オンラインで話し合う体験こそがコロナ禍の「リアル」
『封鎖された人狼村からの脱出』の舞台は、人狼が紛れ込み外出が制限された村。自宅での生活を余儀なくされた村人たちは、不思議な水晶玉を使って“リモート会議”を行っている。プレイヤーは村人たちの会議に参加し、いったい誰が人狼なのかを解き明かす……というストーリー。
ゲーム内の映像では9人の役者が村人を演じ、リモート会議を繰り広げている。制限時間もなく、ひとりでも楽しめる作りなので、映像をじっくり観ながら謎を解くことになるのだが、だんだん自分も「人狼村」に取り込まれていく没入感がある。自宅にいるのに「リアル」なのだ。

『封鎖された人狼村からの脱出』は、その設定からもわかるようにコロナ禍を取り巻く状況も反映されている。特にリモート会議は、このコロナ禍ですっかり日常の風景になってしまった。9分割された画面で人々が話し合っている光景こそが、我々の「リアル」になっているのだ。
これまでリアル脱出ゲームは、会場を「潜水艦」「月面基地」「刑務所」などに見立て、その見立てに沿った謎解きを用意することで没入感を演出してきた。『封鎖された人狼村からの脱出』はコロナ禍の生活そのものが「見立て」として機能しており、オンラインでも会場公演のような興奮を生み出すことに成功している。
7月に公演がはじまった『青梅雨(あおつゆ)に届いた手紙』もまた、自宅での謎解きを「リアル」に変えてしまう。プレイヤーは在宅調査を専門とする「アットホームズ探偵事務所」の一員。ある日、ひとりの少女から「亡くなった父が残した宝探しの謎を、一緒に解いてほしい」という依頼が届く。父が残した謎は「仲間たちと解くように」とあり、ひとりでは解けないのだという。

『青梅雨~』は4~6人でのプレイが必須で、参加登録をすると自宅に「依頼人の少女からの手紙」を含む謎解きキットが届く。公演当日は、全員が公演用のZoomに参加して謎解きを行う仕組みだ。参加者たちは「同じ探偵事務所の仲間」として、ZoomやLINEを駆使して謎を解くほか、実際に依頼人の少女ともやりとりをすることになる。

ひとりでも参加できる『封鎖された~』とはまた異なり、『青梅雨~』は「オンラインでのコミュニケーション」と「手触り感のある謎」が在宅探偵の気分を盛り上げる。父が遺した想いが徐々に明らかになるストーリーにも引き込まれ、公演終了後も「あの子はそのまままっすぐ育ってほしい……」という感慨にしばらく浸っていた。

オンライン謎解きはもう「ピンチヒッター」ではない
新しい生活様式によって、「自宅」が外とつながるリアルな場となった。それはすなわち、自宅が新たな物語を生む場になったとも言える。
となれば、オンラインの謎解き公演は、コロナ禍を乗り切るためのピンチヒッターではなく、可能性を秘めた荒野を開拓する存在になるはずだ。

今も開拓は着々と進んでいる。9月11日公開の新作、オンラインリアル脱出ゲーム×お化け屋敷『呪い鏡の家からの脱出』は、お化け屋敷プロデューサー・五味弘文との共同制作。怪奇現象が起こる廃屋に足を踏み入れた後輩「ウツミ」とリモートでつなぎ、実際にウツミに指示を出しながら廃屋を探索して謎を解くという。Zoomの荒い画面を通じて見る怪奇現象は、逆にリアルだろうな……と、想像するだけで震えるのだった。

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