努力を怠らぬ、キャッチーさのカナメ
――peppeさん、いってみましょうか。
長屋 peppeは、もともとバンドにいるような子じゃなかったんです。ピアノの経験があるっていうだけで声をかけたら、ふたつ返事で入ってくれて。
小林 最初はチアリーディング部とかダンス部に入ろうとしてたよね。
長屋 そもそも“バンド”というものがわからないから、オススメのCDを貸すところから始まったし。バンドにおけるキーボードの役割もわからなければ、フレーズの入れ方もわからない。やる気がないわけではないけれど、志が違っていた時期はありましたね。でもあるとき、急にスイッチが入って。
穴見 大学に入るタイミングくらいだっけ。人が半分くらい変わったよね。
長屋 そこからのpeppeは、すごかったです。本当にたくさん勉強しただろうし……。
穴見 練習量が違うよね。一番ストイックなんじゃない?
peppe ルーツがクラシックなので、バンドとは別に練習してるんですよ。
長屋 どちらかというと真吾は天才肌で、勘がよくて、その場でフレーズとかできちゃうタイプなんです。でも、peppeはそうじゃない。努力と練習量で、いいものを導き出すタイプなんですよね。
穴見 それでいて、ちょっと抜けてるのもpeppeの魅力。「日常茶飯事」を「にちじょうちゃはんじ」って読んじゃうようなところは変わってないよね(笑)。
小林 本も読むし、ちゃんとしてるのに、そういうところだけ抜けてる(笑)。地図が大好きで、行った場所にはマメにスマホのマップにピンを刺してメモしてるし。人の誕生日も必ずメモしてるよね。
長屋 「ザ・A型」って感じです。
穴見 マメないい彼氏みたいな。
peppe 彼氏⁉
――彼女じゃなくて、彼氏なんですね(笑)。ミュージシャンとしては、どうですか。
穴見 僕が一番尊敬してるのは、素でキャッチーなところ。peppeから出てくるメロディーは、いろんな人に聴かれるために生まれたのかと思うくらい、人の心を惹きつけるんです。
長屋 聴いてきた音楽がメジャーなものが多かったからこそ、というか。彼女自身の根がポジティブなのもあって、出てくる曲もポジティブなものが多いですね。
あふれたものを音楽にする表現者
――では、最後に長屋さんをお願いします。
peppe 長屋は「こういう遊びがある」とか「ハマってるジュースがある」とか、楽しいことをたくさん知ってます。自分を楽しませることを探して実践して、シェアしてくれることが多いです。
小林 長屋晴子は……出会ったときから歌が超うまくて。初めて彼女の歌を聴いたのは鼻歌だったんですけど、それでノックアウトされました。口ずさんだ程度のハミングなのにすっごいきれいで細かなビブラートがかかっていて、「こんなに歌がうまい同い年がいるんだ」って衝撃的でした。俺はあの歌で決めたんです。「一生ついて行こう」って。
長屋 私も同い年で初めて「歌がうまい」って思ったのは、壱誓だったよ。
小林 長屋は自分を持っているし、まわりを気にする力もある人。人が不快にならない通り道を常に探っているような感じがあります。その上で、内の内に秘めていることを曲にしてくれる。
穴見 本当にそれ! 結果的に、詞になってメロディーになる。全部が歌になって聴こえてくるんだよね。長屋から送られてきた曲を聴いて、「最近は、こういうことを思ってたんだ」ってあとから知るんです。
――“内に秘めたものが、歌になって聴こえてくる”と。
穴見 長屋は「私は空っぽだ」みたいなことを言うときがあるんですけど、心の容器がちゃんとある人なんですよ。まわりの人を観察したり自分と向き合ったりして、そこにいろんなものを溜めていく。そして、容器からあふれたものが音楽になるんだと思います。これは10年くらい一緒にいて、ようやくわかったことなんですけど……じゃなきゃ、あんなふうに歌えないですよね。
――音楽面ではどうでしょうか?
peppe 耳がいいよね。
穴見 音もリズムも、聴き分ける耳を持ってますね。ただ、めちゃくちゃ感覚派。
小林 うまく言葉にできず、もどかしそうにしてるときがよくあります(笑)。
穴見 でも、それって自分の頭の中にイメージがないとできないことだから、俺はけっこう羨ましいんですよ。長屋って歌の印象が強いけど、けっこうオケやアレンジにこだわりがあるような感じもして。もっと編曲とかできるようになったら、おもしろそうだなって思っています。