ハンソ、最大の危機!
ヴィンチェンツォはハンソクをナメているわけではなかった。ハンソには数カ月の間、海外への逃亡を薦めているし、チャヨンにはハンソクを始末するときに仲間から外れてほしいと頼む。
「今までは悪党だった俺たちが悪魔になるんだ。あなたには、その一線を越えてほしくない」
それだけハンソクが手強いと認識しているのだろう。しかし、チャヨンは提案を拒む。
「ハンソクのような怪物を罰する法律はない。善意の法律はね。だから最悪より少しましな方法を選んだの。そうすべきだと思った」
腐った権力者や、能力はあるが私利私欲を優先する者たちは、互いに結託して暴利をむさぼりつづける。もちろん、弱い者、力のない者、声の小さい者を容赦なく踏みつけ、絞り上げ、殺してしまっても裁かれることはない。チャヨンが言っているのはそういうことだ。だから自分たちで裁く。善意の法律ではなく、悪党たちの法律で。
手始めにヴィンチェンツォの警告を無視しつづけたチョン検事が惨殺される。何か計算があるのかと思ったら、シンプルに殺されてしまった。部長検事という権力をかさに着て、何度も殺されかけたにもかかわらず、ヴィンチェンツォを侮りつづけた彼の愚かさは際立っていた。ある意味、とても古いタイプの悪党だと言えるだろう。
一方、ミョンヒは“怪物”ハンソクを解き放つ最後の手段を講じる。自分がこれまでの罪を全部被ってハンソクを釈放しようというのだ。拘置所に入っている間はヴィンチェンツォから身を守ることができるのだから一石二鳥である。彼女が拘置所で歌っていたのはオペラ『リナルド』のアリア「私を泣かせてください」。囚われの身になったヒロインが「どうか自由にあこがれることをお許しください」と歌うものだ。自分から入っておいて、こんな歌を歌うのだから、いかにミョンヒが厚顔無恥なのかがわかる。
そして、怪物と化したハンソクが釈放された。チャヨンは拉致され、ハンソも拳銃でぶん殴られて連れ去られる。ヴィンチェンツォのもとに送られてきたのは、血まみれのチャヨンのイヤリング……!(実は豚の血だったのだが)
呼び出され、ついに対面するヴィンチェンツォとハンソク。ハンソクの手には拳銃、ヴィンチェンツォは丸腰。ハンソクはハンソにホッケースティックでヴィンチェンツォを殴り殺すよう命じ、激昂したチャヨンを殴打して拳銃を突きつける。
ヴィンチェンツォは……膝を折ってハンソに「指示に従え」と伝える。自分を殴れというのだ。涙を流しながら「後悔のない道を選びます」とスティックを握り締めるハンソ。ああ、それはダメだ、ハンソ! ハンソがスティックを振り下ろしたのは、ヴィンチェンツォじゃなくてハンソク! しかし、揉み合っているうちに撃たれてしまう。そして逃げようとしたチャヨンの背中にも……!
これまで何度も「撃たれた! でも実はトリックでしたー」という“引き”を見せてくれた『ヴィンチェンツォ』だったが……果たしてチャヨンとハンソの運命は? ヴィンチェンツォとハンソクの決着の行方は? 次回、最終回! デデン!