アイドル・ピアニストのHKT48森保まどかが、指原莉乃から学んだ “負けても正解”

2020.3.14

文=武田 鼎 撮影=飯本貴子
編集=鈴木 梢


1月29日にピアノソロアルバム『私の中の私』をリリースした、森保まどか。なぜ“ピアノソロアルバム”なのかというと、実は彼女、HKT48のメンバーとして活動を始める以前に数々のピアノコンクールで受賞をするなど、ストイックなピアノ活動をしてきた過去を持つ。

2015年に芸能界特技王決定戦『TEPPEN』(フジテレビ)で2015年にその腕前を披露した彼女だが、その選曲は松任谷由実の『真夏の夜の夢』やフィンガー5の『学園天国』など、自身の世代とは言えない楽曲であることが気になった。一体彼女はどんなカルチャーに触れてここまでたどり着いたのだろうか。

HKT48としての活動、そしてこれからアイドル・ピアニスト両方の肩書きを持ちながら活動していくことについて、指原莉乃から学んだことなど、余すところなく話を聞いた。

昔の曲は好きだし、カネコアヤノや藤井風も好き

HKT48に所属する森保まどかは、アイドルとして活動する傍ら、ピアニストとしてソロアルバム『私の中の私』をリリースした。松任谷正隆を筆頭に5名の名だたる作曲家や音楽家たちがプロデューサーとして参画、ショパンの『幻想即興曲』を大胆にEDMアレンジにしたり、ベートーヴェンの『テンペスト』をラテンビートに乗せてみたりと、かなり挑戦的な1枚となっている。ベテランたちに導かれるうちに「まだ見ぬ私と出会えた」と森保は感想を語った。

森保まどか(もりやす・まどか)1997年7月26日生まれ。2011年10月、HKT48第1期生としてデビュー。チームKIV所属。

レコーディングの際には、総合プロデューサーの松任谷による粋なはからいもあった。「彼女の超絶技巧が見たくてこんな曲を作りました」と語った『即興曲#727』のこと。松任谷は森保に、演奏を倍速で録音したデモテープを渡したのだ。森保のピアノの腕前が折り紙付きとはいえ初めてのピアノアルバム、そのうえ倍速で曲を修得するのは難儀だった。それでも森保は頑として倍速のまま弾くことにこだわったことについて、自身の性格を「完璧主義なのかもしれない」と語る。

「『遅く弾いてもいいよ』って言われたんですけど、やっぱり速く弾いたほうがカッコいいって思ったんです。それにしても松任谷さんも意地悪ですよね(笑)」

松任谷と森保が最初に会ったのは、テレビ番組『TEPPEN』。様々なジャンルの腕自慢たちがその腕前を披露するなかで、森保は一番人気のピアノ部門に出場。AKB48(当時)の松井咲子ら腕自慢たちとコンテストさながら、しのぎを削りながら高得点を叩き出した。

同番組内での注目は、森保の腕前だけでなく選曲にもある。他の候補者が流行のポップスを独自のアレンジで弾きこなすなか、森保は2015年の大会では『真夏の夜の夢』、2020年には『学園天国』など、自分とは大きく違う世代の曲をチョイスした。

「『真夏の夜の夢』に関しては、主題歌だったドラマ『誰にも言えない』をhuluで見たんですよ。私は1997年生まれなのですが、生まれる前のひと昔前のものに惹かれるんです。当時の作品ってすごく“攻めた”ものが多くて、ついつい見入っちゃう。逆に表現者は大変だったと思うんです。他にもドラマ『黒革の手帖』が好きで、武井咲さん主演のものから米倉涼子さん主演のもの、その前のものまで全部観てます」

単に奇をてらった古いもの好き、というわけではない。「カネコアヤノさんが好きです。最近注目してるのは、藤井風さん」というあたり、新しいアーティストもウォッチしている。森保の幅の広さは幼少期から両親の影響が大きかった。

「父が洋楽のバンドとかが好きで、私もよく聴いてました。だから自分の中で“古い”とか“新しい”とかに区別はなくて。いいものはいい、みたいな。それでも古いものが好きになるのって、現代になると絞られてくる、つまり時間が経てば母数自体が減っていくじゃないですか。だから今もなお愛されてるのはそれなりに理由がある。それに案外、昔のもののほうが革新的だったりするんですよ」

“負けても正解”を教えてくれた指原莉乃の存在

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武田 鼎

(たけだ・かなえ)経済誌でライターを経験後、大手ウェブメディアで編集者。ライターとしての座右の銘は「エロから株まで」。

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