何にもおもねらないインディペンデントな態度が生み出した広がり
『アボカドの固さ』のおもしろいところは、それだけではない。若く新しい才能が集まってひとつの作品を作ったという製作背景が、とても力強く感じられるのだ。
監督の城も、主演の前原も、脚本の山口慎太朗も、主題歌を作ったTaiko Super Kicksのメンバーも、音楽を担当したD.A.N.の櫻木大悟も、製作の井上遼も、1990年代前半生まれの20代後半である。なりゆきでそうなったのか、確信的にそうしたのかはわからない。しかし、『アボカドの固さ』の製作チームのDIY的なあり方からは、大げさに言えば、自分たちの世代とコミュニティでカルチャーを作っていくんだ、という気概や気負いを感じる。
音楽について言うと、ロックバンドのTaiko Super Kicks、エレクトロニックミュージックのD.A.N.の櫻木という2者を巻き込んでいることがおもしろい。城とTaiko Super Kicksの伊藤暁里、櫻木の鼎談(『Mikiki』掲載、「映画「アボカドの固さ」における物語と音楽の相互作用」)ではそれぞれのつながりが語られているものの、活動の場が異なっている3者が集ったことは、『アボカドの固さ』という映画に広がりをもたらしている(さらに、小劇場系の俳優たちが多く出演していることで、演劇の世界とのつながりも見出せる)。
同じ世代に属する者たちの結託と協働(それこそ、「青春のリアル」だろう)。それゆえに、何にもおもねらないインディペンデントな態度。ひとつのポイントに集中したからこそ得られた広がり。それらが『アボカドの固さ』というフィルムに結実し、不思議な豊かさをもたらしている。
そんなふうに、『アボカドの固さ』はさまざまなポイントから興味深く観ることができる映画で、観たあとに必ず誰かに感想を言いたくなってしまうだろう。映画を観終えてからはじめに挙げたコメント群を読んでみると、また新しい視点が誘発されるかもしれない。
あなたは『アボカドの固さ』がドキュメントするイタい「青春のリアル」に、思わずいたたまれなくなるだろうか? それとも、「フィクション」であるからこその救いをそこに見出すだろうか?
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映画『アボカドの固さ』
2020年9月19日(土)よりユーロスペースにてロードショー
監督・脚本・編集:城真也
脚本:山口慎太朗、前原瑞樹
主題歌:Taiko Super Kicks「感性の網目」
音楽:櫻木大悟(D.A.N.)
出演:前原瑞樹、多賀麻美、長谷川洋子、小野寺ずる、空美、並木愛枝、兵藤公美、山口慎太朗、西上雅士、日下部一郎
(c)MASAYA JOE関連リンク
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