天心vs武尊、なぜ“世紀の一戦”? 愛憎の7年間を名言で振り返る

2022.6.11
那須川天心・武尊『THE MATCH 2022』

文=神宮寺しし丸 編集=田島太陽


2022年6月19日(日)、東京ドームで那須川天心vs武尊をメインカードとする格闘技イベント『THE MATCH 2022』が開催される。

1991年生まれの武尊(鳥取県米子市出身)、41戦40勝1敗。
1998年生まれの天心(千葉県松戸市出身)、41戦41勝無敗。

格闘技メディアでの執筆やリングアナとしても活躍し、『アメトーーク!』(テレビ朝日)の「キックボクシング大好き芸人」にも出演したお笑い芸人の神宮寺しし丸が、ふたりの名言と共に経緯を解説する。

2015年:「那須川天心とやってくれー!」と叫んだ日

今から7年前の2015年11月21日。僕は先輩とK-1を観に代々木第二体育館に来ていました。

武尊はフランス人選手にKO勝ちし、マイクを握ります。「大晦日めっちゃヒマなのでよろしくお願いします!」と、翌月に控えたRIZIN大晦日大会への参戦をアピール。

僕は客席から武尊へ「那須川天心とやってくれー!」とひとりで叫んでいました。一緒に来ていた先輩はキョトン顔。「那須川て誰やねん」と。

大会後に先輩とご飯を食べながら僕は「武尊は強い。しかし、同じ階級に那須川天心というバケモノみたいな高校生がいるんです!」と熱弁。「今年の大晦日、RIZINで武尊vs那須川天心、実現しそうですね!」と、興奮気味に先輩に話していました。

しかし、その年の大晦日、武尊vs那須川天心は実現しませんでした。その翌年も。その翌々年も実現しませんでした。

あれから7年。那須川天心vs武尊がついに実現します。7年という時間で、この試合はただの試合ではなくなりました。「格闘技マニア待望の一戦」から、いかにして世間を巻き込む「世紀の一戦」となったのでしょうか?

2015年:那須川天心の宣戦布告「武尊選手!かかってこいや」

ふたりの歴史が始まったのは、2015年。

武尊、K-1王者。

那須川天心、RISE王者。

ライバル団体のエースが同じ階級(55kg)というこもあり、にわかに格闘技ファンの間でふたりの対戦を望む声が。まずその声に反応したのは天心。BLADE(K-1以外の主要団体が参加した大会)のトーナメントで優勝し、マイクを握る。

まだ国内でひとり、やりたい選手がいます。K-1の武尊選手! かかってこいやって感じですね。
全試合KOしたので、僕のほうが上なんじゃないかなって思ってます。
RISE最強です!

那須川天心(YouTube『那須川天心 vs 内藤大樹 1/Tenshin Nasukawa vs Taiki Naito 1|2015.8.1 BLADE.2』)
上記の発言は5:58ごろから

この宣戦布告ですべてが始まった。

これに武尊も反応。那須川天心の宣戦布告から3カ月後のK-1代々木大会で勝利後、マイクを握ると「大晦日めっちゃヒマなのでよろしくお願いします!」と、翌月に控えたRIZIN大晦日大会への参戦をアピール。客席から「那須川天心とやってくれー!」との声が微かに聞こえる。

意気揚々と花道を帰る武尊に、観客席からひとりの男が歩み寄る。那須川天心だ。ライバル団体のK-1の会場へ乗り込み「大晦日やりましょう!」と、その場で対戦を直訴したのだ。それにグローブタッチで応える武尊。これはもう大晦日実現だ!と思いきや、試合後の会見で武尊はこう語った。

ファンだと思ったのでハイタッチしたんですが、気付きませんでした。周りがうるさかったので何を言っているかは聞こえなかったです

武尊(スポーツ報知より)

武尊が本当に天心をファンだと思ったのか、会社(K-1)からそう言いなさいと指示されたのかはわからない。しかし、この時点でのふたりの知名度は、そう言われても仕方がないほどの差があったのだ。

この年の大晦日のRIZINで、武尊の対戦相手としてリングに立っていたのは中国人選手だった。

2016年:異例の連戦連勝、駆け上がる那須川天心

2015年大晦日のRIZINで、武尊が中国人選手をKOする姿を、那須川天心は実家のテレビで観ていた。のちに、天心はこのときの心境をこう語っている。

悲しかった。あの気持ちは忘れられない。俺の方が絶対強いのに

那須川天心(『GOETHE』2022年6月号)

このころ、幼なじみで当時K-1ファイターだった平本蓮は、しきりに那須川天心をK-1に誘っていたという。

高2くらいの頃かな
新生K-1ができて勢いが良かった頃
vs武尊戦が見たくて何度も天心をK-1に来ないかって誘ったけど、
K-1よりも自分の名前をデカくして必ずその試合を実現させるって言ってたなぁ
天心本当にすげーよ

平本蓮(引用:@REN_MMA

この言葉を実践するかのように、2016年の天心は試合をしまくった。年末にはRIZINに初参戦、12月29日と大晦日で異例の2連戦も行い合計9試合を戦う。格闘家の平均は年間3〜4試合なので超ハイペースだ。そして、すべての試合で勝利した。

『覚醒』(那須川天心/クラーケン)
2017年に出版された『覚醒』(那須川天心/クラーケン)

武尊もK-1で勝ちつづけ、「大晦日。俺がいないと盛り上がらないでしょ?」と、再び大晦日RIZINへの参戦をアピール。しかし、発表されたのは天心の参戦だけであり、武尊がRIZINのリングに立つことはなかった。

その後も、RIZINは毎年のように大晦日大会での武尊vs天心を計画した。天心は対戦をアピールしつづけた。しかし、交渉は折り合わず実現することはなかった。

2018年:追い込まれる武尊「中途半端なことは口にしたくない」

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