アニメで魅力を伝えるという、競技振興の効果
2021年1月に放送された『SK∞(エスケーエイト)』で、あるキャラクターが言っていた。「スケートボードは指導者も少なく、極めたところで稼げない」と。エクストリームスポーツが盛んなアメリカではいざ知らず、競技としての認知度がアメリカほどではない日本の現状なのかもしれない。ここの課題はスケートボードに限らず、競技人口が約1100人(2021年3月4日時点)の男子新体操や、ほかのマイナースポーツにも通じるものがあるのではないだろうか。

この課題を解決するために関係者の方々は、私のようなアニメファンが考える以上に、考えを巡らせているに違いない。しかし、その内容はもしかしたら競技になじみのない人とマッチしていないのではないか、と思うのだ。
陸上十種競技の元日本チャンピオンでタレントの武井壮さんが、『The UPDATE』(NewsPicks)の「東京パラリンピックは熱狂を生むのか?」(2019年8月27日配信)という回で言っていた。「競技のレベルやクオリティを上げても一般の人は観ない」「アイコンとなる選手が必要」「もっと競技に携わる人をメディアに出すべきだ」「観られなければ意味がない」と。このコメントを見て、これまでそのスポーツに関わってこなかった人にも競技の魅力を広げていくにはまず、観戦のハードルを下げる必要があるのではないかと感じた。
もちろん観戦のハードルを下げたところで、大会数や練習場所といった機会がなければ、競技人口の増加にはつながらないだろう。ただ何かを始めるきっかけには、目にしたときの衝撃や感動が大きく影響する。言葉を失ってしまうほど圧倒的な技の数々、そして競技に夢中になっている人たちの姿だけをありありと“魅せる”ことこそが、競技振興の入口、第一歩なのではないかと思うのだ。
スポーツの振興とは無縁のものに見えるアニメ。しかし、マンガ『SLAM DUNK』がバスケットボールの競技人口を増やしたと言われることもあるし、アニメの聖地巡礼が地域活性につながることも、昨今では珍しくない。だから『バクテン!!』というアニメが男子新体操の振興の入口となり、プラスの影響を与える可能性も、きっとゼロではないはずだ。
本来なら私みたいな男子新体操ド素人に、口を挟む資格はない。ただ、アニメを通して男子新体操に心を鷲掴みにされ大会日程を検索し、コロナの影響で観に行けない可能性が高いことが発覚してショックを受けている人間として、どうかひと言だけお許しいただきたい。
現実にはない表現も大胆に取り入れながら、選手にスポットライトを当てる映像を作れるアニメには、男子新体操、いや、あらゆるマイナースポーツがより多くの人の目に魅力的に映る“魅せ方”のヒントが眠っているのではないか、と。そして『バクテン!!』がきっかけとなって、全国各地に男子新体操が広まったらうれしいな、と。
【参照・参考】公益財団法人日本体操協会 令和2年度登録人口集計表(2021.03.04)