アメリカの“今”を知るのに女性主人公映画が最適な理由とは?――日本未公開映画3選

2020.2.23

アップロードしつづける学園映画『THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法

「DUFF」という言葉が聞き慣れないかもしれないが、「designated ugly fat friend」の略語で「指示された醜くて太った友だち」、転じて「グループ内のグッドルッキングな人を引き立てる役」の人を指す非情な言葉だ。物語は「DUFF」扱いされていたことに気づいた主人公のビアンカが、ご近所に住んでいる幼なじみでアメフト選手で人気者のウェスリーの協力を得て変わろうとする、『シーズ・オール・ザット』(1999年)から続く(?)学園映画の王道をゆく。

ビアンカを演じるのは『インデペンデンス・デイ』(1996年)の大統領の娘役でおなじみだったメイ・ホイットマン。彼女は、デビュー直後は大物スターの娘役として活躍したが、その後ずっと役に恵まれず小さな役やゲスト出演枠、言ってしまえばスターの「引き立て役」を健気にがんばり、ついにつかんだ劇場実写映画初主演が「DUFF」役という……まさにぴったりの配役なのだ。

ここが実に重要なポイントで、というのも、何度も繰り返し同じ物語が語られる学園映画にあって“今”を映し出すことの試金石になるのは、学園内にあるどのポジションにスポットライトを当てているか、だからなのだ。本作は「DUFF」に賭けた。それはカースト上位でもなければ下位でもない、映画で描くにはいささか中途半端なポジションなのだが、そのことによって本作は、王道学園ものをウェルメイドに語りながら、映画に描かれてきた友だち役というポジションに対するユニークな批評性すら獲得している。

『THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法』(2015年)予告編

フィクションと共に歩むこと『ユニコーン・ストア

今やキャプテン・マーベルとして全世界のスターとなったブリー・ラーソンの監督デビュー作にして主演作。『キャプテン・マーベル』(2019年)とほぼ同時期に公開された(といってもこちらはNetflixでの公開だが)本作が描くのは、大人になっても子どものころの夢想の中に生きる女性の極めて小さな物語だ。

ユニバースを股にかけて戦っていたラーソンとは一転して、ユニコーンの世話をしながら生きていきたい女性という本作の役柄は、彼女の幼少期の個人的な境遇が投影されているようなのだ。子どものころ憧れていた何かになりたい、ということではなく、ユニコーンを飼いたい、つまり共に生きたいというところがポイントだ。ユニコーンというフィクショナルな生き物と共に生きたい、あるいは、リアルな人生を生きるためにはフィクショナルなものも共に歩むことが必要だというこの切実さは、『アメリカン・ハニー』でリアーナの曲に希望を見い出す姿とどこか重なっているはずだ。

そして自らを救うための自らの物語を自ら語るという構造は、今まで誰かを守ることを使命としてきた彼女のキャリアのことを振り返ると、『THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法』とも緩やかにつながってくるだろう。そして『キャプテン・マーベル』という超大作と、とても私的な(それゆえに普遍的でもある)『ユニコーン・ストア』の両方を選び取るブリー・ラーソンの生き様は実に現代的である、というのは言い過ぎだろうか。

『ユニコーン・ストア』(2017年)予告編

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