是枝監督や三宅唱、chelmicoらが絶賛!圧倒的な「青春のリアル」を生み出した映画『アボカドの固さ』とは?

2020.9.19

何にもおもねらないインディペンデントな態度が生み出した広がり

『アボカドの固さ』のおもしろいところは、それだけではない。若く新しい才能が集まってひとつの作品を作ったという製作背景が、とても力強く感じられるのだ。

前原と友人たちの会話のかけあいが軽快で、なんとも心地よい

監督の城も、主演の前原も、脚本の山口慎太朗も、主題歌を作ったTaiko Super Kicksのメンバーも、音楽を担当したD.A.N.の櫻木大悟も、製作の井上遼も、1990年代前半生まれの20代後半である。なりゆきでそうなったのか、確信的にそうしたのかはわからない。しかし、『アボカドの固さ』の製作チームのDIY的なあり方からは、大げさに言えば、自分たちの世代とコミュニティでカルチャーを作っていくんだ、という気概や気負いを感じる。

音楽について言うと、ロックバンドのTaiko Super Kicks、エレクトロニックミュージックのD.A.N.の櫻木という2者を巻き込んでいることがおもしろい。城とTaiko Super Kicksの伊藤暁里、櫻木の鼎談(『Mikiki』掲載、「映画「アボカドの固さ」における物語と音楽の相互作用」)ではそれぞれのつながりが語られているものの、活動の場が異なっている3者が集ったことは、『アボカドの固さ』という映画に広がりをもたらしている(さらに、小劇場系の俳優たちが多く出演していることで、演劇の世界とのつながりも見出せる)。

ヒロイン役を演じた多賀麻美は青年団所属の俳優

同じ世代に属する者たちの結託と協働(それこそ、「青春のリアル」だろう)。それゆえに、何にもおもねらないインディペンデントな態度。ひとつのポイントに集中したからこそ得られた広がり。それらが『アボカドの固さ』というフィルムに結実し、不思議な豊かさをもたらしている。

そんなふうに、『アボカドの固さ』はさまざまなポイントから興味深く観ることができる映画で、観たあとに必ず誰かに感想を言いたくなってしまうだろう。映画を観終えてからはじめに挙げたコメント群を読んでみると、また新しい視点が誘発されるかもしれない。

あなたは『アボカドの固さ』がドキュメントするイタい「青春のリアル」に、思わずいたたまれなくなるだろうか? それとも、「フィクション」であるからこその救いをそこに見出すだろうか?

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