コロナ禍の影響を受けまくったエンタメ業界。イベントが中止になったり、施設が閉鎖されたり、こんな悲しい夏があっただろうか。しかし、状況を逆手に取って進化したジャンルもある。リモート技術を駆使した「リアル脱出ゲーム」はその最たるものだろう。自宅が事件の現場に変わるスリルを、謎解き大好きライター・井上マサキがご報告します。
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ネットから場を移した「リアル脱出ゲーム」が再びネットに
「リアル脱出ゲーム」を手がけるSCRAPが、オンラインの「謎」を作りつづけている。
8月末に発売された『ワールド謎ツアー』は、世界一周の旅をテーマにした謎解きキットだ。ガイドブックや地図を模したアイテムを片手に、Googleマップを駆使して世界中の名所を巡りながら謎を解いていく。

キットは「赤のトランク」と「青のトランク」の2種類に分かれており、それぞれの情報を合わせないと謎を解くことはできない。キットを購入したパートナーとビデオ通話をつなぎ、お互い協力しながら「世界旅行」を楽しむ仕かけだ(もちろん、ひとりでふたつのキットを購入して楽しんでもいい)。

だが、そもそもリアル脱出ゲームは、ネット上で遊ばれていた脱出ゲームを「リアルな場」で再現したものだ。実際に部屋に閉じ込められ、謎を解き、脱出を目指す。それなのに、リアル脱出ゲームは再びオンラインというネット上に戻ってきた。
それはやはり、コロナ禍によるところが大きい。「閉ざされた空間で謎を解く」ため、従来の公演ではどうしても「3密」が生まれてしまうのだ。
事実、緊急事態宣言が出た4月には、全国16カ所の常設店舗が1カ月近く臨時休業に追い込まれた。現在は感染対策のガイドラインを設け、常設店舗での営業は再開されている。しかし、遊園地などを舞台にした大規模な興業や、アニメとのコラボイベントについては開催時期を見直したものも少なくない。
そんなかつてない苦境のなか、SCRAPはオンラインに活路を見出す。5月には過去の公演を「リモートver.」にアップデートし、Zoomを介して自宅からの参加を可能にした。さらに謎解きキット『ある2つの通信基地からの脱出』を、サバンナ高橋茂雄と“緊急共同制作”して発売する。
そして6月末に発表されたのが、オンラインの完全新作公演『封鎖された人狼村からの脱出』だった。その開催に寄せて、SCRAP代表の加藤隆生は「今作るべきゲームを作ることができた」「これがSCRAPの出した答えです」とコメントを残している。
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