行定勲監督が語る『くまもと復興映画祭』への想い。今、映画祭を行うということ

2020.10.29


希望の光を掴もうとしている9本をセレクト

行定監督はこの4月から、YouTubeでリモート映画を次々に発表。映画ファンを驚かせた。コロナ状況下での柔軟な反応は、他ジャンルにも多くの示唆を与えたが、この経験から得たことも「フィジカルとリモートの併用」につながっているという。

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「復興映画祭は毎年4月開催でしたが、今年はコロナの影響で半年遅れとなりました。でも、よく開催してくれたと、多くのお手紙をいただきました。ディレクター冥利につきますね。映画を作っていても、なかなか『ありがとうございます』とは言われませんが、復興映画祭をやっていると『ありがとうございます』という言葉をたくさんいただける。映画というものが、少しは世の中のために役に立ってるんだなと。
僕らはつい『映画の力』なんて言ってしまうけど、でも実のところ『映画の力』があるかどうかはわからない。ただ、映画を届けようという想いが届いたとき、届いた人にはなんらかの影響がある。だから、影響力はあるのかな。映画が届くことで感化されるし、増幅される」

高校演劇の名作戯曲を映画化『アルプススタンドのはしの方』のティーチイン。(写真左から)行定勲監督、城定秀夫監督、小野莉奈、平井亜門

監督が選んだ今年の9本には、2020年という特殊な年に響く、ある一貫した視点が感じられた。

「失意というか、どん底に堕ちた人間たちがどうにかして前を向こうとしている。そんな映画がそろいましたね。状況が悪化し、どんどん迷って、どんどん惑わされて。最後までいっても、どうにか打開する方法すら見つけられていないけど、希望の光を掴もうとはしている。
観る人はきっと、自分の人生に照らし合わせると思う。映画を観ていてよく感じるんですけど、希望の光って、誰かが与えているものではなくて、その人が勝手に見つけ出しているものなんですよね。そこがいいなって」

『くまもと復興映画祭2020』で上映された1本/映画『ビューティフルドリーマー』予告編

「自分で選んだ映画に立ち会いたいから」と、ティーチインでは必ず壇上に立つ。その舞台ではプロの映画人だからこそ口にできる言葉が発せられる。的確な指摘からは、その映画をセレクトした責任と愛情が薫り立つ。

佳きソムリエの口上のように、平易な深遠に魅せられた。ゲストとして招かれた監督やキャストは自作についての批評にきっと幸せを感じただろうし、観客にとっては観終えたばかりの映画を噛みしめるときめきにつながったはずだ。

「いやいや、『選んだのは僕ですよ』と、ただそこにいるだけですよ。これは映画人が行う映画祭なわけですが、僕自身、映画祭期間中は、刺激を受けて、やけにシナリオのアイデアが浮かぶんです。たとえば、映画祭の食事の席で、相手が自分の話を『聴いてくれる態度』に影響を受ける。『聴いてくれる』『聴いてもらう』関係が、お互いの需要と供給になって、そこから生まれるものがある。
ほんの思いつきが現実になることもある。『うつくしいひと』なんてまさにそう。そのスピード感も、映画には必要なんだろうなと。あと、単純にゲストとして来てくれた女優さんと話して、この人で映画を撮ってみたいなと思うこともありますよ。僕はどちらかと言えば女優中心で映画を考えていくほうですからね」

『うつくしいひと』予告篇 くまもと映画プロジェクト

観客には力がある


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相田冬二

(あいだ・とうじ)ライター、ノベライザー、映画批評家。2020年4月30日、Zoomトークイベント『相田冬二、映画×俳優を語る。』をスタート。国内の稀有な演じ手を毎回ひとりずつ取り上げ、縦横無尽に語っている。ジャズ的な即興による言葉のセッションは6時間以上に及ぶことも。2020年10月、著作『舞台上..

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