工藤晴香、神谷浩史らが明かしたリスナー歴。声優のラジオ愛が詰まった本ができるまで

2021.6.29

文=村上謙三久 編集=森田真規


工藤晴香、神谷浩史、小野大輔、藤田茜、加隈亜衣など、人気声優たちが自身の個人的なラジオリスナー歴について語った『別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本』が2021年6月21日に発売された。

撮り下ろしグラビアは表紙・巻頭のみ、1万字以上のロングインタビューが並ぶ異色の声優本を手がけた『声優ラジオの時間』編集長の村上謙三久氏が、その制作秘話を明かした。


隔絶されている声優ラジオ・アニラジ

ラジオ関連の本を手がけているので、稀に雑誌やWEB媒体でコメントを求められることがある。その際に声優ラジオ・アニラジについて話すと、必ずと言っていいほど驚かれる。メディアに関わっているような目が利くラジオ好きも、どうやらこのジャンルは興味の範疇に入っていないらしい。

「ある程度の知名度を持っている声優はほぼ100%ラジオ番組のパーソナリティを担当する」「1年間で150~200もの番組がスタートし、同時に終わっていく」「アニメの宣伝番組は1クールで終わるものが多い」「同時に4~5番組のレギュラーを持つ声優がいる」「2000年代から専門のWEBラジオ局がある」「スポンサーがついてない番組も多く、有料配信、グッズやイベント展開がかなり前から当たり前になっている」

声優ファンからすれば至極当然の話だが、一般のラジオリスナーはそんな状況をまったく知らない。それだけ声優ラジオ・アニラジというジャンルは、ほかのラジオと隔絶されてきた。最近、ラジオを特集した雑誌やムック本が数多く出版されているが、声優のラジオをスルーするのはよくある話で、申し訳なさそうに数ページ取り上げられるだけでもいいほうである。

“1万字以上のロングインタビューが並ぶ異色の声優本”ができた理由

日本における声優はラジオドラマから生まれた。声優とラジオの結びつきは強く、掘り下げれば100年近くの長い歴史がある。『星野源のオールナイトニッポン』に宮野真守が定期的にゲスト出演するなど、他ジャンルのとの関わりが目立つようになったり、枠組に縛られずに投稿するハガキ職人が増えたりと、状況は少しずつ変わってきているが、『声優ラジオの時間』という専門誌を作ってきた身としては、ジレンマを感じることも少なくなかった。そんななかで、「その隔たりに橋を架けられれば……」という思いを込めて製作したのが、今回の『別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本』である。

『別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本』スコラムック/2021年6月21日発売

……とそれっぽい意見を書いてきたが、ここまでの文章は完全なるあとづけだ。『芸人ラジオ』を刊行した際もまったく同じような“あとづけ話”をQJWebで書かせてもらったが、今回の本を作ろうと思った最初のキッカケは、実のところ、「グラビア撮影を仕切るのが苦手」という私の編集者として致命的な欠陥からである。

グラビア撮影は編集者が中心になって行われる。撮影対象との交渉、スタジオの予約、カメラマンやヘアメイク、スタイリストの手配はもちろん、全体のコンセプトを考え、具体的な撮影カットを指示するのが編集者の役目。製作費の中でも撮影にかかる費用の比重は大きく、とても重要な仕事だ。しかし、ライター兼任で仕事をしてきた私は、これが非常に苦手。毎回、カメラマンに「いい感じで撮ってください」と丸投げして、インタビューに集中したいのが本音なのだ。

ならば、いっそのこと、グラビア撮影をしない声優本を作ればいいのではないか……。そんな極端な考えが、この本のスタート地点だった。以前ほどではないにせよ、声優を取り上げる雑誌やムック本は刊行されているが、基本的にはグラビア中心で、写真で魅せて、手に取ってもらうのが通常。それなのに、文字のほうに完全に振り切ろうというのだから、ある意味、狂気の沙汰と言っても過言ではないかもしれない。

神谷浩史×鶴間政行「『意味ねぇ! くだらねぇ! 』の哲学」。使用されている写真は宣材写真だ

「今回はパーソナリティとして取材するのではなく、ひとりのリスナーとして声優をインタビューする。人前に出る立場ではないのだから、あえて写真は撮影しない」。そんなロジックを強引に当てはめ、表紙・巻頭以外にグラビア撮影をしない理由づけをした。かくして、1万字以上のロングインタビューが並ぶ異色の声優本ができ上がったのである。ちなみに、唯一のグラビアとなった工藤晴香さんの記事は、ご本人や各スタッフの協力もあって、素晴らしい出来になったことは書いておきたい。

工藤晴香「声優だってリスナーだ。」

未知なるラジオへの誘い


この記事の画像(全7枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

村上謙三久_プロフィール

Written by

村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。