岡崎体育×岸田繁「東京へ引っ越したらヤバい」音楽は生活圏から生まれる

2020.1.17

音楽スタイルにおける、土地に根を下ろす大切さ

――「ワニさんも仲間に入れてあげて」という歌詞とか、確かにそうですよね。

岸田 ほらTwitterで目立ちたがり屋がとる行動を自分でネタにしながらプロモーションをしてるやんか。でもさ今日の話を聞いてても思うけど、大久保駅前からの視点からブレてない。だから、東京に引っ越したらヤバイで。絶対、地元からやったほうがええと思う。呪いかけといた今(笑)。

――東京に引っ越さないほうがいいですか?

岸田 絶対いい。そう言うて俺も東京出たけど。でも、俺は東京に引っ越したかった。まぁ、体育君は東京に行ったら行ったでね、そっからの目線で、また新しい音楽活動をやりはると思うけど。だけど、あんなんをあの場所からできるんやもん。すごいことですよ。

体育 全然、大久保からでもできるんでね。

岸田 それをやってる人は少ないから。その感覚が一番前をぶっちぎりで走ってる感じがする。

体育 ありがとうございます。僕が一番リスペクトしてる先輩で奈良にLOSTAGEっていうバンドがいて、メジャーデビューした時も上京しなかったし、今もボーカルの五味さんは奈良でレコード屋を開いて、それで生計を立ててるんですよ。かっこいいですし、だから地方発信に違和感がなかったんです。

岸田 自分の音源の流通も自分の店だけにしたし、そういうのは大事やんね。

体育 岸田さんが東京に行きたかったのは、どういう気持ちだったんですか?

岸田 今と違って当時、北区は何もない田舎やった。ずっと学生バンドでやってたけど、食えなかったし。デビューが決まって、今までの俺をすべて捨てて、代官山に行ってみたいとか、吉祥寺に行ってみたいとか、そういう気持ちが勝ったんかな。憧れの気持ちが強かった。その時は京都でまったく根を下ろせてなかった。地方でやるのがかっこええとかは人それぞれやと思うけど。

一番かっこええことは、やっぱ音楽がブレへんこと。確固たる音楽スタイルは、自分らの生活圏で生活をしてないと作れない。それを守ることが音楽のかっこよさに繋がっていることに、そろそろ市井の人たちが気付きはじめると思う。そういう音楽を体育君はやってる。

岡崎体育(おかざき・たいいく)
京都府宇治市出身の男性ソロプロジェクト。2016年5月発売のアルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビュー。同アルバム収録の「MUSIC VIDEO」は、『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。現在までにリリースしたオリジナルアルバム3枚はすべてオリコンTOP10を記録。CMやドラマ出演などマルチな活動を行いながら2019年6月9日(日)に、<さいたまスーパーアリーナ>でのワンマン公演を開催。SSA史上初となる、1人vs18000人のコンサートを大成功裡に収めた。

岸田繁(きしだ・しげる)
1976年4月27日、京都市出身。作曲家。立命館大学在学中にロックバンド「くるり」を結成し、1998年にメジャーデビュー。2016年からは京都精華大学ポピュラーカルチャー学部で特任准教授を務める。

関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

鈴木淳史

(すずき・あつし)1978年生まれ。兵庫県芦屋市在住。 雑誌ライター・インタビュアー。 ABCラジオ『よなよな・・・なにわ筋カルチャーBOYZ』(毎週木曜夜10時~深夜1時生放送)パーソナリティー兼構成担当。雑誌『Quick Japan』初掲載は、2004年3月発売号の笑い飯インタビュー記事。

関連記事

【新連載】音楽のなる場所(磯部 涼)第1回・コロナ禍のモッシュピット

Fling Posse・麻天狼 『Fling Posse VS 麻天狼』

「ヒプマイはヒップホップか否か」問題を音楽面から徹底分析

映画_音楽_メイン

「製作期間7年」「作画枚数4万枚超」だけじゃない!映画『音楽』の魅力とは?

ツートライブ×アイロンヘッド

ツートライブ×アイロンヘッド「全力でぶつかりたいと思われる先輩に」変わらないファイトスタイルと先輩としての覚悟【よしもと漫才劇場10周年企画】

例えば炎×金魚番長

なにかとオーバーしがちな例えば炎×金魚番長が語る、尊敬とナメてる部分【よしもと漫才劇場10周年企画】

ミキ

ミキが見つけた一生かけて挑める芸「漫才だったら千鳥やかまいたちにも勝てる」【よしもと漫才劇場10周年企画】

よしもと芸人総勢50組が万博記念公園に集結!4時間半の『マンゲキ夏祭り2025』をレポート【よしもと漫才劇場10周年企画】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「猛暑日のウルトラライトダウン」【前編】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「小さい傘の喩えがなくなるまで」【後編】

「“瞳の中のセンター”でありたい」SKE48西井美桜が明かす“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「悔しい気持ちはガソリン」「特徴的すぎるからこそ、個性」SKE48熊崎晴香&坂本真凛が語る“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「優しい姫」と「童顔だけど中身は大人」のふたり。SKE48野村実代&原 優寧の“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

話題沸騰のにじさんじ発バーチャル・バンド「2時だとか」表紙解禁!『Quick Japan』60ページ徹底特集

TBSアナウンサー・田村真子の1stフォトエッセイ発売決定!「20代までの私の人生の記録」