米サックス奏者、Perfumeへの愛を語る「『ポリリズム』は世界的にも優れたサウンド」

2020.3.17

PerfumeとBABYMETALの違い

日本発の音楽では近年、BABYMETALも世界的なムーブメントを生んでいる。パトリックはその状況をどう見ているのか。

PerfumeとBABYMETAL、この2グループの人気はタイプが違うと思ってます。BABYMETALは、3人のかわいい女の子がああいう衣装で、ああいう音楽で、うしろで大きなヒゲの白人が演奏しているインパクトが大きい。見た目の奇抜さから入って、だんだんと音楽を好きになった人が多い気がします。

パトリック・バートリーJr.
パトリックが出演したライブの様子(写真=本人提供)

一概には言えませんが、2016年にアメリカの深夜番組『The Late Show With Stephen Colbert』でBABYMETALが取り上げられたのも、そのギャップが印象的だったからかなと。欧米人たちにとっての日本のアイドル像は「単純にかわいい」だけの存在で、バブルガムポップなイメージでしたが、それを打破した存在でもあるでしょう。爆発的に世界へリーチしたのは、音楽的に優れていたことはもちろんですが、SNSが社会に浸透していたことも大きいと思います。

一方でPerfumeは中田ヤスタカのプロデュース以降、サウンドやダンスが進化して、「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」は世界のどこでも聴かれたことのないサウンドになっています。まだSNSが発達する前でしたが、聴けばわかる音楽的な特徴があったからこそ、世界的にファンを増やしたんだと思います。

音楽を知るには、言語を学ぶ必要がある

世界の音楽の響きの違いを掘り下げると、行く着く先は「言語」。それがパトリックの考えだ。

音楽文化はその地域の言語に大きく左右されます。特に昔の歌になればなるほど、その特徴は強くなります。音楽は言葉が一番きれいに響くように作られていますが、言語によって音節はまったく異なりますよね。だから音楽について学ぶには、まずは言語から勉強するべきなんです。

クラシック音楽も同じです。マンハッタン音楽学校のオペラの授業では、各国の言語をどう話すかということを勉強していました。同じオペラでも、フランス語、イタリア語、ドイツ語、英語ですべてリズムが違って聞こえるのは言語の仕組みによるものなんです。

言葉のシステム上、韓国人のほうが日本人より英語を習得しやすいとも言われています。日本語は短母音が多い言葉なので、リズムに乗せにくいのかもしれない。アクセントとリズムがなめらかな韓国語のほうがアメリカの音楽を取り入れやすいんじゃないでしょうか。

近年でのK-POPは、日本の音楽を上回る勢いで世界に浸透している。両者について「ぜんぜん違う」と語るパトリックは、「K-POPは専門ではないけれど」と前置きして持論を展開した。

まず韓国音楽は世界に向けてのアピールが強いですね。ビヨンセのように歌ったり、アメリカの文化を取り入れているアーティストが多い印象もあります。特に1990年代にSeo Taiji and BoysやH.O.Tが登場したことがきっかけで、一気に欧米音楽に近づいた気がします。

今では全米で人気のBTSも、当初は聴きなじみがない音楽だと感じた韓国人の方も多かったはずです。でもシーンが移り変わるうちに、それに対応する新しい世代のアーティストが生まれてきたし、国民も耳が慣れていったんじゃないかなと感じます。

戦前音楽から、ゆるやかに海外のサウンドを取り入れた歴史

一方でJ-POPは、既存の作風から逸脱するのをためらう傾向にあります。ヒットソングはすべて、どこか似ている印象があるのではそのためでしょう。メロディはそれぞれ特徴的でおもしろいんですけどね。

たとえばAKB48やモーニング娘。も旋律だけを見れば1930年代の音楽、戦前の淡谷のり子や服部良一の時代のなごりも感じられます。そこから西洋の音楽と融合してきた歴史はありますが、まだ当時のエッセンスも残っているんです。

つまり日本の音楽家とリスナーは、海外のジャズやロックのサウンドを長い時間をかけて、少しづつ経験してきたとも言えます。急激に変化するのではなく、ゆっくりと取り入れてきた。そこに日本の音楽のアイデンティティがあるように思えます。J-POPが国内のアニメやドラマなどに向けて制作されることが多かったのも要因かもしれません。

そしてこの10年で、日本の音楽はK-POPの影響を受けて少しづつ変化しているようにも感じています。韓国の影響でこれからさらにドメスティックに変わっていくのか、それとも日本独自の進化になるのか、とても興味深く思っています。

熱心に音楽を語る言葉の節々からは、パトリックの深いJ-POP愛が感じられた。このような外側からの視点は、日本人にとっても自国の音楽を理解する助けとなるのではないだろうか。近い将来、「J-MUSIC Ensemble」の日本公演も期待したい。


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