アイドル・ピアニストのHKT48森保まどかが、指原莉乃から学んだ “負けても正解”

2020.3.14

“負けても正解”を教えてくれた指原莉乃の存在

幼少期の森保はピアノ漬けの日々だった。2010年には「第14回PIARAピアノコンクール全国大会」ジュニアC部門でアポロ奨励賞(ベスト8相当)受賞、「第1回ヨーロッパ国際ピアノコンクール・イン・ジャパン」全国大会自由曲部門中学生の部では9位入賞するなど、実績を残してきた。だが、当時について振り返ると少し顔に影が差す。

「(ピアノを弾くことを)楽しめてなかったです。がんばれてたのは、勝ったら喜んでくれる人がいたから。コンクール前は毎日練習して勝ったら焼肉を食べられるんですよ。でも、負けたらうどんになっちゃうんです……」

勝つか負けるか。そんなシビアな勝負の世界に身を置いていた森保にとって、HKT48はまた違う勝負の世界だった。同じグループとはいえメンバーは選抜され、仲間同士で競争をしなければならない。負けず嫌いの森保は、HKT48のメンバーとしても人一倍「負けたくない、勝ちたい」という気持ちで活動してきた。だが、そんな森保を変えたのは指原だった。

「指原さんから教えていただいたのは、“負けても正解”っていうことがあること。それまでピアノで勝つか負けるかしかなかった私からすれば本当に驚きでした」

アイドルとして完全無欠でなくてもいい。へたれキャラという等身大の自分を出すことで、当時の“神7”をも凌ぐ人気を獲得し、ファンに愛されてきた指原は「負けても正解」の体現者と言えるだろう。

「アイドルにとって勝ち負けって不明確、あやふやなものだし、自分で負けたって思っててもファンの方はもっと応援しようと思ってくれたり、もっと好きになってくれて、支えてくれたりってこともある。負けても肯定してもらえるっていうのはすごくありがたい経験で」

HKT48だけでもIZ*ONEで活躍する宮脇咲良や矢吹奈子、AKB48のシングル選抜総選挙9位に入ったこともある兒玉遥など、個性的なメンバーが多くいるなかで、いかに自分らしさを出していくか。

「HKT48には結構コンビの子がいて。めるみお(田島芽瑠&朝長美桜)だったり、私はなつまど(松岡菜摘と森保まどか)って呼ばれたり。その中で自分のキャラクターをどう知ってもらうかが大事だなと思ってます」

そこから自身のピアノの弾き方も変わった。プロデューサーたちによれば「凛々しいピアノ」になったのだという。それまで、森保のピアノは「水のようなピアノ」と評されていた。つまりは水のように無味無臭で無個性、という評価だ。コンクールで勝つためにいかに間違えずに弾きこなすか、に主眼を置いてきたピアノだ。

「意識したわけじゃないけど、自分の色を出すっていうこと。今、私は固定でついてる先生がいないんです。だから自分で譜読みして、自分で練習しないといけないから、否が応でも曲を“自分のもの”にしないといけないんです」

そうして勝ち取った『TEPPEN』での優勝、一度は離れたピアノの道に再び戻ってきた。

「自分としては“戻ってきた”というより、第3章が始まったって感じです。実は最近になってやっと“ピアノが趣味”って言えるようになりました。それまではあまり楽しめてなかったから“趣味”じゃなくて“特技”としか書けなかったんです。でも今は趣味って書ける!」

森保は最後に、「アイドルとして、ピアニストとして、というよりは、アイドルだからこそできるピアノ活動をしたい」と語った。「アイドルだから知ってもらえる、ということもあると思うんです。私をきっかけにクラシックやピアノに興味を持ってもらえたら最高です」

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  • 森保まどか『私の中の私』

    Album Produced by 松任谷正隆
    楽曲プロデューサー:松任谷正隆、武部聡志、鳥山雄司、本間昭光、伊藤修平

    【通常盤】 CD+DVD UPCH-20541 ¥3,000(税別)
    <初回プレス分限定封入特典>
    『「私の中の私」リリース記念プレミアムイベント』応募シート
    【劇場盤】 CDのみ PRON-1021 ¥2,500(税別)※AKB48グループショップ限定商品


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Written by

武田 鼎

(たけだ・かなえ)経済誌でライターを経験後、大手ウェブメディアで編集者。ライターとしての座右の銘は「エロから株まで」。

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