天心vs武尊、なぜ“世紀の一戦”? 愛憎の7年間を名言で振り返る

2022.6.11


2018年:追い込まれる武尊「中途半端なことは口にしたくない

次第に格闘技ファンの間では、K-1や武尊への批判が増していく。そして2018年2月、K-1は那須川天心に対し民事訴訟を起こす。他団体と交流する意思はないと表明しているK-1に対して対戦要求をつづけることで、ファンから「K-1と武尊は天心から逃げている」と根拠のない誹謗中傷を受けていること、イメージダウンによるスポンサー離れが起きた、という理由だ。

K-1の言い分もじゅうぶんに理解できる。要するに「もう名前を出さないで」ということだ。

『武尊 ファースト写真集「武尊」』(西村康/ワニブックス)
2018年に出版された『武尊 ファースト写真集「 武尊 」』(西村康/ワニブックス)

しかし、皮肉なことにこの訴訟問題が明るみに出ると、K-1と武尊への批判はさらに過熱した。対戦実現に向けて動いていたという武尊にとっては最悪の事態だ。天心と戦いたいのはリングであって法廷ではない。

このころの武尊の精神は限界に来ていたはずだ。それは2018年12月、K-1大阪大会で皇治に勝利した試合後のマイクで爆発する。

団体の壁とかあって、正直……実現するのってめちゃくちゃ難しいことなんですよ。
実現できない状況でそのことを発言したら、ファンを裏切ることになる。中途半端なことは口にしたくないんですよ。

僕は格闘技界を背負う、変えるってずっと言ってきてるんで。時期はわからないですけど、僕は必ず実現させようと思ってるんで。
そして、実現させるだけじゃなくて、僕は勝つ気でいます。ずっと言ってる「K-1最強」を僕が証明する。

武尊(YouTube『【OFFICIAL】武尊 VS 皇治 2018.12.8 K-1 WORLD GP』)
上記の発言は21:46ごろから

天心の名前こそ出さなかったが、かなり踏み込んだ発言だ。何より、武尊が初めて、天心との対戦を積極的に実現させようとしていることを公の場で口にした瞬間だった。

2019年:実現するための言葉「東京ドームで会いましょう」

天心は地上波放送のあるRIZINに継続参戦をすることで、グングンと知名度をアップ。平本蓮に語った「K-1よりも自分の名前をデカくする」を体現していく。そのダメ押しとなったのが、2018年の大晦日、RIZINでのフロイド・メイウェザー・ジュニア戦。世界的スーパースターとの一戦を経て、那須川天心の名前は日本格闘技界最大のビッグネームへと成長した。

『GONG格闘技 2019年5月号』(アプリスタイル)
天心と武尊がそろって表紙を飾った『GONG格闘技 2019年5月号』(アプリスタイル)

武尊は毎年、大晦日に富士登山に出かけている。テレビをつければ天心が出ている。かつて「ファンだと思った」あいつが。武尊は那須川天心vsメイウェザー戦を観ることなく、この年も富士山へ向かった。

このころ、天心は武尊戦についてこう発言している。

それ(武尊戦)をやるんだったら東京ドームしかないです。じゃないとやりたくない。
(武尊が天心戦を実現させると発言したが)形だけで言ってるのか、本当に言ってるのか、まだわからない状況で。
自分は別に、受けて立ちますけどね。

那須川天心(YouTube『【番組】RIZIN CONFESSIONS #32』)
上記の発言は33:54ごろから

やりたい気持ちを持ちながらも、K-1と武尊への不信感も垣間見せた。対して、武尊はこう反応した。

形だけって。
そんな中途半端な言葉ファンの前で発しない。

相手を責めたり貶してても実現しないから
実現させる為の言葉を贈りますよ。

東京ドームで会いましょう。

武尊(引用:@takerusegawa

ここでふたりの口から初めて「東京ドーム」というワードが飛び出す。しかし、ここから実際に東京ドームまで辿り着くのに、さらに3年かかることになる。

2022年:天心「これは運命」、武尊「勝たなかったら何も証明できない

2020年大晦日、RIZIN。事態は急展開を見せる。武尊が来場し、天心の試合をリングサイドで生観戦したのだ。天心は勝利後にリングサイドの武尊と抱擁。これはK-1サイドも了承した上での“公式訪問”であることが明かされ、対戦の機運が一気に加速する。

