ウディ・アレンのマスターピース誕生!映画の奇跡がニューヨークに舞い降りる
ウディ・アレンの新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が7月3日に封切られた。ニューヨークの名所を奇を衒わずに映し出し、ティモシー・シャラメやエル・ファニング、セレーナ・ゴメスといった若々しい才能を起用。
映画批評家の相田冬二氏は、そんな本作を「私たちが映画に求めるものの『すべて』がある」と評する。今観るべき、奇跡のような映画がここに誕生した。
これは「呪われた映画」などではない
曰くつき、と言っていい。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は、本国アメリカにおいては監督のウディ・アレンがかつての性的スキャンダルを再告発されたことによって、そして、我が国日本においては全国の映画館に自粛要請がなされたことによって、公開が著しく遅れた。
そう、本作は「♯MeToo」ムーブメントと、全世界的なコロナ禍のダブルパンチを喰らったのである。お蔵入りしてもおかしくはなかった。まずは、無事、ロードショーされることを心から喜びたい。何しろ、日本では梅雨の真っ只中にスクリーンにお目見え。タイトルを鑑みれば、好機とさえ言える。
そもそもこれは「呪われた映画」などではない。アレンのスキャンダルやウイルスの猛威とは、内容的に一切関わりのない、ある意味「潔癖な作品」なのだ。逆に言えば、監督がいかに罪深い人間だとしても、今世界がかつてない不幸のどん底にあろうとも、この映画は輝いている。うしろめたい気持ちになることは皆無。真の芸術だけが放つ光を浴び、私たちは震えることになるだろう。
私たちが映画に求めるものの「すべて」がある
主人公はニューヨーク生まれのおぼっちゃま、ギャツビー。郊外の大学に通う彼は、ガールフレンド、アシュレーが課題で高名な映画監督にインタビューするために「上京」することになったことを契機に、極上のニューヨークデートを思いつく。アリゾナ生まれで摩天楼の街とはほとんど縁のなかった彼女に、生粋のニューヨーカーにしかできない道案内をする計画だ。
アシュレーのインタビューを間に挟み、完璧な旅の行程を練り上げるギャツビー。ところが、映画監督に気に入られたアシュレーは、監督と脚本家と共に最新作の試写を観ることになり、ギャツビーは置いてきぼり。ふてくされてうろついていると、映画の撮影現場に遭遇。そこで、元恋人の妹と再会することになる……。
大学生カップルをメインキャストにした、おとぎ話のような展開。アシュレーは、監督や脚本家のみならず、プレイボーイとして名高い人気俳優からもディナーに誘われるほどのモテっぷり。一方、ギャツビーは、偶然の出逢いから、まさかの運命を手繰り寄せることになる。
すべてがうまくいき過ぎ? 違う。ここで描かれていることは、自分の思いどおりにはいかなかったことばかり。言ってみればトラブルの連続だ。ギャツビーもアシュレーも、神様の気まぐれないたずらに巻き込まれているだけなのだ。
想定外のハプニングたちが、めくるめくような高揚をもたらすのは、ここには、私たちが映画に求めるものの「すべて」があるからだ。
「あり得ない」を「あり得る」にするのが映画という魔法。この魔法はどこまでもロマンティックでありつづける。
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