米サックス奏者、Perfumeへの愛を語る「『ポリリズム』は世界的にも優れたサウンド」

2020.3.17
パトリック・バートリーJr.

文・写真=小池直也 通訳=相馬祐佳里
編集=田島太陽


昨年、YouTubeに「ジャズとJ-Popの融合」という動画がアップされ、日本でもツイッターを中心に話題となった。この動画で熱弁しているのは、アメリカ人のジャズサックス奏者、パトリック・バートリーJr.(Patrick Bartley Jr.)。マンハッタン音楽学校で音楽を学び、ジャズの大家であるウィントン・マルサリスや、ザ・チェインスモーカーズとも共演経験を持つ27歳だ。

J-POPに並々ならぬ愛を持つ彼は、自身が主宰するプロジェクト「J-MUSIC Ensemble」で日本のゲームやアニメ音楽を多数演奏している。パトリックはなぜ日本の音楽を傾聴し、どんな魅力を感じているのか?

来日していた彼に、日本における初インタビューを行った。

パトリック・バートリーJr.
パトリック・バートリーJr.(写真=本人提供)@PatBartMusic

日本の曲は「ここが君の居場所だよ」と言い続けている

日本でも話題になった動画「ジャズとJ-Popの融合」

パトリックのプロフィールには、「ブルースに根ざしたアメリカ黒人音楽とJ-POPの類似点を発見した」と書かれている。彼はJ-POPにどんな“ブルース”を見出したのか?

日本の音楽を聴くと家にいるような、落ち着いた気持ちになるんです。バッハや教会音楽を聴いているときに似ていますね。リスナーに対して「あなたがどこから来たのか」という故郷を思い出させる力がある。たとえば、アニメ『CLAYMORE』オープニングテーマである「断罪の花~Guilty Sky~」を聴いてもらえれば、僕の言っていることが理解してもらえるかなと思います(と言い、サビを歌い始める)。

アレンジがロックでもエレクトロでも、日本の音楽はメロディで嘆きや悲しみを強く表現していることが多いですね。日本にいると信号で鳴っている音や、駅のホームで流れる音、どんな音でも「ここが君の居場所だよ」と言ってくれる気がするんですよ。メタルバンドやビジュアル系バンドの曲でもそう思える。興味深いですね。

アメリカで悲しみを表す音楽は「この状況から抜け出したい」、「こんなのもう嫌だ」というネガティブなイメージが多い。でも日本は違うんです。きっと日本の音楽家はたくさんの悲劇に見舞われて、それでも「あなたのアイデンティティを大切にしなさい」という思いを強く持って音楽を作ってきたんじゃないのかな。

僕は人生の中で、日本の音楽文化への愛をずっとシェアしつづけてきました。「この音はどんな仕組みになっているんだろう? どういうことなんだろう?」と感じた疑問を解消するために、多くの時間を費やしてきたんです。だから今、あの動画で日本の人たちが反応してくれていて、「YABAI(ヤバい)!」って気持ちになっていますよ。

“難しいものが好き”なジャズ音楽家にとってのPerfume

パトリックは大学3年時から同級生とゲームやアニメ曲を演奏していた。そのバンドは1年ほどの活動のあと、メンバーのほとんどが卒業。新しくメンバーを募ったことが「J-MUSIC Ensemble」の起点となった。当時よく聴いていたのはsasakure.UK、椎名林檎、School Food Punishmentだったという。その後、Perfumeと出会ったことでより一層、J-POPにのめりこんでいく。

きっかけは2014年、「3回目の米ツアーでPerfumeが渡米する」という広告をFacebookで見たことでした。当時は名前だけは知っていましたが、音楽はほとんど聴いたことがありませんでした。でも「Spending all my time」のMVが超カッコよくておどろいたし、「Spring of Life」を聴いたことで人生が変わりましたね。「このグループはなんだ? もっと知らなきゃいけない!」と衝撃を受けました。

Perfume「Spending all my time」

それまでも日本の音楽をたくさん勉強してきましたが、Perfumeを知って最後の1ピースがハマった気がします。中田ヤスタカさんに出会えたおかげで、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、MEG、Capsuleのことを知ることができた。ちなみに僕は、きゃりーぱみゅぱみゅと同じ年の同じ月生まれです(笑)。

海外では映画『カーズ2』(2011年)の挿入歌に「ポリリズム」が抜擢されてPerfumeを知った人は多かったはずです。あとはアニメ『アメリカン・ダッド』(2010年)で「モノクロームエフェクト」が使われていましたね。

Perfumeを偏愛するようになった彼は、「ポリリズム」のリリース10周年のタイミングで、Perfumeの曲ばかりを演奏する自主的なアニバーサリーライブを配信した。

10周年記念ライブ。「ポリリズム」は最後に演奏している

「ポリリズム」は今のバンドで初めてコピーした曲なんです。曲を知ったときは「日本の音楽として、いろいろな人に聴いてほしい!」と吹っ飛ばされたような感覚でしたよ。

バンドのみんなは複雑な間奏に興奮してましたね。でも、これならなんとかバンドサウンドにできそうでしたし、なぜ僕らがこれを演奏するのかリスナーにも理解してもらえると思いました。ジャズミュージシャンは難しいものが好きなんですよ。

「ポリリズム」は複雑さとJ-POPのおもしろさが融合していて、演奏している側も楽しいし、それを聴いている人も楽しい。この曲が僕の人生を新しい場所へ連れていってくれると確信してから、もう6年も演奏しています。今回の来日でも「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」に行ってきたんです、最高でしたよ!

PerfumeとBABYMETALの違い


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小池直也

(こいけ・なおや)ゆとり第一世代の音楽家、記者。山梨県出身。サキソフォン奏者として活動しながら、多様な文化にまつわる執筆や取材を行う。

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