日向坂46・松田好花が持つ“涙の花粉症”というラジオパーソナリティとしての稀有な才能

2024.1.27
『日向坂46・松田好花のオールナイトニッポン0(ZERO)』より

『日向坂46・松田好花のオールナイトニッポン0(ZERO)』より

文=村上謙三久 編集=森田真規


「相変わらず泣いてますか? 松田はすごい感動屋さんというか、なんでも感動して涙を流してしまいます(中略)それはとってもいいことだと思うんですよね。どんなことにも感受性のアンテナが敏感に反応している。涙の花粉症という感じだと思いますんで」

坂道グループのプロデューサー・秋元康がこう評するのが、日向坂46の松田好花だ。そんな彼女の豊かな感受性が大いに発揮されているメディアのひとつがラジオである。さらに、2023年10月より『オールナイトニッポン0(ZERO)』で月1パーソナリティを務める松田は、現在の“アイドルとラジオ”の関係を象徴する存在でもある。

ここでは、松田好花のラジオパーソナリティとしての魅力に迫りつつ、アイドルとラジオパーソナリティの“推し活”には共通点が多い理由についても紐解いていく。


“アイドルとラジオ”の関係を象徴する存在

若いラジオリスナーに話を聞いていると、「アイドルの番組をきっかけにラジオを聴き始めた」という人が驚くほど多い。これは令和のラジオを象徴すべき現象ではないだろうか。特に注目を集めているのが乃木坂46、櫻坂46、日向坂46のいわゆる坂道シリーズが関わる番組。その中心的立場なのがパーソナリティが新内眞衣から久保史緒里に引き継がれた『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)だ。

57年目を迎えている『オールナイトニッポン』の歴史において、アイドルがパーソナリティを務めた例はそれほど多くないが、昨年10月、乃木坂46に続き、月1というかたちながら新たなアイドルがラインナップに加わった。

それが日向坂46の松田好花だ。毎月最終土曜日に深夜3時スタートの『オールナイトニッポン0(ZERO)』を担当するようになったが、ここにたどり着くまでの彼女のラジオ人生はとてもドラマチックだ。今の“アイドルとラジオ”の関係を紐解くのに松田ほど適した存在はいない気がする。

松田好花は2017年デビューの日向坂46の二期生で、現在24歳。『オールナイトニッポン0(ZERO)』を始める前に、30分の収録番組『ひなこい presents 日向坂46松田好花の日向坂高校放送部』(ニッポン放送)のパーソナリティを2年間担当していた。

【2年間の感謝を込めて】日向坂46松田好花の日向坂高校放送部 振り返りムービー

日向坂屈指のラジオ好きとして知られる松田だが、デビュー前からヘビーリスナーだったわけではない。ラジオを好きになり、パーソナリティになりたいという思いが強くなったのは、新内の存在が大きかった。

『日向坂高校放送部』(2022年2月19日放送)で語られた話によると、新内と松田は欅坂46の尾関梨香(当時)を加えた3人で、2018年6月に行われた坂道合同オーディションキャンペーンの名古屋地域を担当。その際に新内の言動に触れて、松田は「いろいろ引っ張ってくれて、こんなふうにアドリブでしゃべれるんだなとか。すごい憧れの気持ちを持って、私もいつかこういう人になれたらいいな」と思ったという。それがラジオへの道の第一歩になった。

新内は4年間、乃木坂46の活動とニッポン放送の関連企業でのOLを兼任していた変わり種。アイドルでは異例といえる深夜3時スタートの『乃木坂46・新内眞衣のオールナイトニッポン0(ZERO)』を3年間担当し、『乃木坂46のオールナイトニッポン』として1時台に昇格したあとも、約3年間パーソナリティを継続した。乃木坂ファンのみならず、一般の深夜ラジオリスナーにも愛され、卒業した今もなおラジオで活躍している。乃木坂46以前にもAKB48が『オールナイトニッポン』を担当していたが、パーソナリティが固定ではなく、ここまでラジオと密接なつながりを作り出してはいなかった。新内は今現在のアイドルとラジオの関係をさらに深めた存在だ。

新内に続いて、松田に大きな影響を与えたのはお笑いコンビのオードリーだ。2018年4月に日向坂46の前身・けやき坂46の冠番組『ひらがな推し』(テレビ東京/現『日向坂で会いましょう』)がスタート。MCにはオードリーが就任した。

メンバーはふたりのことをより深く知ろうと『オードリーのオールナイトニッポン』を聴くようになり、そのまま深みにハマっていったが、松田もそのひとり。深夜ラジオの魅力を知り、“リトルトゥース”となっていく。ラジオ好きが高じて、メール投稿にも挑戦。2022年9月に単発で放送された『WurtSのオールナイトニッポン0(ZERO)』でリアクションメールが採用されたことを自身の番組内で明かしている。

このアイドルと芸人ラジオの関係も現在のラジオを語る上で欠かせない部分だ。乃木坂46とバナナマンなどさまざまな場面で起こっている現象だが、【アイドルがMCの芸人について深く知ろうとラジオを聴く】→【芸人のラジオで定期的にアイドルの話題が出る】→【アイドルのことをもっと知りたいファンが芸人のラジオを聴く】というサイクルが自然と生まれている。アイドルと芸人がラジオで共演する機会も多く、芸人ラジオ側にもアイドルに興味を持つようになったリスナーは数多い。アイドルのラジオは好きな人しか聴かない“ファンクラブ”的な番組になりやすい傾向にあるが、このサイクルによって間口を常に広げているのだ。

