俳優・滝藤賢一のスタイルブックが発売、即重版!?今、時代に求められている“遊び心”

2021.10.24


『服と賢一』で気づかされる“いかに今を楽しむか”

そもそも滝藤は、いや私たちは、なぜ服を着ることを楽しもうとするのか?

服を選び、着る、という行為は、さまざまな意図によって起こるものだ。私たちは目的に合わせて服を着替える。「誰かに見せたい!」という欲求を持つ人がいれば、「組織の中で地位を示すため」という理由もあるだろうし、「社会における“自己”を主張(確立)するため」という者もあるだろう。しかし純粋に、「着ていて気分がいい」という側面もあるはずだ。

滝藤の“ファッション観”に触れて思うのは、「ああ、この人は自ら服を選んで着ることを、とことん楽しんでいるな」ということだ。つまり彼は、“自分のため”に服を着ているのである。

(c)山田智絵/主婦と生活社
(c)山田智絵/主婦と生活社
大人コーデの参考になるスタイルもたくさん掲載されている (c)山田智絵/主婦と生活社

本書で滝藤も学生時代の話に言及しているが、多くの人間は“制服を着崩す”ところからファッションを始め、自身の“スタイル”というものを生み出そうとしてきたはずだ。しかし年齢を重ねるごとにその大半が、社会の規範を意識するからか、自らに制限をかけていく。「◯歳にもなって、この服装はおかしい」「◯◯な職業の人間にこの格好は不適切」──といった具合に。

誰もがこの規範の中で、どうにかこうにか工夫してファッションを楽しんでいるのだと思う。けれどもプライベートに還れば、何歳でも、どんな職業でも、まわりの目を気にする必要はないはずだ。社会の規範から一時的にでも解放させてくれる、それが本来のファッションというものだろう。服を着る楽しみは、私たちをいろんなところへと連れて行ってくれる。

実際に滝藤だって、仕事のときには演じる役の衣装を身につけなければならないわけだ。本書に収められているのはコロナ禍での“173日間”だが、映画にドラマにCMに、この自粛期間にも滝藤を見ない日はなかった。それほど多忙な俳優だ。撮影現場に到着すれば、演じる役の衣装が用意されているはずで、日常生活では自分の好きなスタイルでいられるのはごくわずかな時間であるに違いない。

しかし、だからこそ彼は、自分自身に還ったときにこそより自由に、好きな服を好きなように着ることを楽しんでいるように見える。これは今のような時代にこそ必要な、“遊び心”なのではないかと思う。

(c)山田智絵/主婦と生活社
(c)山田智絵/主婦と生活社
『服と賢一』にはファッションの自由な楽しさが詰まっている (c)山田智絵/主婦と生活社

『服と賢一』の冒頭に掲載されているエッセイは「ファッションはどんな人間に対しても平等ですから」と締め括られているのだが、確かにそうだ。ファッションは誰に対しても開かれている。自分がどうありたいかを示すのに、最も簡単で、最も有効な手段、それがファッションなのだ。

ファッションを楽しむのに年齢は関係ないと思うものの、同時に、滝藤の生き生きとした姿を見ていると、ページをめくるごとに年齢を重ねるのが楽しみで仕方なくなってくる。

(c)山田智絵/主婦と生活社
NEEDLESのジャージを取り入れた“滝藤スタイル” (c)山田智絵/主婦と生活社

ちなみに滝藤は、セレクトショップ「NEPENTHES(ネペンテス)」を愛しているようで、“滝藤スタイル”に欠かせないジャージが定番アイテムの「NEEDLES(ニードルズ)」や、「ENGINEERED GARMENTS(エンジニアドガーメンツ)」「SOUTH2 WEST8(サウスツーウエストエイト)」など、ネペンテス関連のブランドのアイテムを数多く(とんでもない数!)着用している。本書はネペンテスファン垂涎の一冊でもある。


この記事の画像(全19枚)




関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

折田侑駿

(おりた・ゆうしゅん)文筆家。1990年生まれ。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、文学、服飾、酒場など。映画の劇場パンフレットなどに多数寄稿。映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを務めている。

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太