BABYMETALインタビュー<奇跡の3人>を経て“KAWAII”の先に進化「まだまだ完成形ではない」

2020.12.31
babymetal ベビメタ

文=小田部 仁 撮影=神藤 剛


2020年12月31日、結成10年を迎えたBABYMETALが『NHK紅白歌合戦』に出演する。

長年多くの密着取材を行ってきた『クイック・ジャパン』も、12月25日発売の最新号では、紅白への意気込みや初のベストアルバム『10 BABYMETAL YEARS』、2021年の日本武道館ワンマンライブ10公演についてのインタビューを行っている。

さらにここでは、2019年に行ったインタビューをQJWebで初公開。当時はYUIMETAL脱退後、ダークサイドを経て自分たちの在り方を見つめ直し、新機軸を打ち出した『METAL GALAXY』をリリースした直後。ウェンブリー・アリーナから3年(インタビュー当時)という月日を経て、彼女たちは自らの在り方をどのように認識していたのか。

※この記事は2019年10月25日に発売された『クイック・ジャパン』vol.146掲載のインタビューを転載したものです。


BABYMETALは奇跡の3人だった

──前回取材させていただいたのはウェンブリー・アリーナでの公演のとき(『クイック・ジャパン』vol.125/2016年4月に取材) でしたが、そのときにSU-METALさんが「今までは運に助けられていたところもあったと思う。でも、これからは運だけじゃなくて実力でここまでこれたぞと言えるようになりたい」と仰っていました。まさにその証明となるようなアルバムができたんじゃないかと思います。

BABYMETALの実力が遺憾なく発揮されている、最高傑作だと思いました。BABYMETALじゃないと作れない、どのカテゴリーにも当てはまらない音楽になっています。

SU そう言っていただけると、うれしいです。本当に最初のころは自分たちは運がいいだけだ、恵まれている、だからこそ謙虚でいたいという思いがあったんです。でもYUIMETALが出ないということが発表されて初めてのライブで、確か(米国・ミズーリ州)カンザスシティだったと思うんですけど、お客さんの雰囲気がいつもと全然違って。

私たちは精一杯の気持ちで望んだんですが、私たちふたりだけじゃダメかもしれないってショックを受けて。でも、なんて言葉で言い表したらいいのかわからないんですけど……BABYMETALって奇跡の3人だったんだなってことにそのとき、改めて気づかされたんですね。

それぞれが自分たちの想いを前に前に届けているんだけど、お互いがそばにいることはわかっているし、自分が自分らしく一番自由でいられる……そんな風に歩んできたんですよね。だからこそ、自分がBABYMETALであるということに誇りと責任感を改めて感じたんです。ちゃんとしなきゃ、ってネガティブじゃなくてポジティブに思えて。

──逆境の中でこそ、自分たちの存在意義を感じることができた、と。

SU そうですね。そのツアーでニューヨークやロサンゼルスみたいな大きな都市ではないアメリカの地方都市を回る中で、 BABYMETALのことをほとんど知らない人たちの前でもたくさんライブをしたんですよ。その中で、今までの3人のBABYMETALじゃなかったとしても今の自分たちの歌やパフォーマンスをおもしろいと思ってくれている人がたくさんいることに気づいて。

初めて観てくれた人でも素直にいいと思えるようなものを、自分たちはできる実力がついてるんだなって思えたんですね。

SU-METAL
「自分がBABYMETALであるということに誇りと責任感を改めて感じたんです」

──MOAMETALさんは今のお話聞いていかがですか?

MOA うーん、そうですね……。ダークサイドに入ってからは実力をつけたいと思ってとにかく必死でしたね。SU-METALと一緒になって悩んで、でも、立ち止まって考えたときに、私たちは結局のところ、ライブで表現することしかできないって思ったんですよね。

ミスしたら言い訳できないし、ライブの中で活きるグループだからこそ、そこで戦っていかなきゃいけないと思ったときに、とにかく圧倒的な実力でオーディエンスのみなさんをひれ伏せさせるしかないという結論にたどり着いて……。

この3年間で心は本当に強くなったと思います。あんな不安や強くならなきゃいけないっていう焦りを感じることなんて、この先きっとないだろうし。

──ある種、何が起きても大丈夫になったというか。モードが明確に変化していってBABYMETALとしての自分たちを改めて見つめなおした。

SU そうですね。今までBABYMETALって“KAWAII METAL”を標榜してたんですけど、それが大人になって進化したらどういうものになっていくんだろうっていうのが、今の自分たちが見せていくべきものだなって思っていて。常に進化していくのがBABYMETALですから、アベンジャーズ(※3人のサポートメンバー。各ライブにそのうちのひとりが参加している)の方々にサポートに入っていただいて、また新たな風が吹いている感じがするんです。

MOA 横浜アリーナでアベンジャーズを初お披露目したときに、すごい歓声をいただいて。「これを待っていたんだな」っていうのはもちろん思いつつも、私たちはまだ進化の過程にあって、これが完成形だとは思ってないですし、いろんな影響を受けてもっともっと変わりつづけていきたいと思ってます。自分たちでもゴールがわからないから、なおさら楽しみですね。

メタルの未来を担っていく存在になりたい


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小田部仁

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小田部 仁

(おたべ・じん)1989年11月20日生まれ。東京都豊島区出身。上智大学文学部英文学科卒。2013年、太田出版に入社。ユースカルチャー誌『クイック・ジャパン』編集部に配属。2015年、退社。現在はフリーランスで文筆・編集業に携わる。

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