2021年3月、今度はK-1の会場に天心が来場し、武尊の試合を生観戦した。武尊はレオナ・ぺタスに勝利後、こうアピールした。

那須川天心選手、今日はご来場ありがとうございます。K-1へようこそ。
天心選手と最高の舞台で最高の試合をやりたいと思ってる。本当に長い間お待たせしましたけど、この試合は格闘技界にとっても、スポーツ界にとっても、日本にとっても、めちゃくちゃパワーのある試合になると思う。

僕は絶対やろうと思ってるので。ぜひ、天心選手、よろしくお願いします。

武尊(『【OFFICIAL】武尊 vs レオナ・ペタス K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級タイトルマッチ~K’FESTA.4 Day.2~』)
上記の発言は16:32ごろから

2021年4月、天心が2022年春にキックボクシングを引退し、ボクシングに転向することを発表。

それに伴い、武尊との対戦は年内がタイムリミットと見られていたが、12月に入っても実現せず。天心vs武尊の構想は消滅との報道も出る。

しかし12月24日、対戦決定が電撃発表。天心はボクシング転向時期をずらすことも宣言する。

那須川天心、武尊

K-1よりも自分の名前をデカくして実現させた、那須川天心。
誹謗中傷に耐えながらこの一戦の実現に人生をかけた、武尊。

これは運命だと思う。今まで僕が成し遂げてきたこと、これから自分がやろうとしていること、そのすべてがこの試合にかかっている。だから絶対に負けない。僕は武尊選手を倒す、自分の全存在をかけて。

那須川天心(引用:GOETHE[ゲーテ]

天心選手に勝たない限り、僕の格闘家人生は終わるに終われない。(中略)勝たなかったら僕は何も証明できない。今まで苦しんだことのすべてが無になる。この試合には、勝つという以外の選択肢はないんです。

武尊(引用:GOETHE[ゲーテ]

僕は先輩とご飯を食べています。

「天心のスピードに武尊はついていけないと思うんですよね」「でも、スピードを活かしてポイントアウトするような戦いをさせない圧力が武尊にはあるよ」「どっちが勝つんですかね?」「とりあえずふたりがリングで向かい合った時点で泣くわ」

僕と先輩は興奮気味に話している。

神宮寺しし丸
(じんぐうじ・ししまる)太田プロダクション所属のピン芸人。プロレス・格闘技観戦歴38年。事務所の先輩、劇団ひとりに溺愛されていることでも有名。お笑い芸人として活動する一方、格闘技ライター、リングアナウンサー等でも活動。自身のYouTube『神宮寺しし丸チャンネル』では「今週の格闘技“裏”ニュース」として格闘技の裏ネタ等を配信中

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大会概要:『THE MATCH 2022』

那須川天心、武尊

日程:2022年6月19日(日)
会場:東京ドーム 
時間:11時開場/13時開始 ※オープニングファイトは12時30分開始(予定)
主催:THE MATCH 2022 製作実行委員会
※『ABEMA PPV ONLINE LIVE』にて全試合独占生中継


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神宮寺しし丸

(じんぐうじ・ししまる)1975年生まれ、大阪府出身。太田プロ所属のピン芸人。1997年から芸人活動。途中、人材派遣会社の社長を経て芸人復帰。格闘技専門誌でライター、大会のリングアナを務めることも。365日の花言葉を言う“お花くん”としても活動。YouTube『神宮寺しし丸チャンネル』『お花くんチャ..

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