アメリカの“今”を知るのに女性主人公映画が最適な理由とは?――日本未公開映画3選

2020.2.23
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文=降矢 聡(グッチーズ・フリースクール) 編集=森田真規


日本未公開映画を紹介するだけにとどまらず、実際に上映の企画・運営をしている団体「グッチーズ・フリースクール」。彼らは好きが高じていつの間にか海外の権利元にメールして、いつの間にか好きな映画の上映や配給をしていた……といったインディペンデント精神あふれる団体だ。

ここではグッチーズ・フリースクールの主宰・降矢聡氏が実際に準備していた幻の企画「アメリカン・ハニーたちの現在(仮)」で選出した、アメリカ映画の、そしてアメリカの“今”を知るのにうってつけな女性主人公の日本未公開3作を紹介します。すべて配信サービスで視聴可能です。

「アメリカン・ハニーたちの現在」――劇場スルーされた現代のヒロインたち

少し前に、現代のアメリカ映画における女性主人公の生き様に注目した「アメリカン・ハニーたちの現在(仮)」という企画を準備していたことがある。なぜアメリカの女性なのかを正直に言えば、『アメリカン・ハニー』という映画があまりにもおもしろいので、どうにか紹介できないかと思ったからだ。

配給や上映企画を含め映画紹介というものは、おもしろい映画をただ上映して見てもらう、というだけではもったいない。上映作品をより興味深く、そして今見るべきだと思わせるような仕掛けというか枠組みの用意がとても大切だ。

まず映画祭のような大枠があって、作品を選定する場合もあれば、1本の作品から上映イベント全体の趣旨が決まることだってある。私の場合、個別の作品から全体が決まるほうが多かったりする。結論を言えば、1本も権利交渉が成立せずに妄想の中だけで儚く消えていった企画だが、実現していれば、あるいち角度からではあるけれど、映画の“今”が見えてきたはず、と今でも思っている。

アメリカン・スターの行方『アメリカン・ハニー

バンに乗り込み雑誌のセールスをして生計を立てる「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる貧困層の若者たちを描いたロードムービー。『フィッシュ・タンク』(2009年)などで知られるイギリス人女流監督のアンドレア・アーノルド監督が手がけている。

主人公のスターを演じるのは、映画初出演のサーシャ・レイン。彼女は本作での映画デビュー前は地元でウェイターをしていたという。つまり異邦人の女性監督がロードムービーという形式を借りて、閉塞感が漂う出口なしの現代のアメリカを描き、そのアメリカを体現するのが、まさに本作で一挙に“スター”となった新人俳優女性というわけだ。

もうこれだけで必見作だが、本作でリアーナの「We Found Love ft. Calvin Harris」が映画内で実際に流れる場面が二度ある。「We found love in a hopeless place」と歌う声に合わせて、出口なき現代のアメリカに刹那でも希望を見い出し踊るスターの姿は実に感動的で、ポップスという“今”を最も表す音楽ジャンルが持つ大衆性と前衛性(これこそ“スター”の条件だ)が、映画の中で胸を突くような瞬間を形成する代表的な場面だ。映画でのスター=サーシャ・レインは、ポップソングを口ずさみ、安っぽいバンに揺られながら、終わりなき旅路をどこまでも走っていく。

『アメリカン・ハニー』(2016年)オリジナル版予告編

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