オードリーとの関係以上に、『ひらがな推し』をきっかけにして、佐藤満春(どきどきキャンプ)と知り合ったのも、松田のラジオ物語においては大きい出来事。芸人であり、放送作家であり、トイレ研究家であり、そしてラジオパーソナリティでもある佐藤とは、いつしかテレビ内で師弟関係としてイジられるようになった。その“師匠”が松田に可能性を感じ、ラジオ番組の企画書を書き始めたことがパーソナリティへの道を切り開いていく。ふたりの熱意が届いたのか、2021年10月に『日向坂高校放送部』が開始し、その先の『オールナイトニッポン0(ZERO)』につながった。

秋元康が評する松田好花「感受性のアンテナが敏感に反応している“涙の花粉症”」

パーソナリティとしての松田の魅力を語ってもらうなら、いつも近くにいるメンバーが一番適任。『日向坂高校放送部』では基本的に隔週でメンバーがゲスト出演していたが、松田のラジオ適正について率直な意見が語られたことがあった。

「ブースの外で見させていただいてて。このちゃん(松田の愛称)がすごい活き活きしていて、体全部を使ってラジオを楽しんでて。その姿にすごい感動しちゃった」(潮紗理菜)

「(感情が出るのが)よさじゃない? わかりやすいやん。今怒ってんねんな、感動してんねんなって。感情が素直に表に表れているやん、このちゃんって。それが逆にうらやましいなって思う」(高瀬愛奈)

このふたりの言葉は、松田のパーソナリティとしての魅力を端的に表している。まず番組を聴いて感じるのは、とにかく「ラジオができてうれしい」「ラジオができて楽しい」という気持ちがヒシヒシと伝わってくるところ。『日向坂高校放送部』ではタイトルコール直後に、いつも松田が楽しそうに拍手をしていたのが特に印象的だ。

立場や年齢はまったく違うが、佐久間宣行からも同じような雰囲気が伝わってくる。リスナーの立場からすれば、いやいややっているよりも、前のめりで楽しんでいる人間の話を聴きたいもの。パーソナリティを務める上で特に大切な要素だ。松田の場合、リラックスしたときや感情的になったときに飛び出す京都なまりもアクセントになっている。

そして、松田を語る上で欠くことのできない要素が素直な感情表現……もっと具体的に書くならば“涙”だ。語弊を気にせずいうと、松田はとにかく泣く。番組がスタートすれば泣き、ジングルを作ってもらえば泣き、公開録音が実現すれば泣く。ラジオに限ったことではないとはいえ、この2年間でこれほど放送内で涙を流したパーソナリティは全国的に見てもいないのではないだろうか。

初めてその涙に触れたリスナーは心配になるかもしれないが、松田にとっては日常的なことで、ポジティブな涙の場合が多い。ラジオでも本人が「一回涙腺が崩壊すると、ダムみたいに決壊しちゃって、ずっと流れちゃう」「また泣いてるなあぐらいの感じで笑ってほしい」と語っている。

もちろん悔し涙のときもあるのだろうが、自分のことだけではなく、他人のことでも松田はよく泣く。それは、感受性が豊かで、自分の感情をまっすぐに表に出せるのと同時に、他人に共感できるからこそだろう。「リスナーに寄り添ってくれるのがラジオの魅力」とよくいわれるが、そのために大事なのはパーソナリティの共感力。そういう部分でも松田はパーソナリティに向いていると思う。

松田の涙について、坂道グループのプロデューサーを務める秋元康が語ったことがある。秋元は『日向坂高校放送部』がスタートしてから半年経った2022年4月2日放送回にコメントを寄せていた。

「相変わらず泣いてますか? 松田はすごい感動屋さんというか、なんでも感動して涙を流してしまいますけど。たぶん今、このコメントを聞きながら、それだけで泣いていると思いますけど、それはとってもいいことだと思うんですよね。どんなことにも感受性のアンテナが敏感に反応している。涙の花粉症という感じだと思いますんで」

直接的な関わりがほとんどなかったという秋元の言葉に驚いた松田は、実際に放送内で涙を流していた。秋元のコメントはさらに続く。

「いつでも感動できる松田でいてほしいなと思います。だんだん歳を取ると、初めてがなくなっていってしまうので、感動がだんだんなくなってくるんですね。これは前に経験したことがあるとか、これは知っているとか、そういうのが多くなってしまうんで。いつまでもいつまでも何を見ても、何を聞いても、どんな人と会っても、松田好花でいてください」

作家を務める佐藤満春も自身のラジオ番組『佐藤満春のあなたの話、聴かせてください』(ニッポン放送)において、「トークの純度が高いというか。言葉選びもそうだし、感情が一個ずつちゃんとワードに乗るから。それって伝わるじゃない? リスナーからすると。だから、すごくいいなと思っていて、本当に向いていると思う」と松田について語っている。

素直に感動し、それをちゃんと表現できるのは大きな魅力だ。その思いは熱心なファン相手にとどまらず、世代を超えてさまざまな立場のリスナーにしっかりと伝わるはず。ラジオなのだから、泣いている姿は目に見えない。だが、たとえ松田の外見をよく知らないとしても、ラジオから流れてくる彼女の声を聴いていると、不思議と気持ちがリンクして、笑顔や泣き顔が頭に浮かんでくる。

松田好花「私はいまを生きてます」


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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)、『いつものラジオ リスナーに聞いた16の..

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