『元彼の遺言状』3話 伏線が伏線になっていない! 犯行動機も唐突なゆるゆる展開大丈夫?

2022.5.2
『元彼の遺言状』2話 イラスト/北村ヂン

文・イラスト=北村ヂン 編集=アライユキコ


月9ドラマ『元彼の遺言状』(フジテレビ)。綾瀬はるかと大泉洋が本格的にバディになっていきそうな3話を漫画家でライターの北村ヂンが考察する(ネタバレを含みます)。


3話からは1話完結で展開?

綾瀬はるかと大泉洋がバディを組んだ月9ドラマ『元彼の遺言状』第3話。

第1〜2話は『元彼の遺言状』のタイトルどおり、主人公・剣持麗子(綾瀬はるか)の元彼・森川栄治(生田斗真)が残した遺言状をめぐり、一家を巻き込んだ壮大な事件が繰り広げられたが、なんと第2話でアッサリと事件が解決してしまった。

第3話からは、原作小説『元彼の遺言状』の続編となる短編集『剣持麗子のワンナイト推理』からのエピソードやドラマオリジナルの事件が1話完結で展開していくようだ。

『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社
3話からの原作『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社

イマイチ活かされていない伏線

森川家の事件に巻き込まれた村山権太弁護士(笹野高史)から「くらしの法律事務所」を引き継いだ麗子の元には、それまで手がけていた大企業案件ではなく、一般市民からの“どうでも案件”ばかりが持ち込まれていた。

その中のひとつが、立ち退き問題に絡んだ殺人事件。

被害者は進藤不動産社長・進藤昌夫(画大)。被疑者となったのは、第一発見者でもあるホスト・武田信玄こと黒丑益也(望月歩)。進藤から強引に立ち退きを迫られていた黒丑が、「交渉のため」進藤不動産を訪ねたところ、進藤が殺されていたのだという。

ポイントは黒丑が立ち退きを拒んでいた理由。

・父親から「何があってもあの家には住みつづけろ」と言われていたこと。
・庭のツツジの色が変わっていたこと。

以上のことから、ヤクザである父親が誰かを殺して庭に埋めているのではないかと考えた黒丑は、発覚することを恐れて立ち退きを拒否していたのだ。

実際には「民法162条・取得時効。他人の物でも契約書なしに20年間、善意のもとに所有していたら自分の物になる」という法律を利用して合法的に土地を手に入れるため、「住みつづけろ」と指示していただけで、誰かを殺したなどということはなかった。

主人公が弁護士であるということを活かした、法律を利用した伏線で、「なるほど〜」とは思ったものの、肝心の「父親から住みつづけろと言われていた」という情報が出てきたのはかなり終盤の、黒丑が犯人ではないとほぼほぼ確定して以降のこと。あまり効果的な伏線にはなっていなかった。

もうひとつ、黒丑は「庭のツツジの色が変わっていた」ことから、父親がその付近に死体を埋めたのではないかと考えたようだが、そもそも「死体を埋めると、その周辺の花の色が変わる」というのは、そんなに一般常識なのだろうか!? 推理小説やマンガで何度か目にしたことはあるが……。

結局、死体を埋めて(土の性質が変化することによって)色が変わるのはアジサイで、ツツジの場合は関係がないというオチだった。しかし、そもそもアジサイの色が変わることも把握してなかったよ!

こちらも、「花の色が変わる=死体が埋まっている」という情報が終盤まで出てきておらず、伏線としてはイマイチだった。


殺人の動機くらいは明かしてもらいたいが……

真犯人は、黒丑家のとなりに住む大学教授・尾形(おかやまはじめ)。

尾形は進藤社長が放火をしている現場を目撃し、「放火の件を黙っててやる。その代わり、自分の家だけは立ち退きをしなくてすむようにしろ」と脅迫。結局、交渉は決裂して進藤社長を撲殺したのだ。

立ち退きをしたくなかった理由は、尾形が妻と義父を殺して庭に埋めていたから……ということだが、ほとんどの情報が初めましてなことばかりで、種明かしをされてもポカーンとするしかなかった。

・立ち退き反対派の会長のお店が放火されていた→進藤社長が放火をした
・その現場を尾形が目撃した→火災写真に尾形が写っていた
・尾形が進藤社長を脅迫&殺害した→借地契約を結んでいるのは義父なので、殺したことがバレるのを恐れたから
・妻と義父を殺して庭に埋めた→まったく手がかりなし

……こんな推理でよく真犯人にたどり着いたな。

どうして尾形が妻と義父を殺したのかの動機に関しては最後まで一切明かされなかった。

「どんなに考えても無駄よ。理解できるわけないわ」

いや、そこはドラマなんだから、最低限は説明してくれ!

本格ミステリーからキャラクター重視に路線変更?

今回のエピソードは『剣持麗子のワンナイト推理』の「家守の理由」から。
原作はもっとシンプルに「取得時効」の問題を中心にした事件だったのだが、ドラマオリジナルの要素をいろいろぶち込んだ結果、全体的にボンヤリとした印象のエピソードになってしまっている。

まあ、ミステリードラマだからといって、犯人を推理するのだけが楽しみというわけではない。事件解決に至るまでの経緯を楽しむ見方もあるだろう。

弁護士ならではの法律知識を活かして事件に挑む麗子をはじめ、ミステリーマニアゆえの推理小説知識で、頼まれてもいないのにトンチンカンな推理を展開する篠田敬太郎(大泉洋)。「一度見た物は忘れない」という、すごい特殊能力を持つ森川紗英(関水渚)。3人のチームによる推理は見ていて楽しかった。

元彼の遺言状相関図2
森川一族から紗英参戦(1〜2話を相関図にまとめました)イラスト/北村ヂン

まあ今回、事件解決に役立ったのは、紗英の記憶力くらいだが。

第1〜2話の本格ミステリー路線から一変して、キャラクター重視のミステリー風ドラマとなった本作。
それにしても、殺人の動機くらいはちゃんと見せてもらいたいところだが……。

次回予告では、(回想だと思われるが)元彼・栄治が再登場。『元彼の遺言状』というタイトルなのに、早くも遺言状が関係なくなってしまった本作を軌道修正してくれるのだろうか!?

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北村ヂン

(きたむら・ぢん)1975年群馬県生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌を伺うライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れ過ぎています。