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子猫と離れがたくなる
里親さん探しは、預かり元の動物病院と並行して進めていた。
実は、動物病院の患者さんで里親さん候補がひとりいたのだ。そのお宅には先住猫がいるから、寂しがり屋で1匹だと不安な「よう」を、と打診していたのだけれど、諸々の事情でその話は流れてしまった。暗雲。
里親募集サイトに登録すれば、割とすぐに何件か希望者が現れるのでは、とちょっと高をくくっていたのだけれど、意外と、というか、全然応募がない。里親募集サイトは、新しい情報がトップに表示されるため、日が経つとどんどん目立たなくなっていくのだ。最初が肝心なのだが……。
一時預かりの時間が長引けば長引くほど、僕らが子猫と離れがたくなる。全然プロフェッショナルじゃないし、割り切れてもいないのだ。
「ゆっくり探せばいいよね。もう少し大きくなったら、長毛っぽさも増して、さらに目を引きそうだし。最悪ウチで飼えばいいし」なんて言い合うものの、心中は穏やかではない。この「ウチで飼う」という結末が本当に最悪なのか? 実は僕らにとっては最高なのでは? なんて思っちゃうのだ。もう自分たちでもよくわからないのだ。
〈預かった猫のちからで「もういっそうちで飼う?」って言わされている〉
……などと案じていたら、動物病院経由で、待望の里親希望者が現れた。
希望は1匹。初めて猫を飼うというかただった。
先住猫もおらず、単独で、ということになると、寂しがり屋の「よう」よりは天真爛漫な「ぶん」のほうが合っていそう、ということで「ぶん」をおすすめすることに。
そういえば、初めて猫と暮らす人に譲渡するのは、初めてかも。
「以前飼っていた」、「今も飼っていて2匹目に」、「実家で飼っていた」というかたが多くて、猫との生活が初めて、という人はいなかった気がする。
初めての猫との暮らしか……。想像しただけで、なんだかギューッとなる。たぶんよくも悪くも「思っていたのとずいぶん違うな……」の連続だろう。それらをまるごと全部楽しめるくらいのおおらかさが望まれる。
〈猫を飼う条件:思っていたのとはちがうすべてを楽しめること〉
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