結論『元彼の遺言状』本格ミステリードラマではなかった!蛇足過ぎるラストに困惑考察

2022.6.27
元彼の遺言状11

文・イラスト=北村ヂン 編集=アライユキコ


月9ドラマ『元彼の遺言状』(フジテレビ)。最終回みたいな10話につづいて放送された11話を振り返り、『元彼の遺言状』とは結局どういうドラマだったのか、ドラマウォッチャー北村ヂンが考察する(ネタバレを含みます)。


どうして10話で終わらせなかったの!?

第10話では、篠田敬太郎(大泉洋)が長年にわたる逃亡生活を送る原因となった事件が解決し、それなりにキレイに話がまとまって最終回……。かと思いきや、まさかの次回予告!
本作に出てきたどの仕掛けよりも驚かされた。これ以上、何をやろうというのか!?
多くの視聴者を困惑させた第11話は、蛇足とまではいわないまでも、「FODで特別配信!」くらいでよかったのでは……と思ってしまうほど、おまけエピソード感がすごかった。

大きな事件を解決し、迎えた第11話では、

・剣持麗子(綾瀬はるか)失踪事件
・篠田敬太郎(大泉洋)の小説自費出版詐欺事件
・3億円紛失事件
・300万円の指輪紛失事件
・津々井弁護士(浅野和之)の娘の婚約者失踪事件

と、5つの事件が同時進行した。

この手の「トラブルが同時多発的に起こって大騒ぎ」的なエピソードは、一話完結シリーズの半ばごろに、ちょっとしたアクセントとしてやるものだろう。まさか最終回でやるとは……。

観方が間違っていた!

第7話でも同様に、3つの事件が同時進行していたが、こちらは各事件がまったく絡み合うことなく、ただ単に3つ事件が同時に起こっただけという謎のエピソードだった。
今回は一応、麗子の失踪、自費出版詐欺、指輪紛失事件あたりは関連性があり、同時進行させる意味が多少はあったので安心した。

とはいえ、まとめて複数の事件を描くことになるため、どうしても個々の事件が小粒になってしまう。大きな事件を解決してスッキリと終われそうだったのに、どうして最終回にこんなエピソードを追加する必要があったのだろうか。

観ている最中は「なんで前回で終わらせなかったの!?」と、頭上に大きなはてなマークが浮かびっぱなしだった。
ただ、この最終回を見ることで、本作の観方が間違っていたことに気づかされた。スタッフたちはむしろ、この最終回のほうをやりたかったのではないだろうか!?

そもそも本格ミステリードラマではなかった?

第1、2話は、原作小説『元彼の遺言状』をある程度忠実にドラマ化しており、人間関係の入り組んだシリアスな事件が展開されていた。
そのため、視聴者は「本作は本格ミステリードラマなのだ」と思い込まされていたのだ。

ドラマのオリジナルエピソードが中心となった第3話以降は、事件のトリックや、推理の過程がものすごくユルユルになってしまい、「本格ミステリードラマのはずなのに、事件が雑過ぎない!?」と少々困惑しながら見ていた。

しかし、そもそも本格ミステリードラマではなかったのだ。

今回起こった事件も、失踪かと思ったらマンションとマンションの隙間に落っこちて動けなくなっていただけだったり、適当な推理を披露したら、犯人(?)のほうから勝手に種明かししてくれたりとユルイものばかりだった。
ただ、本格ミステリードラマではなく、麗子と篠田、そして彼らを取り巻く人たちが仲よくワチャワチャしている姿を愛でる、ミステリー風味のコメディドラマだと認識すれば、楽しく見ることができる。

相変わらずミステリー小説知識で現実の事件をなんとかしようとしてトンチンカンな結論にたどり着く篠田。探偵ごっこを喜々としてやっているお嬢さま・森川紗英(関水渚)。イヤミなキレ者弁護士だったはずが、かわいいおじさん感が出てきた津々井。黒丑益也または武田信玄(望月歩)……はあまり活躍していなかったが。

これまでエスパー推理でサクサクと事件を解決してしまっていた麗子が不在なことで、その他の登場人物たちの魅力がクローズアップされていた。
事件のトリックがどうこう言うのは筋違いで、みんなでメシ食って盛り上がったり、言い争ったり、そんな姿を愛でるべきドラマだったのだ!?

『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社
原作『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社

夏季月9は大丈夫かな?

まあ、それにしても設定が雑過ぎるだろうという点がチョイチョイ見受けられるのだが……。

ドラマ終盤は、なぜか金にまったく執着がないキャラになっていた篠田だが、第1話では、麗子の元彼・森川栄治(生田斗真)が残した莫大な遺産を狙っていた。アレはいったい何だったのか?
「一度見たものはすべて覚えている」という紗英の特殊能力も、一度使われたきりでまったく活かされていなかった。
そもそも、栄治が「遺産は、僕を殺した犯人に相続させる」という遺言状を残した理由も明かされないままだ。

元彼の遺言状相関図2
2話終了時点の森川家豪華キャスティング相関図。イラスト/北村ヂン

本作では、エピソードごとに複数の脚本家が別々に担当している。
複数の脚本家でドラマシリーズを担当するケースは珍しくないが、それでも、シリーズ全体の設定を統一するメインライターなり監修者がいるはずだ。
しかし本作では、そういう設定のすり合わせナシに、各脚本家が勝手に書いていたのでは……と思ってしまうくらい、破綻している設定が見受けられた。

予算の問題なのかなんなのか……!?

夏季の月9では、本作と同じ新川帆立原作の『競争の番人』の放送が予定されている。
予告編を見るに、杏と坂口健太郎のバディが活躍する楽しいドラマになっていそうだが……。いろいろと心配しながら放送を待とう。

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北村ヂン

(きたむら・ぢん)1975年群馬県生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌を伺うライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れ過ぎています。

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