「あえてひとり余る」だけじゃない、3人漫才のバリエーション
また彼らの代表作と言ってもいい「広告」は、初めて見たとき漫才にまだこんな発明があるのかと震え、一生消えない鳥肌が立った。
都築と後藤のふたりが普通に漫才「色鬼」をしているなか、石橋が合間合間にいきなり広告を挟むという、いわゆる「ふたつのネタの融合」で、色鬼ネタ自体のクオリティの高さや、「5秒でスキップできない広告」「良い場面でのTikTok広告」など広告動画あるあるのおもしろさもあるが、このネタの真の恐ろしさ、それは「石橋がCMをしているとき都築はピクリともせずに停止している」ところにあると思った。
反対に、都築と後藤が漫才をしているとき、石橋は話にまったく介入してこない。結局、最後まで都築と石橋が交わることはない。
そう、真ん中の後藤を挟んでふたりの間には「まったく別の世界が生まれている」。唯一、後藤だけがふたつの世界を自由に行き来しツッコんでいく、その「タイムトラベル感」がたまらない。
「1回クイズ」と「広告」のふたつのネタからわかるとおり、基本的には石橋が余りになることが多く、四千頭身のネタを見れば見るほど「石橋が喋っていない時間そのもの」が笑えるようになってくるのもすごくおもしろい。「何もしていない」ということがとてつもない存在感を放っている。
四千頭身の漫才はそれだけじゃない。後藤が余りに回り都築と石橋が好き勝手ボケる「前半にたたみかけるな」や、3人が均等にボケてツッコむ「説明しりとり」など、同じパターンのネタはひとつもなく、見ている人の予想を常に裏切ってくる。「トリオ漫才の可能性」を常に模索し、壊し、再構築する、その探究心と独創性こそが彼らのすごさだと思った。
この空間すら自在に操るトリオ漫才・四千頭身に限らず、チャラ男漫才の皮を被った古典落語・EXIT、自分で追い込むネタを自分で書き自分で苦しめられる諸刃の剣漫才・宮下草薙、ボケツッコミの概念すらない究極の日常系コント・かが屋など、見る側の想像を遥かに超えてくるニュータイプ芸人が次々と生まれている。
近い未来、彼らが「おもしろさ」の定義すら揺るがす漫才やコントを超越したまったく別の「何か」を生み出しそうで、それがすごく楽しみであり、少し怖い。
追記:2021年2月から「【総力特集】四千頭身」をスタートしました。
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