老若男女誰にでも開かれた優しい番組が求められている現代において、15年もの長い間「深夜のお笑い」だけをやりつづけているバケモノ番組『ゴッドタン』(テレビ東京)。毒舌、下品、エロ、ひとつ間違えれば一発でアウトになりかねないイカレサイコ企画を重ねながらお笑いファンや業界人からの圧倒的な人気を誇る、その秘密を改めて紐解いていきたい。
いっさい妥協しない振り切れた企画の数々
番組でも一番の人気企画「マジ歌選手権」は最初の3回までは、出場芸人も劇団ひとり、バナナマン日村勇紀、東京03角田晃広、ケンドーコバヤシの4人のみ、披露する楽曲もいい意味でも悪い意味でも「ひどい出来」で(特にバナナマン日村の披露した『さくら』『さくらんぼ』『チェリー』のひどさは凄まじかった)、まさにゲスで下品な「深夜のお笑い」を体現していた。しかし時を経て、日本武道館や横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナといったあり得ないほどデカい会場をパンパンに埋めるビッグコンテンツへと成長することなど誰が想像できただろうか。
![マジ歌ライブ2018](https://qjweb.jp/wp-content/uploads/2020/06/51v8KIeWihL._AC_-281x400.jpg)
もうひとつの人気企画「キス我慢選手権」もそう。ただ単に「セクシー美女からのさまざまな誘惑に耐えキスを我慢する」というだけの変態企画だったのが、いつしか劇団ひとりとみひろの織り成すアドリブが化学反応を起こし、笑いが感動に変わり、ついには映画化、全国ロードショーされるという奇跡を起こした。
![キス我慢](https://qjweb.jp/wp-content/uploads/2020/06/71Mb7MVsmWL._AC_SL1117_-286x400.jpg)
「深夜のお笑い」のスタンスはいっさい変えずに中身だけをレベルアップさせる。私は「やりつづけること」の大切さをゴッドタンから教わった。
唯一無二のレギュラー陣
劇団ひとりとおぎやはぎの小木博明、矢作兼。この3人なくしてゴッドタンは成り立たない。単に司会だけをするMCという立ち位置ではなく、時にはゲスト以上に体を張り、汚れ、吠え、暴れる。劇団ひとりは「西野をもう一度嫌いになろう」では自分の髪を切り落とし、キングコング西野亮廣の尻の穴に水を吹きかけ、小木は「キモンスターズ・チャンプ」でアイドルを恐怖のどん底に陥れ、矢作は唯一無二の「ジジイ芸人」としてそのキレの悪さを存分に発揮している。どれもほかの番組ではけっして観ることのできない「芸人」の顔を見ることができる。
アシスタントを務める松丸友紀アナも忘れてはならない。「松丸プロデュース王決定戦」での本能寺の変、下衆ヤバ夫の完コピをはじめ、どんなムチャ振りにも120%の答えを出しつづけるポテンシャルの高さに、一瞬アナウンサーであることを忘れてしまう。