「つづける」とは?
――劇中では「つづけること」に対して示唆的なセリフがたびたび、出てきますよね。そこでおふたりに、「つづける」ということにどのように向き合っているのか、伺いたいです。
内山 映画の冒頭で、「できるからやるんじゃないだろ。できないからやるんだろ」というセリフがあるんですけど、あのセリフが「つづける」ということに通じているような気はします。
自分のことを振り返ると、僕は新潟から上京して来て文化服装学院に入学したんです。そこでスタイリストを目指していたんですけど、結局、スタイリストにもならず、いろいろなことを経験しながら、今は映像監督になっている。つまるところ、人生って二択の連続で、なぜかはわからないけど、僕はその二択で難しそうなほうを選んでしまう。困難な道を、ひたすら選択しつづけている。
それはなぜか、と問われると難しいんですけど……そうでないと、モノ作りってできない気がするんですよね。人生は二択の連続で、その選択の集積をどう獲得していくのか……そういう人生を、自分は歩んでいるような感覚はあります。なので、僕にとっては「つづけること」がそのまま、モノ作りに直結しているような気がしますね。
僕はよく「表現しないと生きていけない」と言っていて、それは大げさに受け取られているかもしれないんですけど、けっこう本気で思っているんですよ。表現することでしか僕は息ができないんだなって、本気で思うんです。
井口 (ボソッと)カッコいいなぁ……。
内山 (笑)。
井口 「つづける」って、残酷な言葉でもあるなと思うんですよね。呪いに近いというか。この映画の主人公の悠二は、佐々木に「つづけろ」と言われなければ、あんなに苦しんでいないのかもしれない。そこが難しいところで。たとえば、俺は今、歌を歌っていますけど、辞めようと思えば辞められるんですよ。でも、実際のところ辞めることはできない……そう考えると、「つづける」という言葉は、「逃れられない」と言い換えることができるような気もするんです。
辞めようと思えば辞められるものを、辞めることができないし、辞めたあとのことも想像つかないし。なぜそうなってしまうのか説明できないなかで、前から来るものに対してひたすら向き合っていく人生を、俺はこの先も送っていくんだと思うんです。そう考えるとちょっと怖くもあるような気がするんですよね。
内山 今の話を聞いて思い出したけど、前に居酒屋で飲んだとき理に「脚本ってどういう気持ちで書いてるの?」って聞かれたことがあって。きっと、呪われているんだろうね(笑)。誰に頼まれたわけでもなく、毎日、必死に書いて、書いて、書いて……。
井口 でもさ、きっと、自分の言葉で言った瞬間に、呪いは呪いじゃなくなるんだよ。ウッチーが自分で「つづける」という言葉を脚本に書いたのは、呪いに上書きした願かけのようなものなんじゃない? 「それを自分で選んでいるんだ」という心の表れなのかなっていう気もする。
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