットが定着したのは、最初の「1週間逃亡生活」からです。僕と飯野がずっとファンだった『24-TWENTY FOUR-』(※1)の演出をがっつり意識しはじめたのもこのあたりから。

※1:2001年にアメリカで放送され、その後世界的人気作品となったアクション・サスペンス作品

飯野 デジタル時計のアニメーションでどんどん時間が経過していく切迫感を出したり、同時進行している場面を画面分割して見せたり。

岩田 「1週間逃亡生活」の企画自体は、『プリズン・ブレイク』(※2)から着想を得ています。脱獄犯と警察の駆け引きが主体になっているこのドラマのストーリーをYouTubeのバラエティ企画に落とし込んだらおもしろいんじゃないかと思ったんだよね。

※2:2005年から放送されたサスペンスドラマ。頭脳明晰な主人公が無実の罪で死刑囚となった兄を救うために脱獄を企てる人気シリーズ

土井谷 『プリズン・ブレイク』はシナリオも二転三転するし、絶対につづきが気になるところで話が終わるんで。設定も参考にしていて、犯人は何も持たずに脱獄するから、行く先々で犯罪を起こさないと逃げられない。だから僕らも、ロッカーを開けないと車のカギが手に入らないとか、細かい仕掛けを作っているんです。

岩田 そのあたりのゲーム性は常に意識しているよね。

──2018年の「1週間逃亡生活」以降、「無人島からの脱出」や「1週間逃亡生活inアメリカ」など企画のスケールがどんどん大きくなっていきますよね。

飯野 「無人島からの脱出」は、『シャッター アイランド』(※3)を参考に企画していたんです。当初は謎に包まれた島から脱出するようなミステリアスな作品を想定していたんですけど、思ったよりもバラエティっぽくなっちゃって……。映像の力だけで押し切るのを躊躇して、ナレーションで無理やり笑いどころを作っちゃったり。

※3:マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演のアメリカ映画(2010年)。精神を病んだ犯罪者だけを収容する「閉ざされた島(シャッター アイランド)」を舞台にしたミステリー

岩田 「無人島」でそのあたりを反省して、これ以降はホラーやフェイクドキュメンタリーの世界観を尊重するようになりました。

須藤 そう考えると最初の「1週間逃亡生活」と、その1年後に公開した「1週間逃亡生活inアメリカ」は、企画自体はほとんど一緒だけど見せ方が全然違うよね。

岩田 飯野はかなり海外ドラマとかを意識して編集してるんじゃない?

飯野 そうだね。アメリカの最初のほうはわかりやすさを意識してたけど、後半は「ここは『ブレイキング・バッド』(※4)っぽく」とか、自分が好きな海外ドラマを明確にオマージュするようになった。

※4:2008年〜2013年に放送されたアメリカのドラマシリーズ。余命宣告を受けた化学教師が愛する家族に財産を残すためにドラッグの精製に手を染め、麻薬王へとのし上がっていく物語

須藤 『ブレイキング・バッド』っていうと、具体的にどのあたりが?

飯野 砂漠での逃走劇が繰り広げられるPart6とかは完全にそうだね。『ブレイキング・バッド』って、砂漠のシーンがめっちゃ多いんだよ。壮大な景色のなかに逃亡者を立たせて、ゆったりとした艶のあるメロディを乗せるイメージ。

西尾 オマージュでいうと、アニメーションを使ったPart1の企画説明は『バトルシップ』(※5)のエンディングにかなり寄せました。これまでの動画の企画説明はすべて2Dだったけど、アメリカっていう舞台のスケール感もあったから、デジタル的な表現に挑戦してみたかったんだよね。そこで、カメラが3D空間を移動していくような『バトルシップ』の映像を、サンプルとして提案して。

※5:2012年のアメリカ映画。ハワイでの軍事演習中に謎のエイリアンとその母船に遭遇した海軍や日本の自衛艦が、地球存亡の危機に立ち向かうSFアクション。総製作費2億ドル以上

須藤 カラーグレーディング(映像の色彩補正)で画面を青っぽくしてるのはなんで?

飯野 北野武監督の映画が好きだから、“キタノブルー”を意識してるかもしれない。全体を青っぽくして人物をオレンジっぽく補正すると、画面にメリハリが出るし、好きな映画の質感になる。

岩田 飯野と土井谷はキタノ映画が好きだよね。

土井谷 『キッズ・リターン』(※6)とかは、セリフで説明するんじゃなくて、映像と音で躍動感を伝えるのがすごいと思う。だから、つい惹き込まれて観ちゃうんだよね。須藤は影響を受けたドラマとか映画とかあるの?

※6:1996年、北野武監督の映画。落ちこぼれの高校生ふたり組の青春と挫折を描いた日本映画の金字塔。「キタノブルー」と呼ばれる青の色彩と久石譲による劇伴音楽も印象的

須藤 最近ハマってるのは『The 100/ハンドレッド』(※7)っていうドラマかな。でも僕と加藤は企画会議にほとんど参加しないから動画にはなかなか反映されてないけど(笑)、単純に好きだよね。

※7:2014年から放送されたアメリカのドラマシリーズ。核戦争から100年後、宇宙ステーションから地球に帰還した100人の若者たちが新生物たちの脅威に晒される

画面を整理するのは“引き算”のデザイン


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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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