未知なるラジオへの誘い
紆余曲折の末、完成した本誌だが、編集人である私の行き当たりばったりの考えとは裏腹に、名前のとおりに“偏愛”が詰まった本になった。声優界にラジオ好きは多いが、番組取材などを受けることはあっても、個人的なリスナー話をする機会は皆無。今まで語られたことのなかった話がたくさん飛び出した。昼間のワイド番組を愛してやまない人、長年芸人ラジオを聴いてきた人、先輩声優のラジオを聴いて業界を志した人、ここ最近で急にラジオにハマった人……。スタンスはそれぞれで、話題に挙がる番組の幅も予想以上に広かった。
前述したように、声優はラジオと結びつきが強いから、一般のリスナーをインタビューするのとはまた違う内容になる。声で何かを表現する行為に思い入れは強いし、必然的にラジオ番組を持つことになるから、聴いている番組のパーソナリティと自分を比べてしまう部分も出てくる。アニメ関連のラジオではキャラクターを背負う要素もあるから、そこには特有の難しさがある。
また、その番組数の多さゆえに、どうしても声優は自分たちの人間関係をデフォルメしてさらすことになるから、ラジオを語る上で“人との距離感”が重要なテーマになる。だからこそ、単純なリスナー取材では終わらずに、今までにないほどマニアックで、熱のこもった本になったように思う。
ジャンルに関係なくラジオ愛を語っているので、声優ファンからすると、その内容を理解できない部分は少なからず出てくるだろう。ただ、その声優のラジオ観を知るためには、彼らが愛してやまない番組を聴いてみるのが一番手っ取り早い。声優ラジオリスナーにとって、この本が未知のジャンルに触れるキッカケになれば幸いである。
それと同時に、声優のラジオに触れたことのないリスナーが、この本に詰まった声優たちの“偏愛”に感化され、彼ら彼女らの番組に興味を持ってもらえたら、こんなにうれしいことはない。
まあ、これもあとづけだ。大部分のインタビューを担当した立場とすれば、ただ単に「好きなラジオ番組の話がたくさんできて楽しかった」というのが素直な心境なのだけれど。
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