宮川大輔、芸歴30年で気づいた“後悔”「自分で世界を変えるスキルはあるか?」

2020.12.6

先輩への恩返しは、芸人として売れつづけること

宮川大輔、芸歴30年で気づいた“後悔”

──笑いや芸の質が時代と共に変わっていくなかで、ある程度はそれに合わせていきつつも、自分自身が影響を受けてきた昭和の笑いを残していきたいとおっしゃっていました。今のお仕事の中でそれをやるとしたら、どのようなかたちになるでしょうか。

宮川 うーん、難しいですね。ただ、昔見ていたコント番組を再現して、そこで自分の考えるお笑いを実践する……とかっていう頭ではないですね。自分はまず台本が書けないんで。そうではなくて、『イッテQ!』とか『すべらない話』みたいに、その時代のフォーマットの中で、僕らしさというものを残していかなあかんのちゃうかなって。

──「宮川大輔らしさ」というと?

宮川 たとえば『イッテQ!』で、僕が大食いチャレンジでゲー吐いたときにキラキラのエフェクトをかける演出(キラキラリバース)とか、今テレビでゲー吐いて笑けるなんて僕ぐらいじゃないですか。もともとはあれも、これオンエアできひんよなってところから始まったんですけど、僕はなんとかしたいなと思って、虹で隠したらおもろない?と。

あと「見たらわかる高いやつやん!」という定番の抗議フレーズも、ロケで安物の小道具を渡されたときに、腹立つな〜とほんまに思って言ったコメントがフィーチャーされたのが始まりで。それがおもしろがってもらえてるとわかってからは、意識して使いどころを探すようにする……そうやって一つひとつ新しいリアクションやフレーズを開拓していく、僕の残していけるものはそこかなって。

宮川大輔、芸歴30年で気づいた“後悔”

──単純にキラキラエフェクトやフレーズだけを見たり聞いたりしても、それ自体がおもしろいわけではなくて、「宮川大輔」がやっているからこそ笑いに変わるわけですよね。

宮川 結局は「人間」ですよね。人間がおもろなかったら、漫才やってても、コントやってても、おもろない。何をやるにしても、人が見えてくるっていうのが、ほんま大事な気がしてて。たとえば今の千鳥がなんであんなにおもろいかって、人間味が滲み出てるからなんですよね。自分たちの人柄をちゃんと芸に乗せられている。

台本のある漫才でも、本来のふたりの会話を聞いて、ゲラゲラ笑うてるような感覚なんかなと思いますし。そういう意味では、ロケでもなんでも、自分の言葉でしゃべらなあかんのやろなあ。僕の場合、『すべらない話』に出ると、「なんじゃその話!」とか「オチあらへんのにようそれでしゃべってるな!」と言われるけど、それでいいんですよね。僕にしかできひん話ということに意味があるので、それさえできてれば、極端に言うとおもろなくてもいいんですよ。

それで松本さんから「やっぱ大輔っておもろいよな」ってふと言われたら、めちゃくちゃうれしいですしね。あの番組で自分の芸人人生に火を点けていただいたんで、やっぱり恩返しがしたい。その恩返しは、僕が芸人として売れつづけるとか、出つづけることやと思ってて。

ひとりだからこそ今がある、コンビ解散にも後悔はない

──紆余曲折を経てきたこれまでの人生で、何かやり残したと思っていることはありますか?

宮川 本能のまま生きてておもろいのが一番で、そこに努力や人間味が加わると一流になる。せやけどその上で、さらに自分で世界を変えるためのスキル、もう一個違う武器というか、そういうものを持っているヤツは強いと思うんですよね。外国語でもダンスでも、身につける機会があったのに、そういう作業をしてこんかった自分は、子供に何も偉そうなこと言えへんなと。

「何か一個やりつづけろや」なんて言いながら、俺は何やってんねやろと。モヤモヤしているのはそこですかね。ひとりになったからこそ今があるし、コンビを解散したことに後悔はないです。良くても悪くても全部自分の責任というところでやるほうがおもしろいし、僕には合ってる。稼いだ金も全部ひとりでチャラにするっていうね(笑)。

──そういう過去も含めて、これからも芸人をつづけていく。

宮川 そうですね、どこまでできるかわからんけど。ただ一方では、矛盾するようですけど、あかんかったらいつでも辞めたろってずっと思ってて。オファーがなくなったらもう終わりかなと。それでもええと思ってるんですよね。そのときのために、いつでも自分の限界を作らないようにしてるし、挑戦をつづけてさえいれば、何が起こってもまた新しい人生を始めて楽しく生きられるんじゃないかなって。そんなふうに思ってます。

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  • 『ヤウンペを探せ!』

    『ヤウンペを探せ!』

    売れない俳優のキンヤ(池内博之)、さえない中華レストラン店長のジュンペイ(宮川大輔)、教員試験を万年浪人中のタロウ(池田鉄洋)、ラブホオーナーのアッキー(松尾諭)は、かつて大学映研の仲間だった。さえない毎日を送っていた4人は、学生時代のいきつけの焼肉屋で、20年前に作った映画のヒロイン・ミサト(蓮佛美沙子)と再会。彼女が欲しがる「ヤウンペ」探しに、奔走することになるが……

    出演:池内博之、宮川大輔、松尾諭、池田鉄洋、蓮佛美沙子
    監督:宮脇亮
    脚本:髙石明彦、渋谷未来
    Ⓒ2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

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