意外『キングオブコント』の優勝者は「吉本率」が低い!ファイナリストのべ138組を所属事務所で分析してみた

キングオブコント2022

文=井上マサキ イラスト=まつもとりえこ 編集=アライユキコ


2008年に始まり、今年で15年目を迎える『キングオブコント』のこれまでのファイナリスト、優勝者を「所属事務所」で分析してみたら……。賞レースウォッチャー・井上マサキのたどりついた意外な真実とは?


『キングオブコント』の優勝者は「吉本率」が低い

いよいよ10月8日に放送が迫った『キングオブコント2022』(TBS)。ファイナリスト10組から新たな「コント日本一」が誕生する。

2008年の第1回から今年で15年目を迎え、これまで誕生したチャンピオンは14組。その所属事務所に注目してみると、吉本興業(よしもとクリエイティブエージェンシー含む)に所属しているチャンピオンは約半数の8組。さすが吉本は強いな……と思うのだけど、実は『キングオブコント』はチャンピオンにおける「吉本率」が他の賞レースに比べて低いのだ。『R-1』は20組中14組(70%)、『M-1は』17組中13組(76%)と、7割が吉本なのである。

さらに、『キングオブコント』における「非吉本」のチャンピオンを見てみると、人力舎の2組(東京03、キングオブコメディ)のほかは、バイきんぐ(SMA)、かもめんたる(サンミュージック)、ハナコ(ワタナベ)、どぶろっく(浅井企画)と見事にバラバラなのだ。

『キングオブコント』は、他の賞レース以上に所属事務所同士の「群雄割拠」を楽しめる大会ともいえる。そこで、これまで登場したファイナリストのべ138組の所属事務所から、これまでの『キングオブコント』を振り返ってみたい。

最多決勝進出者であり、最も多く所属が変わったコンビとは?

まずは、ファイナリストのべ138組の所属事務所をランキングにしてみた(「重複あり」)。また、決勝に複数回進出した組を除いたランキング(「重複なし」)も合わせて作成した。なお、カウントは「大会出場時の所属事務所」としている。

ファイナリストのべ138組所属事務所をランキング(作表/井上マサキ)
ファイナリストのべ138組所属事務所をランキング(作表/井上マサキ)

やはり強いのは吉本興業で、「重複あり」「重複なし」共にファイナリストの半数が吉本興業だ。2番目に多いのはプロダクション人力舎。チャンピオンの2組のほか、ラバーガール、鬼ヶ島、巨匠、リンゴスター、ザ・マミィ、そして今回即席ユニットで初のファイナリストである最高の人間(岡野陽一&吉住)が人力舎の所属だ。かつて巨匠(2016年解散)のメンバーだった岡野陽一は、7年ぶり3度目の決勝進出となる。

「重複あり」では上位にいる松竹芸能とASH&Dだが、「重複なし」ではランクが下がっている。これは何度も決勝に進出している組がいるということ。ASH&Dはザ・ギースが4回、ラブレターズが3回、松竹芸能もTKOが4回、うしろシティが3回の決勝進出を果たしている。

その松竹芸能にかつて所属していたのが、さらば青春の光。松竹芸能時代の2012年に初めて決勝に進出したあと事務所を退社し、2013年にはフリーで決勝に。2014年以降は個人事務所「ザ・森東」で4回決勝進出。6回という最多決勝進出記録と、3回の所属変更は、誰にも破られていない記録である。


事務所に属さない「フリー」で決勝に進出した4組とは?

事務所に属さない「フリー」のファイナリストが多いのも、『キングオブコント』の特徴だろう。これまでフリーで決勝に進出したのは、さらば青春の光、夜ふかしの会、にゃんこスター、ゾフィーの4組。特に2017年出場のにゃんこスターは、ダークホースながらファーストステージを1位通過、トータルでも準優勝となり、会場を大いにかき乱した。ちなみに『キングオブコント』放送後、夜ふかしの会とにゃんこスターはワタナベに、ゾフィーはグレープカンパニーに所属している。

「ファイナル出場回数1回」の所属事務所にも注目したい。ホリプロは2008年出場のバナナマン、フラットファイヴは2009年のサンドウィッチマン、トゥインクル・コーポレーションは2010年のエレキコミックの所属事務所。サンドウィッチマンは、2010年に新事務所・グレープカンパニーを立ち上げており、後輩たちもきちんと結果を残してきた。

また、浅井企画は2019年出場のどぶろっくの所属事務所。この1回で、事務所として3大賞レースの初出場&初優勝を決めたのだった。そして今回の2022年、ケイダッシュステージが初めて決勝に送り込んだのがクロコップ。先日の『ラヴィット!』(TBS)では、先輩のオードリー春日(俊彰)からも激励を(志村けんの「だいじょうぶだぁ」スタイルで)受けていた。こちらも初出場初優勝なるか。

所属事務所のばらつきが最も多かった年は?

先ほどは15年分をまとめたランキングだったが、各回では所属事務所の分布はどうなっているのだろうか。こちらもまとめてみた。

各回の優勝者と、ファイナリストの所属事務所分布(作表/井上マサキ)
各回の優勝者と、ファイナリストの所属事務所分布(作表/井上マサキ)

今回、このまとめを作る上で悩ましかったのが、2017年出場のわらふぢなるお。当時、メンバーの口笛なるおがグレープカンパニー、ふぢわらがサンミュージックに所属していたため、それぞれ2分の1で集計している(なお2018年に両者ともグレープカンパニーに所属)

各回の分布を見ると、さまざまな事務所が毎回入り乱れているのがわかる。特に所属事務所のばらつきが大きかったのが、かもめんたるが優勝した2013年。ファイナリスト8組のうち、7組が違う事務所だった(吉本興業、松竹芸能、人力舎、太田プロ、サンミュージック、マセキ、フリー)。

一方で、ここ数年は「吉本率」が高まっていることがうかがえる。特に2020年と2021年は、なんと10組中9組が吉本興業で、それぞれの年のチャンピオン(ジャルジャルと空気階段)も吉本興業所属だ。2017年まで4年連続優勝していた吉本興業は、2018年にハナコ(ワタナベ)、2019年にどぶろっく(浅井企画)に優勝を明け渡しており、ここ数年の「吉本率」の高さは「吉本興業の復権」ともいえるだろう。

ただ、今回の『キングオブコント2022』は「吉本率」が再び2019年以前の水準に戻っている。ファイナリスト10組の所属事務所は、いぬ、コットン、ニッポンの社長、ネルソンズ、ビスケットブラザーズ、ロングコートダディの6組が吉本興業、ほか4組はかが屋(マセキ)、や団(SMA)、最高の人間(人力舎)、クロコップ(ケイダッシュステージ)だ。

引きつづき吉本が覇権を握るのか、それとも人力舎に12年ぶり、SMAに10年ぶりの優勝が渡るのか、はたまたマセキやケイダッシュステージに初のチャンピオンが生まれるのか……。10月8日の本番を楽しみに待ちたい。

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(いのうえ・まさき)1975年宮城県生まれ。ライター、路線図マニア。大学卒業後、システムエンジニアとして15年勤務し、2015年よりライターに転身。共著に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(..

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