「アイドル・宮脇咲良」の覚醒。HKT48とIZ*ONEで手に入れた最強の武器とは?

2021.6.26
宮脇咲良

トップ画像=【宮脇咲良ver】『IZ*ONE D-icon Vol.11』
文=竹中夏海 編集=高橋千里


2021年6月19日をもってHKT48を卒業した宮脇咲良。「アイドルになれたから、誰かの元気の源になれた」と感謝を胸に、卒業コンサートを締め括った。そんな彼女の10年間のアイドル史を、振付師の竹中夏海氏が分析する。

【写真】宮脇咲良、15年にリリースした水着写真集


最初の印象は「自己主張の少ない大人しめな子」

「宮脇咲良」というアイドルを私が認識したのは8年前に遡る。2013年に発売されたHKT48の2ndシングル『メロンジュース』の振り付けを担当したことがきっかけだった。

【MV full】メロンジュース / HKT48[公式]

とはいっても、当時の彼女の印象はそこまで鮮烈なものではない。

プレイヤーとしてだけでなく圧倒的プロデューサー能力に長け、グループを牽引しつつも俯瞰した視点でメンバーを見守っていた指原莉乃。

中心メンバーでありながらも、この曲でダブルセンターに抜擢された田島芽瑠・朝長美桜のフォローやケアまで行っていた姿が印象的な兒玉遥。

そうしたメンバーに比べると、宮脇は「期待されていることに間違いはないが、自己主張の少ない大人しめな子」というような印象だった。

「日韓をまたぐアイドル・宮脇咲良」の覚醒スピード

そこから数年後、IZ*ONEを生んだオーディション番組『PRODUCE 48』を特に追っていなかった私にすら自然と伝わってくるほど、「日韓をまたぐアイドル・宮脇咲良」の覚醒していくスピードは目覚ましいものがあった。

メイクや髪型といったビジュアル的な成長はもちろんのことだが、振り付けのニュアンスや表情ひとつ取っても、こんなに細やかな表現ができる子だっただろうか。

IZ*ONE (아이즈원) ‘Panorama’ MV Teaser 2

日本のアイドル、と括るにはあまりに乱暴かもしれないが、少なくとも48グループは出演するライブや音楽番組で立ち位置やメンバー編成が流動的に変わることが往々にして起きる。

これはメンバーからすれば大きな労力がいる。一見同じ振り付けに見えても、立ち位置次第では、フォーメーションが変わるときの動線や振り付けのカウントなど、何もかもが変わってしまうことがあるからだ。

本来ダンスとは身体に染みついて初めて自分の個性を加えたりプラスアルファの工夫を乗せられたりするものだが、上記のようなやり方だとそこに辿り着く前にその日のパフォーマンスで精一杯になってしまう可能性が高い。身体に染みつく前に、頭で考えながらこなさなくてはならないことが増えるからだ。

一方、K-POPグループの多くは固定メンバーで活動するため、立ち位置やメンバー編成がコロコロ変わるようなことはめったに起きない。

パフォーマンスにかける練習量がそもそも違う可能性は大きいが、そのため細かく複雑な振り付けも“自分だけの立ち位置”を覚えて鍛錬できるのだ。


自信を持つことは悪か? 宮脇咲良が見つけた居場所

こうした物理的な理由と、精神的な部分でも宮脇は自分の居場所を見つけていったのではないだろうか。IZ*ONEの活動終了後、日本に帰国した際のインタビューで彼女はたびたびこのように語っている。

「今までは謙虚でいなきゃいけない、という想いから自信を持つと成長が止まると思っていた。自信を持つことは“悪”だと。でも韓国のアイドルの子たちの姿や発言で、自己満足と自己肯定の違いに気づけた」

同じ「アイドル」でも、日本と韓国では文化やファン層、需要は異なる部分が多い。

洗練されたビジュアルやパフォーマンスが求められる韓国に対し、あどけなさや自然体(ナチュラルメイクや黒髪信仰)の人気が高い日本。

もちろん、日本でも自分の個性ややりたいことをのびのび表現できるアイドルもたくさんいるが、活動当初の宮脇は自らこうした需要に自分を寄せに行ってしまう部分があったという。

一番のファンであり親友、村重杏奈という存在

自ら課していたアイドル像から解放された宮脇の、一番のファンともいえる存在が旧友のHKT48のメンバー内にできた、という展開もなんとも微笑ましい。

HKT48の村重杏奈は「一生WIZ*ONE(IZ*ONEのファンの総称)宣言」をしているほど熱心なIZ*ONEファンだ。

普通なら、自分も所属するグループの活動を休止し2年半別のグループに専念してしまう宮脇に、もっと複雑な感情を抱いてもおかしくない。ところが村重はIZ*ONEの新譜が出るたび熱狂し、当初から決まっていた活動終了を迎える瞬間は心の底からそれを惜しんだ。

ここまで彼女を夢中にさせたのは、単にふたりが親友だったからだけではなく、それだけ自分の居場所を確立した宮脇をはじめとするIZ*ONEのメンバーの姿が村重に響いたからにほかならない。

10年マブダチ宮脇咲良てぃんと思い出話した!(たのシゲch -村重杏奈-)

帰国してHKT48の生配信番組に矢吹奈子と共にサプライズ出演した宮脇は、そこで卒業を発表する。卒業まであと1カ月しかない、という宮脇に寂しさを隠せないファンやメンバーも多かっただろう。

その空気を察知したのか、即座に村重がこう言ったのだ。「1カ月もいてくれんの? めちゃめちゃうれしくない?」と。

思わず映画『チアーズ!』のクライマックスでヒロインが発する(以下、ネタバレします)「2位なんてすごい!」という名ゼリフを思い出してしまった。

シュン……と静まり返る空気を一瞬でひっくり返すほどポジティブなパワーを放つ村重のこのひと言は、大げさじゃなくアイドル史に刻まれるべき名言だと思う。

【MV】思い出にするにはまだ早すぎる(Full ver.) / HKT48[公式]

そこから約1カ月。HKT48としての宮脇咲良は楽しいアイドル生活を過ごせただろうか。

「自己肯定」という武器を手に入れた彼女の、次のステージが楽しみで仕方ない。

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Written by

竹中夏海

日本女子体育大学ダンス学科卒業後、2009年に振付師としてデビュー。その後、さまざまなアーティスト、広告、番組にて振付を担当。コメンテーターとして番組出演、書籍も出版。著書『アイドル保健体育』 (CDジャーナルムック)は「令和の保健体育の教科書」としても注目されている。

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