“ウィズコロナ時代”におけるリアルな舞台の在り方とは?芸劇主催ワークショップ『東京ディグ/ライズ 2』潜入レポート

2020.10.27

限られた時間、制約も多い対面稽古

いざ対面での稽古が開始。しかし、2チームによる交代制での稽古のため、本番を除くと稽古は10回にも満たない。時間がないのである。そこで、たとえばDチームが対面で稽古をしているとき、RチームはZoomでその様子をチェックするという方法が試みられた。これは非常に有効な時間の使い方だ。稽古場に行かずとも、稽古の“予習・復習”ができるというわけである。

皆オンラインでは顔を合わせていたが、直接顔を合わせるのはほとんどの人が初めて。稽古場には妙な緊張感が漂っていた。この緊張感とは、見知らぬ者同士がひとつの場に集まったときに生まれる特有のものでもあるが、それだけではない。“コロナ禍であること”は、必ずや皆の心身に影響を及ぼしていたはずである。時間もないのだ。良好な関係性を築いていくこともままならない。

対面での稽古は2チームに分かれて行われた/芸劇dance workshop 2020 北尾亘(Baobab)ダンスワークショップ発表公演『東京ディグ/ライズ 2』/撮影:中瀬俊介

ここで、芸劇サイドによる感染防止対策の徹底ぶりについても触れておきたい。まず対面稽古の前に、PCR検査があった。幸い全員が陰性。こうして晴れて舞台に立てることが決まったわけだが、だからといって安心できるわけではない。どこにリスクが転がっているかわからないのだ。

物の受け渡しごとにアルコール消毒。皆が意識的に距離を取り、もちろん会話はマスク越しだ。こうして文字にしてみると、なんとも厳格な場のようにも思えるが、この緊張感を共有できたことは、限られた時間の中での作品づくりにおいて大きかったのではないかと思う。厳しい環境下だからこそ、互いに細心の注意を払いながら交流する。それは“思いやり”とも受け取ることができた。

オンラインでは細かな声音の引きつりや、身体のこわばりまでは伝わらない。講師であるわたるさんたちも歯がゆかったのではないかと思う。筆者はかなり緊張して対面稽古に臨んだが、わたるさんから教わるストレッチの効能だけでなく、みんなと一緒に時間を過ごすうちに、身体が変化していくのを感じた。

「期待を胸に大学へと進学したものの、コロナの影響で公演の機会やコンクールなどが次々と中止になり、何もできないうちに夏休みを迎えてしまいました。そんななか、この『東京ディグ/ライズ 2』を知り、これ以上の機会はないと思い参加を決意しました」と語ってくれたのは、日本女子体育大学のダンス学科に在籍している参加者の橋本涼音さん。大学1年生にしてようやく表現の場を得た彼女は、まさに水を得た魚のように輝いて見えた。

本番の舞台上で生まれた、「密」ではなく「親密さ」

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