「デビューした年にみんなと遊べる時間が少なくなって、毎年行ってた恒例の花火大会に行けなくて。行きたかったなぁと思って寝て、パッてカーテンの隙間を見たら星が見えて『夏の星座にぶらさがって』っていうのが出てきたんですよ」(J-WAVE『WOW MUSIC』より)
この「花火」の制作秘話を明かすaikoを目を輝かせながら見つめるYOASOBIのふたりを見たとき、ああこの人たちはやっぱりポップスが好きなんだと、“ポップスの魔法”にかけられた人たちなんだと強くシンパシーを抱いた。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.154に掲載のコラムを転載したものです。
ポップスの魔法を持った作品はひと握り

“ポップスの魔法”……それは歌詞とメロディと演奏がある奇跡的なバランスで一体となったときに生まれる不思議な力、人びとを魅了する得体の知れないパワー。
音楽は日々量産されているが、それを持った作品はひと握り。出会えるのは年に多くても1、2回ほど。それに出会うとすべての音色が必然に聴こえ、展開に鳥肌し、旋律に酔わされ、何度でも聴きたいと思わせてくれる。筆者が音楽を追い続けているのは、それにできるだけたくさん出会いたいからだと言ってもいい。
誤解を恐れず正直に言えば、私はYOASOBIの『THE BOOK』にはそれを感じなかった。
けれども、あの「夜に駆ける」を最初に耳にしたとき、小刻みなカッティングの織り成す軽やかなリズムに高揚したし、ラストサビ直前のピアノの斬新なフレーズに強力な推進力を感じた。原作小説『タナトスの誘惑』における主人公の駆り立てられた衝動がこの一点に詰め込まれたかのような「騒がしい日々に」の鋭い節回しにたしかに耳を持ってかれた。
そして、彼らもまた“ポップスの魔法”を追い求めるアーティストなのだと、心の片隅に記憶していたのである。だからその目の輝きを見て、答え合わせをした気分になってうれしかったのだ。
近年ボカロ由来の音楽が活況を見せている。もともとボカロはアニメやゲームと密接に絡んだサブカルチャーという位置付けだった。現にショップを覗いてもアニソンコーナーと一緒くたにされていたり、JPOPとは隔絶された別のコーナーが設けられていたりする。米津玄師にしたってつい最近までボカロ音楽に括られていたほどだ。
しかしここ数年、その状況にも変化が起きている。それは、彼らのようにより多くの人に届けたいと考える作り手が増えてきたからだと思う。なので今は非常にワクワクするのだ。彼らが生み出す“ポップスの魔法”に出会える日を。
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