『踊る大捜査線』もうひとりの主人公ともいえる「室井慎次」の名言を10個だけ紹介したい

2024.4.13
踊る大捜査線コラム画像

文=かんそう 編集=鈴木 梢


織田裕二が主演を務めた大人気刑事ドラマ『踊る大捜査線』シリーズ(フジテレビ)の新作映画が、2024年秋に公開されることが先日ニュースになった。プロジェクトとしては12年ぶりの新作となる。現在公開されているティザー映像によると、どうやら柳葉敏郎演じる室井慎次が主人公の物語となるらしい。

本記事では『踊る大捜査線』シリーズにおいてもうひとりの主人公ともいえる室井慎次という人物について、ブロガーのかんそうが室井の名言とともにその魅力を語る。

室井慎次という男

『踊る大捜査線』とは、所轄(警察署)と本庁(警視庁本部)、キャリアとノンキャリアの上下関係といった警察組織の構造を、サラリーマンから警察官になった主人公・青島俊作(織田裕二)の成長を軸に、コミカルかつシリアスに描いていく刑事ドラマ。その物語において「もうひとりの主人公」ともいえる存在が、室井慎次(柳葉敏郎)です。

ガチガチに固めたオールバックの髪型と、夜よりも黒いロングコートがトレードマークの冷静沈着なナイスガイ。東北大学から入庁したキャリア官僚というエリートでありながら、青島をはじめとする所轄の刑事たちとの関わりの中で、少しずつ警察組織に疑問を抱き、その変革を志します。理想と現実の狭間で板挟みになりながらも奮闘する姿は、当時多くの人の心をつかみました。口数こそ少ないものの、室井が放つ言葉は「名言の宝庫」と言っても過言ではありません。

今回は、そんな室井慎次の名言を改めて10個ほど紹介させていただきたいと思います。『踊る大捜査線』をまったく知らない人にも、室井慎次という男を好きになっていただければ幸いです。

『踊る大捜査線』室井慎次の名言10選

交番勤務のときは市民のために働いていたんだろうが、これからはそんな考えは捨てたほうがいい。犯人逮捕が第一、市民の気持ちなどに構ってられない。(第1話 サラリーマン刑事と最初の難事件)

殺人事件の被害者の娘で通報者でもある柏木雪乃(水野美紀)に対し、室井は強引な事情聴取を行っていました。そんな室井のやり方に疑問を呈した青島に対し、こう言い放ちます。

被害者に寄り添おうとする青島と、あくまでも犯人逮捕を優先する室井。信念がまったく違うふたりが初めて衝突するシーン。このころの室井は上昇志向の強さから、冷徹とも思えるほどの威圧感を漂わせていますが、青島をはじめとする所轄の刑事たちの情熱によって、徐々に心動かされていくのです。

君とはよくコンビになるな。(第2話 愛と復讐の宅配便)

和久平八郎(いかりや長介)に恨みを持つ山部由和(伊藤俊人)によって届けられた爆弾つき健康チェアの解除を終えた、青島と室井の会話から。

この室井の言葉に対し「ひょっとしたらいいコンビになるかもしれませんね」と返す青島。映画ではもはやおなじみの光景ですが、ふたりが無線を使って会話をしたのは、実はこのときが初めて。青島&室井コンビの誕生ともいえる貴重なシーンです。

なら裁判にかけますか? したらマスコミにバレるど!!(第3話 消された調書と彼女の事件)

建設省(現:国土交通省)官房次官の息子が窃盗の現行犯で逮捕され、室井は刑事局長から事件の揉み消しを命じられます。しかし、まるで反省の色を見せない被疑者。その態度に青島は激怒し、恫喝とも取れる行為をしてしまいます。

「青島から暴力を受けた」と訴える被疑者とその弁護士に対し、室井が放ったのがこのひと言。「今の室井慎次」になるきっかけともいえるシーンです。官僚・室井慎次ではなく男・室井慎次に戻るとき、秋田弁が出るのが本当にたまりません。

通販だ。(第4話 少女の涙と刑事のプライド)

真下正義(ユースケ・サンタマリア)が室井に対して「いやぁ、いいコートですね。僕も同じの着たいなあ。あの、どこに売ってたんですか?」と質問したときの、まさかの答え。冗談か本気かわからないことを真顔で言うチャーミングさを持ち合わせているのも、室井慎次という男の魅力のひとつです。

一課できりたんぽ鍋でも突っづくか。(第4話 少女の涙と刑事のプライド)

青島が投げ捨てた警察手帳と手錠を届けに、湾岸署を訪れた室井。玄関で立ち番をしていた森下孝治(遠山俊也)が室井に「管理官! 自分も秋田出身です。いつか捜査一課に呼ばれて、室井管理官の下で働きたいと思っています!」と話しかけ、こう返すのです。

普段どんなに肩肘を張っていても、本当は気のいい東北の青年・慎次であるとわかる一面を垣間見ることができる、室井ファンよだれダラダラのシーンです。そのあとすぐに「私もその日までにやらなければいけないことがある」と答えて管理官・室井慎次に戻る、そのギャップもカッコよすぎる。

