バーチャル空間で経済を作る
──『ComicVket』『MusicVket』『バーチャルマーケット』は経済的に動きはありましたか? ものすごく毎回凝っているので儲けはあるのかな?と気になっていました。
フィオ まだまだ火の車ですよ(笑)。それでも、立ち上げ当初に比べたら、協賛企業さんの協力やクラウドファンディングとかでご支援いただくことで、スタッフのクリエイターさんにそれなりな金額をお支払いしつつ開催できるようになってきていますね。一方で出展者さんが出展物の売り上げだけで生活できるかというと、そんなことはないです。それができるのは本当に一部のクリエイターさんだけ、というくらいの、まだまだ小さなマーケットです。ただ、やっぱり開催するたびに、クリエイターさんとユーザーさんの間に新たな出会いが確実に生まれているなと感じています。『ComicVket』『MusicVket』のほうでも、もちろん同人文化そのものがあまり売り上げ売り上げっていうものではないというのは承知の上で「いつものイベントと同じくらい売れました」「在庫なくなりました」っていうのはちょこちょこ聞いたので、効果はあったのかなと思っています。
──ぼくも3日間買い漁っていたんですけど、お金使っちゃいますね。
フィオ インターネットだと、指名買いになっちゃうんですよね。現実の即売会やファッションモールや本屋さんのおもしろさって、偶然の出会いじゃないですか。立ち読みしていてその場で買っちゃうとか。バーチャル空間は3Dのインターネットなので、それを再現できるんですよ。ウィンドウショッピングのよさを導入できるのが3Dのインターネットのいいところですね。『バーチャルマーケット』だと欲しい作家さんをチェックして、そこにいくまでに「お、これいいな」みたいな新たな出会いが生まれるんですよね。
──バーチャル空間で『ComicVket』のようなもの以外で生計を立てていく手段ってあるんでしょうか?
フィオ 現実で存在し得る職業はすべてバーチャル空間上でもできると思います。たとえば私はイベントのオーガナイザーと同じことをバーチャル空間でやっているってだけの話なんですよね。アバターのモデラーさんがやっていることは、現実世界でいえばお洋服を作っている人と同じです。バーチャル空間で活動しているVTuberさんたちは、現実世界でいうところの芸能人ですよね。
──VTuberのフィオさんがVR内の雑誌の表紙に載ったらお金が発生する、とか。なんでも仕事にできそうですね。
フィオ そうですよね。バーチャル空間はフロンティアでなんにもないから、なんでも国境もないし、移動の必要もない。『バーチャルマーケット』って、来場者属性が日本の地域の人口比率に近いんですよ。今まで地方住みで同人イベントに参加できなかった人たちが、バーチャル空間なら参加できるから。海外の方が日本の即売会に出展するのはすごいハードルが高いと思うんですけど『バーチャルマーケット』『ComicVket』『MusicVket』ならそのハードルはまったくなくなります。
──そうなると、現実社会にはない職業が生まれる可能性すらあるのでは?
フィオ そうですね。10年前20年前にはYouTuberやインスタグラマーって職業がなかったのと同じように、未来にはVRファッションリーダーみたいな職業が生まれているかもしれないし、VR空間上でしか活動しないタレントもいるかもしれないし、VRアート専門アーティストが生まれている可能性はありますね。
──VRだったら現実にないものも作れますね。
フィオ バーチャルだと物理法則を無視できるので、現実ではできないことができます。衣服だと「繊維」の制限を受けないわけですよ。「音を着る」ことすらできます。今はできないけど「香りを着る」とか。今けっこうな人がやっているのは「光を着る」ですかね。バーチャル空間上ではまだ誰も見たことがない職業が生まれ得ると思っていますね。
(ここで息子さんふたりが入ってくる)
──お子さんたちが『バーチャルマーケット』に行く動画、すごく楽しそうですよね。
フィオ よく一緒に行ってますね。うちの子供たちはパパが「動く城のフィオ」であることを認識しているので、子供にとっては「パパは家族のもの」で、「社会と関わりを持っているのはフィオちゃん」なんですよね。時々、YouTubeでフィオちゃんの動画を観て喜んでますね。『バーチャルマーケット』の開会式や閉会式を見て「パパがいるー」とか「フィオちゃんからパパの声がするねー」って(笑)。
──今後の『バーチャルマーケット』、『ComicVket』、『MusicVket』についてお聞かせください。
フィオ 12月19日から1月10日にかけて『バーチャルマーケット5』 が開催されます。テーマは「World Beyond」。世界の垣根を超えるという意味です。日本はアバターを作るクリエイター人数が圧倒的に多いんです。ただ『VRchat』ユーザーの日本人は3%しかいない。ものすごく少ないところにものすごく濃いユーザーが集まっている。そこを世界に向けて発信していく。今までは会場も日本語だったんですがこれからは英語対応にして、海外の人も使えるように整えています。
フィオ 日本発、世界一のイベントを目指していますので、ご注目ください。『ComicVket 2』と『MusicVket 2』の開催も決まっています。新たな形の同人即売会イベントとして注目いただければと思っていますね。
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