BABYMETALはなぜ世界で支持されるのか。マーティ・フリードマンが分析

2020.1.22
QJ vol.125

取材=渡辺裕也


2018年にYUIMETALが脱退するも、今も世界を舞台に快進撃をつづけ、2020年1月下旬には幕張メッセ2DAYSも控えるメタルダンスユニット“BABYMETAL”。
なぜ彼女たちは世界から支持されるのか。その音楽的な特異性を、世界的ヘヴィメタル・バンド“メガデス”のギタリストとしても活躍したマーティ・フリードマンが徹底分析。BABYMETALをちょっと変わったアイドルと思っている方、これを読めばその認識が変わるはずです。

※本記事は、2016年4月22日に発売された『クイック・ジャパン』vol.125掲載のインタビューを転載したものです。


「演奏・声」から見たBABYMETAL

曲づくりと演奏は超A級。 サウンドがヘヴィであるほど彼女たちが引き立つ

――まずは神バンドのことをお聞きしたいんですが、なかでもギターの神様は、マーティさんとも同業ですね。

マーティ そうなんですよ。ギターの神は非常に華があります。パフォーマンスもすごく派手でパワフルだし、本当に理想的ですね。もしあの神さまがいなかったら、神バンドは本当にソンすると思います。ほかの神々3人のバックに徹するときもあれば、ギターがメインになる場面もありますよね。つまり、その時々の立場をうまく使えるギタリストなんです。で、そういうギタリストは、演奏の上手さだけではダメなんですよ。

――演奏力の他に、もっと大事なものがあるということ?

マーティ はい。それは何かっていうと、“関係を大切にできる”ということですね。あと、常識。あの神様はとにかくプロ根性にあふれていて、チャレンジングなことに対して何ひとつ文句を言わず、イカサマもせず、とても綺麗に演奏します。そして、その時々の立場をちゃんと理解できるので、ほかの神々を邪魔するようなことは絶対にしない。 それは本当に素晴らしいところだと思ってます。

――なるほど。ほかの神々についてはどうですか。各プレイヤーをどう見ているのか、ぜひ教えてほしいです。

マーティ ほかの神々についてはそんなに詳しくないので、具体的な話は何もできないんですが、とにかくギターの神様はいろんな顔を持っていますね。とてもユニークな音楽センスを持っていたり、典型的なメタル・ギタリストとはまったく違った、とても幅広い演奏ができる面もあったり……演奏には本当に感動します。海外を見渡しても、そうそういないんじゃないでしょうか。

――どの方もすごいテクニックを備えたギタリストですよね。

マーティ BABYMETALの楽曲を演奏するためには、ハイレベルなプレイヤーが必要ですからね。ただ、もしテクニックがすごいだけなら、僕は神バンドに興味ゼロだったかもしれない。それよりも大事なのは、BABYMETALの演奏に参加している人たちは、一人ひとりのセンスとプロデュース力が素晴らしいし、どのパートにもチャレンジングな演奏がいっぱいあるってこと。あのバンドの本当に素晴らしいところは、そこなんです。

――では、あくまでもひとつのヘヴィメタル・バンドとして見たとき、BABYMETALおよび神バンドにはどんな特徴がありますか。

マーティ BABYMETALの曲づくりと演奏は、超A級です。コンセプトや彼女たちのボーカルをいったん抜きにしても、サウンドが本当に素晴らしい。 だから、BABYMETALは海外のどんなメタル・バンドと並んでも大丈夫なんです。

――そもそもメタルって、歌詞以上にサウンドが雄弁な音楽ですよね。音の重さや速さですべてを語るジャンルというか。

マーティ そのとおりです! 実はそこが一番重要で、もし彼らが“平均的に見て、なかなか良いヘヴィメタル・バンド”だったら、BABYMETALがここまで注目されることはなかったと思います。でも、BABYMETALはそうじゃなかった。だからみんな、BABYMETALのことを軽く見ることができないんですよね。それは神バンドのおかげだと僕は思っています。

――あのバンド・サウンドが生まれたからこそ、誰もがBABYMETALを無視できなくなったと。

マーティ そうです。だって、BABYMETALを聴いて「まあまあ、いいよね」なんて、絶対に言えないじゃん。 大好きか、大嫌いか。BABYMETALを聴いた人には、その2種類しかいないと思う。だって、大物と言われる人たちはみんなそうでしょ?

――アンチがいない大物はいませんからね。

マーティ まさにそうなんです。だから、純粋なヘヴィメタルが好きな人のなかには、「こいつら、メタルを舐めてるな」と思ってる人も当然いるでしょう。でも、その逆に、BABYMETALを聴いて「こういう音楽をずっと待ってたんだ!」と感じている人は、今、世界中にたくさんいる。うん、僕もそうですね。ちなみにひとつだけ言っておくと、僕は別にメタル好きじゃないですよ(笑)。僕は、おもしろい音楽が大好き。だから、純粋なヘヴィメタルにはそこまで興味がないんです。 あと、僕はBABYMETALのことを「ヘヴィメタル・バンドをバックに歌っている女の子3人組」だとは思ってないので。

――いわゆるアイドルとは別モノとして見ているということ?

マーティ そうです。そもそも僕はBABYMETALについて話すとき、“アイドル”という言葉は使いませんから。僕はBABYMETALのことを、バンドやスタッフを含めたひとつのプロジェクトとして見ているんです。

ヘヴィメタルのあり方に、BABYMETALはまったく新しい調味料を加えた


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