30年間のバラエティ史と、2020年代の「テレビの笑い」【後編】“好感度の時代”から、“新世代による多様化”へ

200

30年間のテレビバラエティ史 後編

文=てれびのスキマ 編集=田島太陽


お笑いの「次の10年」を考える、QJWebの「【総力特集】お笑い2020」。

ミルクボーイとぺこぱという「M-1グランプリ2019」で脚光を浴びたふた組のインタビューでは、主に「漫才(ネタ)」に焦点を当て、今受け入れられている「笑い」を掘り下げた。

だが、世間一般が日常的に触れる「笑い」とは、漫才などのネタではなく、テレビバラエティである。

そこで、1990年代から2010年代のテレビバラエティ史をてれびのスキマが総括。30年間の歴史を振り返ると見えてくる、2020年代のテレビ的「笑い」の向かう先とは?

■前編:“コントの90年代”から、“共生の00年代”へ

30年間のテレビバラエティ史 10-20年代

2010年代:好感度芸人とマルチ芸人、「優しい」笑いと「エグい」笑い

「平成」が終わりを告げた10年代。テレビバラエティでもひとつの時代が終わった。

2014年には『笑っていいとも!』、2018年には『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』といった80~90年代のフジテレビの黄金期を支えた番組が終了したのだ。これにより特定のタレントをベースに毎回企画を行う、いわゆる「タレントバラエティ」は、ゴールデンタイムからはほぼ姿を消した。00年代では天下獲りを目指す戦国時代から共生の時代へと変わっていったが、10年代になると、その「天下」そのものがなくなったのだ。

『クイック・ジャパン』vol.113
『クイック・ジャパン』vol.113

バラエティ番組ではよりシンプルでテレビ的演出の入る余地が少なく、リアルで企画性がハッキリしたものが好まれるようになっていく。それが、予算の少なさなどから、もともとそういった番組を得意としていたテレビ東京の躍進につながっていった。こうした番組の多くは素人が主役。お笑い芸人が担うのは、どこにおもしろみが潜んでいるかを伝える役割が中心になる。そこで重宝されたのが、バナナマンや博多華丸・大吉、サンドウィッチマン、オードリーといった「優しい笑い」ができる好感度の高い芸人たちだった。彼らは過度に相手を傷つけることなくツッコむことができる。そのためバラエティに欠かせない存在になっていったのだ。好感度調査などでサンドウィッチマンや華丸・大吉がBIG3(タモリ・ビートたけし・明石家さんま)ら大御所芸人たちを上回るようになったのは驚きだった。この傾向が10年代末に「誰も傷つかない笑い」といったフレーズがクローズアップされることにつながっていったのだろう。

『オードリーとオールナイトニッポン 最高にトゥースな武道館編』
『オードリーとオールナイトニッポン 最高にトゥースな武道館編』

また、10年代前半、注目されたのが苦節の長い“ベテラン若手”の存在だ。よく「上が詰まっている」などと言われ、若手のチャンスがないまま、30歳代後半~40歳代になっても「若手」と呼ばれるような芸人が少なくなくなった。『キングオブコント』や『R-1ぐらんぷり』など大型賞レース番組は、彼らにとって大きなチャンスの場。中でも2012年に『キングオブコント』で優勝したバイきんぐは大きく花が開くこととなった。さらに2016年の『R-1ぐらんぷり』ではハリウッドザコシショウが優勝。その少し前からブレイクした永野や、数年後ブレイクする野性爆弾くっきーのように、カルト芸人といわれていた芸人が大衆からも人気を得ることも不思議ではなくなった。

2015年にはピース又吉直樹が小説「火花」で芥川賞を受賞。もちろんそれ以前から芸人が二足の草鞋(わらじ)を履くことはあったが、それが大きく注目されるきっかけとなり、芸人でも「人間力」が重視される傾向が強くなっていく。バカリズムは、コントがテレビでできにくい時代に、『世にも奇妙な物語』の「来世不動産」(2012年、フジテレビ)を皮切りにドラマ脚本に進出。テレビバラエティの第一線で活躍しながら連続ドラマの脚本を書くという前人未到の偉業を成し遂げ、その後、シソンヌじろう、さらば青春の光・森田らにつながっていく。

「ネットが芸人のゴールデン」になるのか

TBSの藤井健太郎の登場はテレビのお笑いを語る上で特筆すべきものだろう。09年にパイロット版が立ち上がった『クイズ☆タレント名鑑』は10年にレギュラー化。その後も『テベ・コンヒーロ』、『Kiss My Fake~キスマイフェイク~』、『クイズ☆スター名鑑』などのレギュラー番組を次々立ち上げ、『クイズ☆アナタの記憶』、『有吉弘行のドッ喜利王』、『芸人キャノンボール〜公道最速借り物レース〜』、『人生逆転バトル カイジ』などの単発の特番も精力的に制作。現在は『水曜日のダウンタウン』を手がけている。時に「地獄の軍団」「悪意」などと形容される、そのエグい笑いは今の時代、唯一無二のものだ。

『クイック・ジャパン』vol.134
『クイック・ジャパン』vol.134

10年代後半には、ネット配信番組が一気に存在感を増していった。Amazonプライム・ビデオの『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』や『今田×東野のカリギュラ』などは、地上波を凌駕する予算規模。AbemaTVの『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』、『チャンスの時間』なども地上波のテレビでは成立しづらい笑いに特化した自由な番組を作っている。かつて、「23時台が芸人のゴールデン」などと言われたように、もしかしたら「ネット番組が芸人のゴールデン」と呼ばれる日が来るかもしれない。

2020年代展望:世間と乖離した表現は笑えない。