『ムーンライト』『ミッドサマー』などのA24が製作し、『スイス・アーミー・マン』のダニエル・クワンとダニエル・シャイナートが監督を務めるアクションコメディー映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が3月3日に日本で公開された。本作は本年度『アカデミー賞』最多10部門11ノミネートされ話題となっている。
今回は、アカデミー賞授賞式を間近に控えた、全人類初体験のアクションコメディー映画をレビューする。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.165掲載のコラムを微調整し、転載したものです。
主婦、マルチバースで世界を救う!?
かの『ONE PIECE』が実写化されるのは、ご存じのことだろう。個人的な見解だが、どんなマンガやアニメーションの実写化もOKだ。たとえ世界観の転移に失敗したコスプレ大会になろうと、脱力しつつやり過ごせちゃうクチだから。
で、そんなネジけた筆者にとって、ぜひ観てみたい実写化が湯浅政明監督『マインド・ゲーム』(04)だったりする。ロビン西の実験的なマンガに則って暴走キャラたちを動かし、トリップ感満載のストーリー展開、ドライビングな音と色彩と映像と、そのアナーキーなブッ飛び具合は今なお唯一無二。手を出せば大惨事確実である。

と、ところが! 海の向こうですでに、本作のエッセンスを応用してまさかの成功を遂げていたヤツラがいた。それがダニエル・シャイナートとダニエル・クワンのコンビ、すなわち「ダニエルズ」。彼らは日本のアニメにも精通しており、監督と脚本を務めた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、『マインド・ゲーム』からも強いインスピレーションを得たと明かしているのだ。

この通称『エブエブ』は長編2作目となる。物語の骨子はこんな感じ。中国系アメリカ人の一介の主婦が突如、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけ」と大変な任務を託され、そしてマルチバース=多元宇宙の“パラレルな複数の自分”の経験や能力を得ながら無茶を重ねる。
主演はミシェル・ヨー。アジアで最も成功している偉大な女優だ。芸名ミシェール・キング時代、ジャッキー・チェンと張り合った『ポリス・ストーリー3』(92)や、ハリウッドデビュー(&改名)第一弾、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(97)での伝説的アクションは語り草であろう。

だが『エブエブ』の美点はといえば、勧善懲悪的なヒーロー物に落ち着かないところにあると思う。家族の問題に悩み、コインランドリーの経営に頭を抱え、マルチバースで「心のコスプレ」を繰り返して、目の前の人生と格闘してゆく。ダニエルズは長編デビュー作、サンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞した『スイス・アーミー・マン』(16)でも比類なきイマジネーションの飛躍を見せつけ、しかも登場人物のバックボーンにもココロ配り、奇想天外な物語をあれよと切ないラストへと着地させた。
もうすぐ発表! 第95回アカデミー賞にて今年度最多の10部門11ノミネートとなった『エブエブ』は、現実を別角度からヴィヴィッドに体感させてくれる、“マインド・ゲーム”のバージョンアップ版なのであった。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

監督・脚本:ダニエルズ
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティスほか
配給:ギャガ
3月3日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次公開
(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
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『クイック・ジャパン』vol.165
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