遅く起きた日曜日に、ちょっとそこまでの気分で海を渡る(スズキナオ)

2021.1.3

スズキナオ 遅く起きた日曜日に 第10回

文・写真=スズキナオ 編集=森山裕之


2020年もそれぞれの事情で、全国の多くのお店がひっそりとその灯を消した。2021年は正月に里帰りすることもままならない、前代未聞の年末年始を迎えた。

自由に旅をするにはもう少し時間がかかりそうだけど、あなたの住む場所のそばにも、遠く旅するような気持ちになれる場所や空間がきっとあるはずだ。


わずか13分の船旅でこんなに「遠くへ来た」気分になるなんて

私の家からJR明石駅までは電車に乗って1時間もかからずに辿り着ける。南口を出て真新しいショッピングビルを突っ切り、「魚の棚(うおんたな)商店街」に出るといつもそれだけで旅行に来たような気分になる。

明石・魚の棚商店街(写真は9月頃の模様)

近くの海で獲られた新鮮な海産物を売る店が立ち並び、その店先では天ぷらとか練り物とか串に刺さったイイダコとか、いろいろ売っていてお祭りみたいだ。

商店街沿いやその周辺にはご当地名物の明石焼きを出す店も多く、それを食べてお土産にタコでも買って帰ったってじゅうぶん楽しいのだが、私が明石に来る目的は海を渡ることなのだ。

JR明石駅から南へ歩いて10分ほど。「淡路ジェノバライン」というフェリーの乗り場がある。明石港と淡路島北部の岩屋港とを13分で結ぶ高速船で、片道530円という料金で海を渡してくれる。

淡路ジェノバラインの乗り場

乗船時間はほんの少しだし、そこからバスや自転車にでも乗って淡路島を巡ったりするわけでもない。せいぜい辿り着いた港の周辺をちょっと散歩するぐらいだ。しかしそれだけでも普段味わうことのできない気分が胸に訪れる。「いよいよ遠くに来たぞ」という開放感や、少しの心細さや、いつもと違う景色に心が躍るような気分。

繰り返すが、小一時間乗った電車を降りてまっすぐ港に向かい、10分ちょっと船に乗っただけなのだ。それだけでこんな気分に浸れるなんて、なんとお手軽なことだろうか。思うに、海を渡っていくということが大きいのだ。淡路島へは、たとえば車に乗って明石海峡大橋を行けばすぐだから、車で淡路島へ行くという人は私ほど大げさに「遠くに来た!」なんて思わないかもしれない。

ワクワクしながらフェリー乗り場で待つ。出航時間が近づき、いよいよ船の中へ。

窓の向こうに見えているのが「淡路ジェノバライン」の船

屋内席は冬でも暖かくて快適だが、どうしても外気に触れたくていつも2階のデッキ席に座る。

こっちが屋内席で
こっちは激しく海風に吹かれる屋外席

13分の短い船旅だが、どうしても海風に吹かれながら飲みたくて缶チューハイを買ってある。

海上で飲むチューハイはとびきりうまい

船が出るとほどなくして淡路島が見えてくる。日差しを受けて輝く海面が好きで、眩しいけどずっと眺めてしまう。

こういう風景を眺めるために生きているんじゃないかと思う
遠くに見えていた明石海峡大橋がグングン近づいてくる

船が明石海峡大橋の下をくぐる瞬間は何回体験してもうれしくなって記念写真を撮ってしまう。

この船の一番の目玉はこの瞬間

橋の下をくぐり抜けたらもう岩屋港はすぐそこ。あっという間の下船だ。

はしゃいでいたらもう淡路島に到着

この鉄火巻きと淡路島ハイボールのうまさを忘れまい

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スズキナオ

大阪在住のフリーライター。「デイリーポータルZ」「メシ通」等のWEBメディアで記事を書いている。酒とラーメンが好き。パリッコとの飲酒ユニット「酒の穴」としても活動中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)など。

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