北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)【第1回】ソフトな奴隷制を打ち破る編集

2020.5.15

文字によるオーディオ・ビジュアル

――1970年代の『宝島』は強烈で、ドラッグみたいな雑誌でした。“かぶれる”って言いますよね、影響受けるとか。ものすごく“かぶれ雑誌”だったんじゃないかって思うんですよ。

北山 そう。自分たちの言葉で自分たちのことをしゃべるっていうのが、当時、メディアの中にあんまりなかったからね。それのいわゆる先駆けというか。自分たちの意見をちゃんとしたスペースをとって表現するというのが、あまりなかったから。一度その波長に、例えばJ-WAVEがいいという人がいっぱい出てくるように、そこに波長を合わせることができた人にとっては、そういう働きをしたんじゃないかな。ただ、合わせなかった人たちにとっては、またぜんぜん違う働きを……偏見や誤解を生んだ可能性もあるし。いろんな言葉についてね。

――北山耕平さんの文章にかぶれちゃう人も、いっぱいいたみたいですね。当時の読者欄なんか見ると、みんな北山さんの文体なんですよ。

北山 そうね。

――さかのぼればサリンジャーとか、原型はあるんでしょうけど。植草甚一 *10 さんとか。『宝島』という雑誌は、ひとつの文体(キャラクター)を作ったんじゃないかと思うんです。

北山 そうだね、それは言えてると思うよ。

『宝島』(JICC出版局)昭和51年5月号第4巻5号(1976年5月1日発行)。表紙イラストレーション=大橋歩。『QJ』創刊準備号(創刊号~3号)と同じB6判

――あと、文章をしゃべるように書くことができる、ということですね。

北山 重要だね。言文一致というのを押しすすめたという感じはしたけどね。ただ、ほんとにしゃべるように書くんじゃなくて、バランスをとって「頭の中で声が聞こえるように書く」というのが必要だという認識はあったからね。「読む」のじゃなくて「声が聞こえる」という。

――頭の中で声が聞こえる、ですか。

北山 そう。頭の中に絵が見える、頭の中に映画を見に行くみたいなもので、それがドラッグといえば、ドラッグ的な効果をもたらすものなんじゃないかな。

――映像的であり、音楽的であり。オーディオ・ビジュアルみたいな。

北山 そう。文字によるオーディオ・ビジュアル。それがたぶん可能だっていうことを、ある世代 *11 以降の人には気づかせたと思う。ある世代以前の人にとっては煙(けむ)ったい存在だったかもしれないし、うるせえやつらだと思った人たちもいっぱいいるだろうし。たとえば、『ニュー・ミュージック・マガジン』(ミュージック・マガジン社)という雑誌には、俺なんか、名指しで非難されたこともあるし。

――ありましたね。あれは失礼な批判でしたね。

北山 でも、やっぱり権威というものが崩れていくときっていうのは、どうしてもああいうかたちで反応が出ざるを得ないし、本来であれば、国家という体制自体にも、ある種の恐怖感を植え付けるようなものであって欲しいと思ってた部分があるからね。そうじゃないと、先程言ったソフトな奴隷制みたいなものは打ち破れない。それを打ち破るのが、たぶんロックン・ロールだったと思うんだ。牢屋の中にいてその人が自由だと思ってる限り、その人は絶対牢屋の中から出ようとしないから、ほんとの自由なんて知らせる必要がないって部分があるよね。日本なんか、それが特に傾向として、強いのだろうと思う。

*10 植草甚一…物故した伝説のマガジン・ライター。『ワンダーランド』および『宝島』の責任編集長を務めていた。文章を口語体で、あたかも散歩をするように書くことを発明した。通称J・J氏。

*11 ある世代…第2次世界大戦後のベビー・ブームの中で育ってきたロック世代のこと。北山耕平によれば「テレビを頭のマッサージの道具として受けとめた最初の世代」で、「ひとつの地球を初めて全体として見る視点を獲得した最初の世代である」。

■北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)
【第1回】ソフトな奴隷制を打ち破る編集
【第2回】ロック雑誌の中に「声」を探していた
【第3回】自分たちの新聞を作ろう
【第4回】自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書く
【第5回】ニュー・ジャーナリズムには人生が凝縮されている


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    北山耕平(きたやま・こうへい)

    1949年生まれ。立教大学卒業後、かつて片岡義男氏と遊び友達であったことから宝島社に入社。『宝島』第4代目編集長を経てフリーライター/エディターに。『ポパイ』『ホットドッグ・プレス』『写楽』『BE-PAL』『ART WORKS』『ゴッドマガジン』等の雑誌創刊に立ち会う。ベストセラーになった『日本国憲法』(1982年、小学館*2003年、軽装版)の企画編集に参加した。著書に『抱きしめたい』(1976年、大和書房)、『自然のレッスン』(1986年、角川書店*2001年、新装版、太田出版。2014年、ちくま文庫)、『ネイティブ・マインド』(1988年、地湧社*2013年、サンマーク文庫)、『ニューエイジ大曼荼羅』(1990年、徳間書店)、『ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ』(2007年、太田出版)、『雲のごとくリアルに』(2008年、ブルース・インターアクションズ)、『地球のレッスン』(2010年、太田出版*2016年、ちくま文庫)、訳書に『虹の戦士』(1991年、河出書房新社*1999年、改定版、太田出版。2017年、定本・最終決定版、太田出版)、『ローリング・サンダー』(ダグ・ボイド、1991年、平河出版社)、『時の輪』(カルロス・カスタネダ、2002年、太田出版)、『自然の教科書』(スタン・パディラ、2003年、マーブルトロン)、『月に映すあなたの一日』(2011年、マーブルトロン)等がある。

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    発行:エディトリアル・デパートメント 発売:幻冬舎 定価:本体1000円+税 
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    『クイック・ジャパン』創刊編集長であり、本記事の執筆者である赤田祐一が編集を務める雑誌『スペクテイター』最新号、特集「秋山道男 編集の発明家」発売中。
    「若い時代というのは、自分を圧倒するものが目の前に出現すると、無条件で心酔したり、神格化してしまうようなところがある」
    赤田が、北山耕平と共に心酔した編集者のひとりであるスーパーエディター・秋山道男の総力特集。
    「あらゆるクリエイティブはエディトリアルだもんね」


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