彼女を送っていきたまえ。本庁命令だ早く行け。早く行けったこで!(第5話 彼女の悲鳴が聞こえない)

恩田すみれ(深津絵里)を襲ったストーカー犯・野口達夫(伊集院光)を確保したあと、室井は青島にこう命じます。「本庁命令だ」と照れ隠しにも取れる発言からの、秋田弁での叱咤。室井慎次という男の不器用さ、優しさがにじみ出ています。

君たちを見てると自信がなくなる。(第7話 タイムリミットは48時間)

柏木雪乃を匿う湾岸署への対応を本庁から命じられ、湾岸署で待機するしかなくなった室井に、すみれが声をかけます。

すみれ「ねえ、あなたさ、いつもここ(眉間)にシワ寄せてて疲れない?」
室井「別に」
すみれ「東京生まれ?」
室井「秋田だ」
すみれ「寒いとこで生まれるとそういう顔になっちゃうんだ」
室井「(目をそらす)」
すみれ「それとも東大出はみんなそうなのかなあ」
室井「東北大だ」
すみれ「なんだ、そうなの?」
室井「なんだとはなんだ」
すみれ「官僚ってみんな東大出だと思ってた」
室井「……東北大のどこが悪い」
すみれ「あー。それ、コンプレ?」
室井「何言ってる」
すみれ「そうなんだ。コンプレックスでいつもこんな顔になってんだ(室井の顔まねをする)」
室井「早く取り調べに戻れ!」
すみれ「はーい……早く、警視総監なってね」
室井「君たちを見てると自信がなくなる」
すみれ「こりゃまた失敬」
室井「……」

シリーズの中でもとても貴重な、室井とすみれのふたりだけのシーン。会話のテンポがまるで正反対のふたりによる会話が独特なおかしさを生んでいる名シーンです。また、この回では本庁と所轄、どちらの味方かを問われた室井が「警察の味方だ」と答えるシーンや、『踊る大捜査線』の核ともいえる言葉「正しいことをしたければ偉くなれ」が提示される重要な回でもあります。

私が全面的に指揮を取る。上の者にはもう何も言わせない。(第10話 凶弾・雨に消えた刑事の涙)

和久が追っていた犯人に真下が撃たれ、捜査が混乱しているなか、失意の青島に室井が放ったひと言。8話でミスを犯し「私は所轄の現実をよく知らない。上に立つ人間ではないのかもな……」と揺れていた室井の迷いがなくなったともいえる、重要なセリフのひとつ。

今度うちへ遊びに来い。きりたんぽでも食おう。(第11話 青島刑事よ永遠に)

上の命令に背き独自に捜査をしたことで査問委員会にかけられた青島と室井。互いの気持ちをぶつけ合い、わかり合えたふたりの最後のやりとり。青島の「楽しみにしてます。あの、ヘリで迎えに来てくださいね」という返しの秀逸さも含め、『踊る大捜査線』のみならず、ドラマ史に残るシーンのひとつです。

ほんずなす!(『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』)

犯人に刺され、重症を負ってしまった青島。急いで運ばれる車の中で意識を失い、死んだかと思われた次の瞬間、響き渡るイビキ。そんな青島に対する室井のひと言。ちなみに「ほんずなす」とは秋田弁(本来は「ほんじなす」だがそれがさらに訛っている)で「大馬鹿者」という意味らしい。青島にぴったりの言葉ですね。

捜査を立て直す! 被疑者はこのへんの地理に詳しい。地図にないところに隠れているはずだ。地図に書かれていない箇所を教えてくれ。最近になって建てられた建物、トンネル、なんでもいい。捜査員に関わらず。役職や階級も忘れてくれ。(『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』)

すみれが犯人の凶弾に倒れ混乱する捜査本部を、沖田仁美(真矢みき)に変わり任された室井。捜査本部に入るとすぐ、その場にいた「全員」に命令をかけます。「室井慎次の名言は?」と尋ねれば、多くの人が答えるであろうこのシーン。「捜査を立て直す!」だけでなく、最後の「捜査員に関わらず。役職や階級も忘れてくれ」のひと言に「室井慎次」がこれまで培ってきたすべてが詰まっています。

また、このシーンの少し前、室井が捜査本部に駆け足で向かう道中で新城賢太郎(筧利夫)から「本部を頼みます」と声をかけられたときのキャリア組同士の激アツのやりとりも、セットでおすすめしたいです。

以上、室井慎次の名言を紹介しました。しかし、最後にひとつお詫びをしなくてはなりません。勘のいい皆様はお気づきかもしれませんが、始めに10個と言っておきながら「11個」紹介してしまいました。

真実を追い求める職業であるライターとして、私は絶対にしてはいけないことをしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。この責任を取り、私は今日をもって……

???「その必要はない」
俺「えっ?」
室井「責任を取る。それが私の仕事だ」

む……室井さぁん……か、カッコよすぎる……映画絶対に観ます……。

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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。

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