ヘヴィメタルのあり方に、BABYMETALはまったく新しい調味料を加えた
――なるほど。その点を踏まえて、SU-METALのボーカルはどう捉えていますか。
マーティ まず、彼女のボーカルにはピッチとセンスと自分らしさがしっかり備わってる。だから、聴いていてすごく馴染みやすいんですよね。 あと、よくあるメタルの女性ボーカルって、わざと男性っぽく歌う人が多いじゃん? でも、彼女の歌声は非常に女性らしくて、かわいらしい。で、彼女みたいなボーカルの方が、ヘヴィメタルのハードさはより強く感じられるんです。 逆にいうと、サウンドがヘヴィであればあるほど、彼女の声はさらにかわいらしく聴こえる。あのギャップは本当に素晴らしいと思います。
――では、YUIMETALとMOAMETALのボーカルについてはどう見ていますか。彼女たちの合いの手や掛け声は、まさしくBABYMETALのオリジナリティにつながるものだと思うのですが。
マーティ あの存在感は、非常に日本的ですね。もちろん、アメリカの音楽にも合いの手はあるんですよ。つまり、コール&レスポンスですね。でも、彼女たちの合いの手には、日本のお祭りとかも解釈に含まれてるでしょう。あれは、アメリカ人の目と耳にはものすごく新鮮なんですよ。
――それに加えて、彼女たち3人のパフォーマンスには「ダンス」も含まれるわけで。あの「メタルで踊る」という発想については、どう感じていますか。
マーティ そもそもメタルって、踊れない人たちの音楽なんですよ。逆に、踊れる人はディスコに行くんだけど、それってモテるやつらの世界じゃん? メタルは、そこに行けない人たちの音楽だったんです。つまり、あのやかましくて速いメタル・サウンドには、踊れるやつらに対する反逆の魂が込められてるんです。
――あははは(笑)。
マーティ これ、本当の話ですよ! 90年代になると、ナイン・インチ・ネイルズとかミニストリーみたいな、ダンス・ミュージックを混ぜたメタルも少しずつ出てきたけど、基本的に“メタルとダンス”の融合はずっとNGだったんです。
――メタルで女の子が踊る姿なんて、かつては想像すらできなかったと。
マーティ はい。だから、最初にBABYMETALを見たときは、もう本当に「なんだこれは!?」でしたね。 つまり、僕が今話した”踊れない人たちの音楽”という、ものすごく古いヘヴィメタルのあり方に、BABYMETALはまったく新しい調味料を加えたんです。しかも、今のBABYMETALはあの3人だけでなく、神バンドやプロデュース側もどんどん成長している。だいたい、スレイヤーと共演して、さらにレディ・ガガともツアーできるバンドなんて、世の中にBABYMETALくらいしかいないでしょう?
――スレイヤーとレディ・ガガは、ファン層も全然違うはずですからね。
マーティ その両方と共演できるってことが、どれだけ特別なことか! だから、BABYMETALの音楽は古いメタルとはまったく違うんですよ。彼女たちの音楽には、とても生き生きとした血が流れている。BABYMETALを聴くと、僕はそんなふうに感じるんです。
マーティ・フリードマン
ギタリスト・音楽評論家・タレント。アメリカ、ワシントンD.C.出身。世界的な知名度を誇る実力派ギタリスト。2004年より日本在住でJポップにも造詣が深い。