綾瀬はるか×大泉洋『元彼の遺言状』4話「くるみざわけいじ」はテレビならではの見事な仕掛け!不自然なセリフが惜しい

2022.5.9
元彼の遺言状4

文・イラスト=北村ヂン 編集=アライユキコ


月9ドラマ『元彼の遺言状』(フジテレビ)。綾瀬はるかと大泉洋のバディは長期シリーズに育てようとしている? キャラクターが立ってきた4話を漫画家でライターの北村ヂンが考察する(ネタバレを含みます)。


ドラマならではの仕掛けに感心したものの……

3話では、いろいろな伏線らしきものを全部すっ飛ばして、なんの情報もないまま「どうしてわかったの!?」レベルのエスパー推理で真犯人を見つけ出していたが、4話では逆に、あざといほどに伏線→回収がぶっ込まれていた。

今回の事件は、ミステリー小説による殺人教唆。
篠田敬太郎(大泉洋)が敬愛する人気作家・秦野廉(宮田早苗)13年ぶりとなる新作『甘い殺人』の出版が発表された。しかし、出版記者会見で秦野は「私は人を殺しました」と語り出したのだ。
指摘した場所からは本当に死体が発見され、秦野が本当に殺人を犯したのか!?……と思いきや、被害者の妻・清宮加奈子(中島亜梨沙)が自首。

秦野は事前に、自宅の家政婦をしていた加奈子に原稿を渡しており、その小説どおりの手口で殺人が行われたのだという。

一件の殺人事件で「私が殺した」と主張する人物がふたりもいるというインパクトの強い導入。
さらに加奈子の娘・希(白鳥玉季)も「私が殺した」と言い出した。
冒頭の加奈子と秦野のやりとりや、やたらと目立つ黒手袋をしている秦野。剣持麗子(綾瀬はるか)と初対面した希が「お母さんを助けてください」と言っていたことなどなど、さまざまな伏線が張られていた。

『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社
原作『剣持麗子のワンナイト推理』新川帆立/宝島社(今回はオリジナルのようだ)

イマイチ活かされていない伏線

中でも最大のビックリ案件は、秦野廉の小説『くるみざわけいじシリーズ』の主人公が「胡桃沢刑事」ではなく「パティシエ探偵・胡桃沢啓二」だったことだろう。

セリフでは頻繁に登場しているのに、新刊発売記念記者会見のパネルにも、書籍のカバーや帯にも『胡桃沢啓二シリーズ』の表記はなし。一瞬、配信動画のタイトルや書籍の本文中にチョロッと書かれてはいたものの、それに気付かないまま「刑事」だとミスリードさせられていた視聴者も多いはずだ。

それでいて、小説のタイトルが『甘い殺人』や『殺しのレシピ』だったり、「バナナプディングのトリック」「疲労回復にはカカオが一番です……と胡桃沢啓二も言ってました」など、刑事ではなくパティシエだとにおわせる情報もキッチリと提示されている。

小説では成立しない、テレビドラマならではの見事な仕掛け!(テレビ字幕をオンにしていたらバレバレだけど)

ただ、この仕掛けが明かされたきっかけが、母をかばって自首しに行こうとする希が唐突に、

「担当の刑事さんが、胡桃沢刑事みたいな人だったらいいな。女の子には日本で一番甘い刑事さんなんでしょ? 私のことも見逃してくれるかも」

なんて言い出したことだったというのが……。

主人公を刑事だと勘違いしていたことから、希は小説を読んでいないと判明する重要な場面だが、これから自首しようという13歳の少女が、読んでもいない小説の主人公について、ボンヤリとした知識のままつぶやいたりするか!?
この不自然過ぎるセリフで少々冷めてしまった。


人気作家とは思えないほどしょぼいトリック

結局、真犯人は秦野だった。

小説がきっかけで殺人事件が起きたとなれば、話題になって売り上げも上がる。「加奈子&希の境遇に似た小説を読ませたら、感情移入して小説のとおりに殺人を犯すだろう」と考え、わざわざ原稿を渡したのだ。
秦野の想定外だったのは、加奈子も希も小説を読まなかったこと。

「読書好きの希ちゃんは本があったら読まずにはいられない」

とのことだが、原稿用紙の状態で渡していたため、「“本ではない”から読まなかった」という伏線もキレイに回収されている。

しかし、そもそも「小説を読ませたら殺すだろう」と期待することも、「なかなか殺さないから、もう待てなくて私が(殺した)……」という発想もどうかしている。

何より、人気作家待望の新作における完全犯罪が、「睡眠薬入りのモナカを食わせて眠ったところを、背後から背負うように電気コードで首を絞めて(地蔵背負い)自殺に見せかける」という、まったくおもしろそうとは思えないトリックだというのが、エピソード全体の微妙さに拍車をかけているのだ。

とはいえ、なんの伏線もなく唐突に真犯人が発覚した第3話と比べれば、キレイにまとまっていたが。

篠田の“ウソ”が発覚

それ以上に気になったのは、キャラクター設定のブレ。

3話までの篠田は、ミステリー小説の知識を活かしてトンチンカンな推理ばかりしているボンクラなワトソン的な存在だったが、4話では、受付嬢のネイルチップの跡から夜のバイトを見抜くなど、急に推理力がキレキレになっている。

「爪にはその人の生活が表れる」

この篠田の発言が、「地蔵背負いをした際に力を入れ過ぎて変色してしまった爪」の伏線になっているものの、秦野の爪に気付いたのは麗子のほうだった。
麗子は麗子で、銭ゲバなのか人情に厚いのかキャラがブレている。

さらに言えば、本来、爪の異変に気付くべきキャラは「一度見たものは忘れない」特殊能力を持った森川紗英(関水渚)ではないだろうか。
その紗英は今回、実家の財力に物を言わせてワイドショーのコメンテーターを買収するという、『富豪刑事』的な別ベクトルの特殊能力を発揮していたが……。

元彼の遺言状相関図2
森川一族から紗英参戦(1〜2話を相関図にまとめました)イラスト/北村ヂン

長期シリーズに育てたいのでは?

本作ではエピソードごとに違う脚本家が担当している。テレビ朝日が得意とする一話完結の刑事・医療ドラマで採用されているシステムだ。
原作の展開やキャラクターを大幅に改変し、オリジナルエピソードを追加してまで一話完結のドラマになっているのは、綾瀬はるかと大泉洋のバディで長期シリーズに育てたいのでは……と勘ぐってしまう。

原作から最も大きく改変されているキャラクターといえば、ほぼチョイ役だった原作から、主役級に昇格している篠田。

4話のラストでは、篠田に関するデカい伏線も提示されていた。
1話では、麗子の元彼・森川栄治(生田斗真)と麗子の大学時代の先輩だったと語っていた篠田(麗子はまったく記憶になかった)。

しかし回想シーンでは、栄治に対して「僕は大学行ってないからさ」と語っていた。

こうなってくると、栄治の残した暗号である「し・の・だ・を・た・の・ん・だ」の意味合いも変わってきそうだ。現状、麗子は「面倒見てやって」くらいの認識でいそうではあるが、果たして……。

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北村ヂン

(きたむら・ぢん)1975年群馬県生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌を伺うライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れ過ぎています。